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アスタリア王国編
185 温かな愛に触れましょう
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「エリー様、クリス様。ごきげんいかがですか」
「ラウル先生!」
エリーナは声を弾ませ、近づいて来たラウルに微笑みかけた。クリスが少し不機嫌そうな顔をする。
「エリー様、本日もお美しいですね」
「先生。そうやってエリーナを誘惑するの止めてくれる?」
妖艶な笑みを浮かべて賛辞を贈るラウルに、クリスが眉間に皺を寄せる。
「クリス様は相変わらず嫉妬深いですね。サリーが心配していましたよ」
呆れ顔のラウル。サリーの名が出てきて、エリーナはパッと顔を明るくした。
「サリーは元気にしてるの?」
「えぇ、本当によく働いてくれます。おかげで何不自由なく生活できていますよ。エリー様は何かお困りのことはありませんか?」
「うふふ、大丈夫よ。もうすぐ王都の屋敷に引っ越すから、そろそろ準備を始めるつもりなの」
本当はクリスがもらっている王都から離れた領地にいくつもりだったのだが、クリスにも公務が割り振られたため、王都の屋敷に移ることになったのだ。さすがに十年好きにしていたツケは簡単に払いきれない。エリーナは王宮生活でも不自由はないのだが、クリスは王宮より屋敷で自由にしたいらしい。
「あぁ、近くの区画でしたよね」
「不本意ながら、近いんだよね」
朗らかに笑うラウルに対して、不服そうなクリス。貴族が住む区画は固まっており、ラウルの屋敷とは近所になる。
「いつでも遊びに来てくださいね。サリーと待っていますから」
「えぇ、第三の実家ですもの」
第一がローゼンディアナ家、第二がオランドール家、第三がラウル家だ。そして第四にラルフレア王家が入っている。
実家が近くなることに危機感を持ったクリスはエリーナの腰に手を回し、引き寄せる。
「エリー。先生のとこに行くときは、絶対僕に言ってね。すぐに迎えをやるから」
「クリス……過保護よ」
エリーナが冷たい視線を向ければ、クリスはうっと言葉に詰まる。嫌いになった? と不安げな目を向けてくるのが可愛い。
「ロマンス小説とプリンを用意しておきますから」
「ぜひ行くわ」
「エリー!」
悲壮な表情をしたクリスを見て、二人はくすくすと笑う。からかわれたと気づいたクリスは、ムッとした表情でそっぽを向いた。ラウルの前では二人とも子どもの表情を覗かせる。いつまでも、ラウルの大人っぽさには敵わない。
そして楽しく談笑をすれば、管弦楽団の曲調が変わりダンスの時間が始まった。エリーナはクリスに手を引かれ、ラウルに別れの挨拶をして広間の中央へと向かう。まずはベロニカとジークが二人きりで踊るのだ。十年以上一緒に踊っている二人の息はぴったりで、圧巻の踊りだった。一曲が終われば拍手が巻き起こり、二曲目が始まれば他の貴族たちも踊りに加わっていく。
エリーナもクリスと踊り、曲の流れに身を任せた。二人にも注目が集まり、少し気恥ずかしくなるが平常心を保って踊り続ける。王族に恥じない踊りを見せ、ダンスの輪から外れれば同じく輪から外れたベロニカたちと目があった。
「ジーク様、ベロニカ様。ご結婚おめでとうございます」
エリーナとクリスが祝福の言葉を述べると、二人は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。来てくれて嬉しいよ」
「エリーナ。あなた式でぼろ泣きしていたでしょう。恥ずかしいったらないわ」
そうは言いつつも嬉しそうで、照れ隠しなのが丸わかりだ。
「だって、とても素晴らしい式だったんですもの。ベロニカ様が幸せそうで、こちらまで感動しましたわ」
今思い出しても泣けてくる。さっそく目を潤ませるエリーナを見て、ベロニカは呆れ顔になった。だがそれはすぐに恥ずかしそうな、何かを考えているような顔になり、エリーナは目を瞬かせて表情に注目する。
そして自分の負けを認めるような顔で笑って、弾んだ声を返した。
「だって、ジークを愛しているのだもの」
飾りっ気のない、まっすぐな言葉に隣で聞いていたジークが真っ赤になり、エリーナも「きゃぁ」と顔を赤くして胸をときめかせる。
愛している。その短い言葉には今までの長い月日と、万感の想いが込められている。エリーナの胸にずしりと響き、クリスを見上げた。クリスから何度もその言葉をもらったのに、まだエリーナは伝えられていない。胸が締め付けられた。
「エリーナ。次はあなたの番よ。わたくし以上に幸せにならないと、許さないんだから!」
「はい! ベロニカ様!」
エリーナは涙を浮かべ、満面の笑みを浮かべる。そして結婚披露宴は懐かしいみんなと幸せを分かち合い、無事終わりを告げたのだった。
「ラウル先生!」
エリーナは声を弾ませ、近づいて来たラウルに微笑みかけた。クリスが少し不機嫌そうな顔をする。
「エリー様、本日もお美しいですね」
「先生。そうやってエリーナを誘惑するの止めてくれる?」
妖艶な笑みを浮かべて賛辞を贈るラウルに、クリスが眉間に皺を寄せる。
「クリス様は相変わらず嫉妬深いですね。サリーが心配していましたよ」
呆れ顔のラウル。サリーの名が出てきて、エリーナはパッと顔を明るくした。
「サリーは元気にしてるの?」
「えぇ、本当によく働いてくれます。おかげで何不自由なく生活できていますよ。エリー様は何かお困りのことはありませんか?」
「うふふ、大丈夫よ。もうすぐ王都の屋敷に引っ越すから、そろそろ準備を始めるつもりなの」
本当はクリスがもらっている王都から離れた領地にいくつもりだったのだが、クリスにも公務が割り振られたため、王都の屋敷に移ることになったのだ。さすがに十年好きにしていたツケは簡単に払いきれない。エリーナは王宮生活でも不自由はないのだが、クリスは王宮より屋敷で自由にしたいらしい。
「あぁ、近くの区画でしたよね」
「不本意ながら、近いんだよね」
朗らかに笑うラウルに対して、不服そうなクリス。貴族が住む区画は固まっており、ラウルの屋敷とは近所になる。
「いつでも遊びに来てくださいね。サリーと待っていますから」
「えぇ、第三の実家ですもの」
第一がローゼンディアナ家、第二がオランドール家、第三がラウル家だ。そして第四にラルフレア王家が入っている。
実家が近くなることに危機感を持ったクリスはエリーナの腰に手を回し、引き寄せる。
「エリー。先生のとこに行くときは、絶対僕に言ってね。すぐに迎えをやるから」
「クリス……過保護よ」
エリーナが冷たい視線を向ければ、クリスはうっと言葉に詰まる。嫌いになった? と不安げな目を向けてくるのが可愛い。
「ロマンス小説とプリンを用意しておきますから」
「ぜひ行くわ」
「エリー!」
悲壮な表情をしたクリスを見て、二人はくすくすと笑う。からかわれたと気づいたクリスは、ムッとした表情でそっぽを向いた。ラウルの前では二人とも子どもの表情を覗かせる。いつまでも、ラウルの大人っぽさには敵わない。
そして楽しく談笑をすれば、管弦楽団の曲調が変わりダンスの時間が始まった。エリーナはクリスに手を引かれ、ラウルに別れの挨拶をして広間の中央へと向かう。まずはベロニカとジークが二人きりで踊るのだ。十年以上一緒に踊っている二人の息はぴったりで、圧巻の踊りだった。一曲が終われば拍手が巻き起こり、二曲目が始まれば他の貴族たちも踊りに加わっていく。
エリーナもクリスと踊り、曲の流れに身を任せた。二人にも注目が集まり、少し気恥ずかしくなるが平常心を保って踊り続ける。王族に恥じない踊りを見せ、ダンスの輪から外れれば同じく輪から外れたベロニカたちと目があった。
「ジーク様、ベロニカ様。ご結婚おめでとうございます」
エリーナとクリスが祝福の言葉を述べると、二人は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。来てくれて嬉しいよ」
「エリーナ。あなた式でぼろ泣きしていたでしょう。恥ずかしいったらないわ」
そうは言いつつも嬉しそうで、照れ隠しなのが丸わかりだ。
「だって、とても素晴らしい式だったんですもの。ベロニカ様が幸せそうで、こちらまで感動しましたわ」
今思い出しても泣けてくる。さっそく目を潤ませるエリーナを見て、ベロニカは呆れ顔になった。だがそれはすぐに恥ずかしそうな、何かを考えているような顔になり、エリーナは目を瞬かせて表情に注目する。
そして自分の負けを認めるような顔で笑って、弾んだ声を返した。
「だって、ジークを愛しているのだもの」
飾りっ気のない、まっすぐな言葉に隣で聞いていたジークが真っ赤になり、エリーナも「きゃぁ」と顔を赤くして胸をときめかせる。
愛している。その短い言葉には今までの長い月日と、万感の想いが込められている。エリーナの胸にずしりと響き、クリスを見上げた。クリスから何度もその言葉をもらったのに、まだエリーナは伝えられていない。胸が締め付けられた。
「エリーナ。次はあなたの番よ。わたくし以上に幸せにならないと、許さないんだから!」
「はい! ベロニカ様!」
エリーナは涙を浮かべ、満面の笑みを浮かべる。そして結婚披露宴は懐かしいみんなと幸せを分かち合い、無事終わりを告げたのだった。
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