地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる

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第一章 太陽の王子様と氷の王子様

12.社長の事情は謎のままで

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「彼女には少しの間協力してもらうだけだ。準備が整ったら俺から事情を説明する。ただ、まだ説得させるだけの時間が足りないんだ。だから奴らを黙らせる必要がある」
「言いたいことは分かるが、重々考えた上のことだと信じていいんだな?」

 何だか二人の間の空気がピリピリとしてる。
 これって決定事項でもなくて、社長の思いつきなの?
 
 私がなんといっていいか分からずに固まってると、氷室さんがこちらをちらりと見る。

「私は正直この件については反対だ。だが、君も決意してくれたようだし。やるというのならば協力はする。ただしやるならば中途半端なことでは許されない。お偉方を納得させるのはこちらの仕事として、君には社長に相応しい婚約者候補として振る舞ってもらわなければならない。秘書の仕事も完璧にこなしてもらう」
「それは……はい。精一杯頑張ります! けど……」
「あー……うん。言いたいことは分かる。秦弥、顔、顔怖いよ。真剣なのは分かるけど、ことりちゃんじゃなかったら泣くよ? そんなに睨みつけられたら」

 社長が苦笑すると、氷室さんも短く息を吐き出す。

「別に、怒っている訳ではない。今は」
「今は、って……氷室さんはいつもこんな感じなんですか? これはみんな遠くから見ていたくなるかも」
「うん。こんな感じ。笑えば可愛いところもあるんだけどねー」
「……今はそういう話をしている場合じゃないだろう?」

 何か氷室さんがかけている銀縁の長方形の眼鏡の縁が光ったような。
 切れ長の目と眼鏡のセットはなかなかの威圧感だし。

「事情は私が理解できるようなことではないのかもしれませんが。せめて、協力的になっていただかないと、私、何も分からない素人ですからね? 脅されても困ります」
「脅す? 言葉には気をつけてくれ。私は……」

 ズイっと来るし! 私は何か負けたくなくて背筋を伸ばして見上げてじっと見返す。

「まあまあまあ! これから一緒に過ごす時間も増えるだろうし? 仲良くしよう! 優しく丁寧に教えるし。婚約者として、ちゃんと優しくエスコートするから」

 社長が私たちの間に入ってニコっと微笑むと、キラっと明るくなったみたいで耐性がないとドキっとする。
 下手にイケメンだから勘違いしそうになっちゃう。

 色んな人にこうやって微笑んでるんだろうけど、明るい感じがアイドルっぽい感じはする。

 この人の隣にいたら、私は確かに地味だろうな。
 別に目立ちたい訳じゃないからいいんだけど。

 何だか複雑そうな事情があるのかな?
 だとしても……今の私にはきっと理解もできないことなんだろうな、ということだけは分かった気がした。
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