16 / 85
第一章 太陽の王子様と氷の王子様
15.またまた食事へ
しおりを挟む
「はぁ……やっと終わった……」
「小鳥さん、だいぶ慣れてきたんじゃない? 資料作りも丁寧だし、時間も少しずつ早くできるようになってきていると思うわ」
「ありがとうございます。岬さんにずっといて欲しい……」
「ふふ。ありがとう。私も一緒にお仕事していたいから、私が戻ってくるまでここにいて欲しいわ」
ノートパソコンを閉じて、岬さんと笑い合う。
ここで秘書のお仕事をしてから一ヶ月は経ったかな。
岬さんが産休に入る期間も迫っているしパーティーに参加する日も近づいてきて、色々と慌ただしい。
癒しの岬さんがいなくなったら他の人の補充もないらしいしここで一人きりだ。
社長と氷室さんは二人で奥の部屋で仕事だろうし。
寂しくなるなぁ……。
「お、二人もあがり? 今日はまた別のお店で食事でもどう?」
噂をすれば、奥の部屋から出てきた社長がウィンクしながら食事に誘ってくる。
同僚と言っていいのか分からない社長が言うと、ナンパのようで変な感じだ。
ただ、いちいち仕草が決まっているから社長が他の部署に顔を出すと、若い女の子たちは大抵きゃあきゃあ言っていた気がする。
……隣で立っている私は居た堪れない気持ち。
このポジションを差し上げますって言いたい。
「あら、社長。どんなお店に連れて行ってくださるんですか?」
「ここは普段行けないようなお店に誘っちゃおうかな? 栞央里ちゃんがいなくなっちゃう前にあの店の肉も食べたいし」
「社長が奢ってくださるなら。素敵な店には行ってみたいですけど、私達は節約して過ごしていますから」
電話をしていた氷室さんがスマホをスーツのポケットに締まってから、話も聞いていないはずなのに社長を軽く睨む。
「また食事にでも誘っていたのか? 全く……彼女たちも暇じゃないのだから無理に誘ったりするな」
「明日休みだからさ。えかき亭なんてどうかなってね」
「本気で行く気か?」
「本気。だって、俺も疲れたし。ことりちゃんと栞央里ちゃんも頑張ってくれてるんだからご褒美」
言いながら一番楽しそうにしている社長に笑ってしまう。
誰かとご飯を一緒に食べるのが実は好きなのかな?
最初はナンパみたいだって思ったけど、広い家でも一人で食べるご飯は寂しいときもあるのかもしれない。
「ご褒美だったら遠慮なくもらっちゃいましょうか。ね?」
「岬さんが行くなら、私も行きます!」
「じゃあ、決まり! 秦弥、足の手配よろしく」
「お前が行くならば必然的に私も行かなくてはいけなくなるのだが……仕方ない」
文句を言いながら、氷室さんが電話でハイヤーの手配をする。
この前も行ったばかりのような気もするけど、普段行かないお店だと思うと、純粋にちょっと行ってみたくなる。
「小鳥さん、だいぶ慣れてきたんじゃない? 資料作りも丁寧だし、時間も少しずつ早くできるようになってきていると思うわ」
「ありがとうございます。岬さんにずっといて欲しい……」
「ふふ。ありがとう。私も一緒にお仕事していたいから、私が戻ってくるまでここにいて欲しいわ」
ノートパソコンを閉じて、岬さんと笑い合う。
ここで秘書のお仕事をしてから一ヶ月は経ったかな。
岬さんが産休に入る期間も迫っているしパーティーに参加する日も近づいてきて、色々と慌ただしい。
癒しの岬さんがいなくなったら他の人の補充もないらしいしここで一人きりだ。
社長と氷室さんは二人で奥の部屋で仕事だろうし。
寂しくなるなぁ……。
「お、二人もあがり? 今日はまた別のお店で食事でもどう?」
噂をすれば、奥の部屋から出てきた社長がウィンクしながら食事に誘ってくる。
同僚と言っていいのか分からない社長が言うと、ナンパのようで変な感じだ。
ただ、いちいち仕草が決まっているから社長が他の部署に顔を出すと、若い女の子たちは大抵きゃあきゃあ言っていた気がする。
……隣で立っている私は居た堪れない気持ち。
このポジションを差し上げますって言いたい。
「あら、社長。どんなお店に連れて行ってくださるんですか?」
「ここは普段行けないようなお店に誘っちゃおうかな? 栞央里ちゃんがいなくなっちゃう前にあの店の肉も食べたいし」
「社長が奢ってくださるなら。素敵な店には行ってみたいですけど、私達は節約して過ごしていますから」
電話をしていた氷室さんがスマホをスーツのポケットに締まってから、話も聞いていないはずなのに社長を軽く睨む。
「また食事にでも誘っていたのか? 全く……彼女たちも暇じゃないのだから無理に誘ったりするな」
「明日休みだからさ。えかき亭なんてどうかなってね」
「本気で行く気か?」
「本気。だって、俺も疲れたし。ことりちゃんと栞央里ちゃんも頑張ってくれてるんだからご褒美」
言いながら一番楽しそうにしている社長に笑ってしまう。
誰かとご飯を一緒に食べるのが実は好きなのかな?
最初はナンパみたいだって思ったけど、広い家でも一人で食べるご飯は寂しいときもあるのかもしれない。
「ご褒美だったら遠慮なくもらっちゃいましょうか。ね?」
「岬さんが行くなら、私も行きます!」
「じゃあ、決まり! 秦弥、足の手配よろしく」
「お前が行くならば必然的に私も行かなくてはいけなくなるのだが……仕方ない」
文句を言いながら、氷室さんが電話でハイヤーの手配をする。
この前も行ったばかりのような気もするけど、普段行かないお店だと思うと、純粋にちょっと行ってみたくなる。
28
あなたにおすすめの小説
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
如月 そら
恋愛
「二度目は偶然だが、三度目は必然だ。三度目がないことを願っているよ」
(三度目はないからっ!)
──そう心で叫んだはずなのに目の前のエリート役員から逃げられない!
「俺と君が出会ったのはつまり必然だ」
倉木莉桜(くらきりお)は大手エアラインで日々奮闘する客室乗務員だ。
ある日、自社の機体を製造している五十里重工の重役がトラブルから莉桜を救ってくれる。
それで彼との関係は終わったと思っていたのに!?
エリート役員からの溺れそうな溺愛に戸惑うばかり。
客室乗務員(CA)倉木莉桜
×
五十里重工(取締役部長)五十里武尊
『空が好き』という共通点を持つ二人の恋の行方は……
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
花の精霊はいじわる皇帝に溺愛される
アルケミスト
恋愛
崔国の皇太子・龍仁に仕える女官の朱音は、人間と花仙との間に生まれた娘。
花仙が持つ〈伴侶の玉〉を龍仁に奪われたせいで彼の命令に逆らえなくなってしまった。
日々、龍仁のいじわるに耐えていた朱音は、龍仁が皇帝位を継いだ際に、妃候補の情報を探るために後宮に乗り込んだ。
だが、後宮に渦巻く、陰の気を感知した朱音は、龍仁と共に後宮の女性達をめぐる陰謀に巻き込まれて……
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
祖父の遺言で崖っぷちの私。クールな年下後輩と契約結婚したら、実は彼の方が私にぞっこんでした。
久遠翠
恋愛
広告代理店で働く仕事一筋のアラサー女子・葉月美桜。彼女の前に突きつけられたのは「三十歳までに結婚しなければ、実家の老舗和菓子屋は人手に渡る」という祖父の遺言だった。崖っぷちの美桜に手を差し伸べたのは、社内で『氷の王子』と噂されるクールな年下後輩・一条蓮。「僕と契約結婚しませんか?」――利害一致で始まった、期限付きの偽りの夫婦生活。しかし、同居するうちに見えてきた彼の意外な素顔に、美桜の心は揺れ動く。料理上手で、猫が好きで、夜中に一人でピアノを弾く彼。契約違反だと分かっているのに、この温かい日だまりのような時間に、いつしか本気で惹かれていた。これは、氷のように冷たい契約から始まる、不器用で甘い、とろけるような恋の物語。
定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました
藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。
そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。
ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。
その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。
仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。
会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。
これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる