22 / 75
22.楽しかったのにどうして
しおりを挟む
街をぶらぶらと歩いて、飲み物や焼き串を買う。
僕も欲しいものはないかと聞かれたから、クッキーを買ってもらった。
その他にも持ちきれないくらい食べ物を買ったんだけど、お金は大丈夫なのかな?
ラグお姉さんは大丈夫だって言ってたけど、ラグお姉さんも歩きながらいっぱい食べてるしルナちゃんも負けないくらい食べてる気がする。
「あたし、果物も気になったから買いに行ってくるわ。ラグとフィロはその辺の椅子にでも座って寛いでなさい」
「そうか。私ももう少し焼き串を買い足してこよう。フィロ、そこのベンチに座って待っていてくれ」
「うん、分かった」
広場で二人を見送ってから、僕は近くのベンチに座る。
腰のポケットからクッキーの入った透明の小さい袋を出して、クッキーを一枚出す。
「ポイ、クッキー食べる?」
「ピ!」
クッキーを小さく割って、胸ポケットにいるポイの口に持っていく。
ポイは器用にくちばしを開いて、クッキーを食べ始めた。
下を向いてポイと話していたから、急に暗くなったことに気づかなかった。
「やっとガキ一人になったか」
「だな。ガキには何もできやしねぇよ」
僕がぱっと上を向くと、ギルドで見たゴロツキの男の人たちに囲まれていた。
五人に囲まれてるから、街の人たちも僕が座っていることは分からないかもしれない。
どうしよう? 考えているうちに口をふさがれてしまう。
「うーっ!」
「騒がれる前に気絶させとけ。袋につめちまえばどうにかなるだろ」
僕が必死に暴れていると、ポケットからポイが飛び出して目の前の男の人の手を突き始めた。
「ピピピっ!」
「いでっ! なんだこの赤い鳥は」
「赤い鳥? コイツは珍しいじゃねぇか。高く売れるかもしれねぇ。そいつも捕まえておけ」
ポイまで捕まえられちゃう! 僕はじたばたしながら口をふさがれた手に思いっきりかみついた。
「いてっ! コイツ暴れやがって!」
「何もたもたしてんだよ!」
後ろの人から頭をガンッと殴られた。
目の前がぐわんぐわんして、目を開けていられなくなっちゃう。
ポイも男の人につかまれちゃって、袋に入れられているのがぼんやり見える。
「お、おいバカ! ここでやっちまうのはマズイだろ」
「大丈夫だって。急所は外した」
「大きな声出すな! 袋につめたらずらかるぞ」
ラグお姉さん、ルナちゃん……ごめん。
僕は何もできなかった。
起きてなくちゃいけないのに、勝手に目が閉じていく。
+++
僕が目を開けると、ほこりっぽいところに寝転んでいた。
薄暗いけど、たぶん建物の中なんだと思う。
椅子と机っぽいものが置いてあるのが見えた。
頭はズキズキするけど、僕は生きてるみたいだ。
身体はロープで縛られているから動けないし、口も布で縛られているからうまくしゃべれない。
ポイもつかまっちゃってたし、僕はこれからどうなるんだろう。
何もできなかったのがくやしいな。
僕は魔法も使えないし、力も強くない。
だから、悪い人をやっつけるなんてできない。
悲しくなって泣きそうになるけど、今は泣いちゃだめだ。
ここから頑張って逃げて、ポイを探さなくちゃ。
僕も欲しいものはないかと聞かれたから、クッキーを買ってもらった。
その他にも持ちきれないくらい食べ物を買ったんだけど、お金は大丈夫なのかな?
ラグお姉さんは大丈夫だって言ってたけど、ラグお姉さんも歩きながらいっぱい食べてるしルナちゃんも負けないくらい食べてる気がする。
「あたし、果物も気になったから買いに行ってくるわ。ラグとフィロはその辺の椅子にでも座って寛いでなさい」
「そうか。私ももう少し焼き串を買い足してこよう。フィロ、そこのベンチに座って待っていてくれ」
「うん、分かった」
広場で二人を見送ってから、僕は近くのベンチに座る。
腰のポケットからクッキーの入った透明の小さい袋を出して、クッキーを一枚出す。
「ポイ、クッキー食べる?」
「ピ!」
クッキーを小さく割って、胸ポケットにいるポイの口に持っていく。
ポイは器用にくちばしを開いて、クッキーを食べ始めた。
下を向いてポイと話していたから、急に暗くなったことに気づかなかった。
「やっとガキ一人になったか」
「だな。ガキには何もできやしねぇよ」
僕がぱっと上を向くと、ギルドで見たゴロツキの男の人たちに囲まれていた。
五人に囲まれてるから、街の人たちも僕が座っていることは分からないかもしれない。
どうしよう? 考えているうちに口をふさがれてしまう。
「うーっ!」
「騒がれる前に気絶させとけ。袋につめちまえばどうにかなるだろ」
僕が必死に暴れていると、ポケットからポイが飛び出して目の前の男の人の手を突き始めた。
「ピピピっ!」
「いでっ! なんだこの赤い鳥は」
「赤い鳥? コイツは珍しいじゃねぇか。高く売れるかもしれねぇ。そいつも捕まえておけ」
ポイまで捕まえられちゃう! 僕はじたばたしながら口をふさがれた手に思いっきりかみついた。
「いてっ! コイツ暴れやがって!」
「何もたもたしてんだよ!」
後ろの人から頭をガンッと殴られた。
目の前がぐわんぐわんして、目を開けていられなくなっちゃう。
ポイも男の人につかまれちゃって、袋に入れられているのがぼんやり見える。
「お、おいバカ! ここでやっちまうのはマズイだろ」
「大丈夫だって。急所は外した」
「大きな声出すな! 袋につめたらずらかるぞ」
ラグお姉さん、ルナちゃん……ごめん。
僕は何もできなかった。
起きてなくちゃいけないのに、勝手に目が閉じていく。
+++
僕が目を開けると、ほこりっぽいところに寝転んでいた。
薄暗いけど、たぶん建物の中なんだと思う。
椅子と机っぽいものが置いてあるのが見えた。
頭はズキズキするけど、僕は生きてるみたいだ。
身体はロープで縛られているから動けないし、口も布で縛られているからうまくしゃべれない。
ポイもつかまっちゃってたし、僕はこれからどうなるんだろう。
何もできなかったのがくやしいな。
僕は魔法も使えないし、力も強くない。
だから、悪い人をやっつけるなんてできない。
悲しくなって泣きそうになるけど、今は泣いちゃだめだ。
ここから頑張って逃げて、ポイを探さなくちゃ。
27
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる