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23.頑張ったら来てくれた!

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 ロープを緩めるために身体をグリグリ動かしてみるけど、全然緩くなってくれない。
 床の上を転がって、ロープが切れそうな何かを探してみる。

 よく見ると、ビンが割れて破片はへんが転がっているのが見えた。
 床の上をずりずりしながら、縛られている手で破片を握る。

「……ぅ」

 手が痛い気がする。
 でも、今はロープを切らなくっちゃ。
 がまんして手首のところに当ててこすり続ける。

 ぷちぷちと切れる感じがして、手首が自由になったのが分かった。
 破片を置いて、手をグーパーしてみる。
 これでロープも解けそう。
 
 身体を捻ってロープの結び目に触る。
 手が痛い。
 力が入りづらくて、なかなかうまく解けない。
 
「む、むぅ……」

 息苦しいのもすっかり忘れてた。
 口をふさいでいる布を取ろうとしたときに、バァン! という大きな音がして扉が吹き飛ばされた。

 ホコリが舞って、周りが良く見えない。

「フィロ!」
「生きてる?」

 バタバタという足音と一緒に、嬉しい声が聞こえてくる。
 ラグお姉さんとルナちゃんが僕の側に駆け寄ってきてくれた。
 
 ラグお姉さんが布とロープをあっという間に外して、僕を抱き起してくれる。
 怪我をしていないかと、僕の身体のいろんな場所を撫でながら確かめてくれているみたい。

「……たりとも、どうして?」

 二人は、角と耳と尻尾を隠してない。
 驚いたんだけど僕が質問する前にラグお姉さんが僕の手を見て、すまないと言いながら僕を抱きしめてくれた。

「今、治してあげるから」
「あ……」

 ルナちゃんは左手で僕の手を優しく持ち上げながら、右手をかざして何かを唱えはじめた。
 温かい光が僕の手に当たると血が出て痛かったはずなのに、傷がみるみるふさがっていく。

「目を離した隙を狙ってくるとは。油断していたな。怖かっただろう?」
「大きな袋を抱えたやつらが、街の外れにこそこそ行ったって言うのを聞いたのよ。ギルドにいた冒険者が見かけてて、騒ぎを起こしたヤツに間違いないってね」
「二人ともありがとう。僕は大丈夫だけど、ポイが! ポイも捕まっちゃって!」

 慌てて起き上がろうとすると、ラグお姉さんが難しい顔をしながら僕を優しく立たせてくれた。
 
「あいつらが酒場で大騒ぎしていたところを見つけてな。連れ出してフィロの居場所を吐かせたんだが。ヤツらポイをどこかに売り飛ばした金で酒を飲んでいたんだろう」
「どうしよう! ポイが……」
「大丈夫よ。捕まえたヤツらは私の分身に見張らせておいたから。今、ポイの居場所も吐かせるわね」

 ルナちゃんが目を瞑って、何か集中している。
 分身って言うのは、ルナちゃんの魔法でもう一人のルナちゃんを作れるんだって。
 魔法が得意だって言ってたのは聞いていたんだけど、ルナちゃんはすごいんだなぁ。
 
 その間にラグお姉さんが僕の身体についたホコリを落としたり、他にも痛いところがないかと優しく身体を撫でてくれた。
 ラグお姉さんは扉を壊しちゃうくらい力が強いから、悪い人たちもすぐに倒しちゃったみたい。

「……珍しい物好きの人間が集まるオークションに出したみたいね。悪い貴族がどんな品物でも買い取ってオークションで一儲けしてるらしいわ」
「裏ルートで稼ぐとは。まともではないと思っていたが、冒険者ではなく本当にゴロツキだな」
「早く助けに行かなくっちゃ!」

 三人で頷き合ってから、ルナちゃんとラグお姉さんもマントのフードを被る。
 力を使う時は変身が解けちゃうって言ってたから、悪い人たちを警備に引き渡すまではうまく隠さなくっちゃ。
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