殲滅騎士団団長の俺、国王にすら恐れられてるけど家族溺愛してます。〜ここではパパじゃなくて騎士団長と呼びなさい!(焦)〜

蛮野晩

文字の大きさ
6 / 23

第6話 パパは公私混同しない主義なので(キリッ)

しおりを挟む

 翌日の朝。
 俺は騎士団に出勤すると騎士団長室で内勤だ。

「あいつら、今頃はしゃいでるだろうな~」

 俺にとって今日はいつもの朝だが、入団試験受験者にとっては特別な朝。
 朝から王都の広場では騎士団入団試験合格者発表が行なわれている。

 今頃きっと広場では多くの若者の悲喜交々ひきこもごもが広がっていることだろう。オデットとシャロットも合格していると勘づいていても合格者リストから名前を見つける喜びは格別だ。
 そんな難関試験を突破した若者たちを俺は騎士団団長として歓迎する。
 今日の午後からの予定は入団式で歓迎の挨拶をしたあと、そのまま新人騎士の演習訓練を視察予定だった。

「団長、失礼します。そろそろ出発の準備をよろしくお願いいたします」
「もうそんな時間か」
「はい、広場には続々と合格者が集まっています。あと一時間ほどで入団式が始まりますのでよろしくお願いいたします」
「わかった。すぐに支度する」

 俺は執務椅子からゆっくり立ち上がる。
 新人騎士を歓迎するため、俺は広場へ向かうのだった。



 俺が移動する馬車には二つの軍旗ぐんきがひるがえる。
 一つは騎士団の象徴、もう一つは騎士団長の象徴。
 この旗を掲げると大通りでは多くの民衆が振り返り、なかには手を振って歓声を送ってくれる人もいるくらいだ。

 広場に到着すると、すでに新人騎士たちは整列していた。

 俺が馬車から姿を見せた途端、整列していた新人騎士たちが息を飲んだのが分かる。
 どの新人騎士も真剣な顔で整列しているのに、雰囲気に興奮と高揚を隠しきれていない。俺に向けられる瞳がキラキラ輝いていて、尊敬しています! と全身で訴えてきているようだ。
 俺はそれを一瞥いちべつもせず、士官に先導されて壇上へあがった。
 新人騎士たちは口を引き結んだ真剣な顔で壇上の俺を見あげる。

 もちろん俺も真剣な顔で新人騎士を見渡したが……、あ、いた!

 オデットは前から五番目、右から七列目。
 シャロットは前から四番目、右から六列目。

 ああああああっ、ダメだ! ダメなのに視界の娘たちを意識してしまう!

 だって入団式だぞ! 娘たちの晴れ舞台だぞ! そんな場合じゃないのに、娘たちの入学式とか思い出してしまう。
 娘たちがまだ幼い頃、初めての学校に緊張しつつも晴れ着のドレス姿で俺に手を振ってくれた。

『パパ、みてる~!?』と笑顔で大きく手を振ったシャロット。
『パパ……』と恥ずかしそうに小さく手を振ったオデット。

 俺は『こらこら、入学式だぞ。ちゃんと先生の話を聞きなさい』と注意しつつも内心嬉しかったのを覚えている。

 しかしもう娘たちは幼い子どもじゃない。そして俺は騎士団団長。公私混同などもってのほかだ。
 俺は顔面に緊張感を走らせた。キリッとした鋭い眼差しを作り、口元にぐっと力をこめる。厳格な騎士団長の顔だ。

「諸君、騎士団入団おめでとう。諸君が騎士団を志望してくれたこと嬉しく思う。諸君も知ってのとおり、十二年前に王都はダークドラゴンに破壊的な襲撃を受けた。あれから王都は復興したが、今でも癒えることがない傷を持つ者が多くいる。あのような悲劇を繰り返さないために我々騎士団は存在する。王国のため、民のため、力を尽くしてもらいたい。この栄誉ある騎士団の名に恥じぬよう、それをきもめいじて日々切磋琢磨せっさたくまするように。騎士団は諸君らを歓迎する!」

「敬礼!」

 士官の号令に新人騎士たちがいっせいに敬礼した。
 新人ながら一糸乱れぬ敬礼だ。
 俺は最後にさりげなく娘たちを視界に収めると壇上を降りた。
 俺の挨拶が終われば次に副団長や来賓らいひんなど序列で祝辞が続く。特に来賓の祝辞は長くて、背筋を伸ばしたまま微動もせず聞いている新人騎士が気の毒だ。

 こうして入団式はつつがなく終了し、次は新人演習訓練が始まる。
 各班に分かれて山に入り、そこに潜んでいる魔獣を討伐する。演習訓練では新人騎士が攻撃型か防御型かリーダー型かの適正を見極めるのだ。これによって新人騎士の騎士団内での初期配置が決定することになっていた。

 俺は本部として設営された大型テントに入った。
 本部にいるからといって俺は特にすることはない。演習訓練を指揮するのは部下の仕事なので、大型テントの奥にあるチェアに腰かけて報告を聞くだけだ。
 テントに入ってきた士官が補佐官に報告し、補佐官が俺に報告する。伝言ゲームのようで面倒だがこれが縦社会というやつだ。

「団長、ご報告します。演習訓練が開始されました。新人騎士総勢五十五名、各班五人に分かれて山に入ったとのことです。こちらが各班の名簿です」
「ん、ありがとさん」

 俺は名簿をたしかめる。
 オデットは三班、シャロットは五班。首席合格した娘たちは別々の班になったようだ。
 でも問題はない。この山に生息する魔獣は初級冒険者がちょっと苦戦するていどのレベルだ。娘たちはもちろん、他の新人騎士たちも問題なくクリアするだろう。むしろ騎士団試験の実技テストのほうが難しいくらいだ。

 演習訓練が開始して一時間、俺は定期報告を聞きながら訓練終了を待つ。
 新人騎士たちは各班で協力しながら魔獣を三体討伐しなければならない。山の各地に配置された騎士が各班の作戦行動や目立った活躍をする新人騎士をチェックしていた。

「報告します。現在、三班が二頭目の魔獣ガーゴイルに接触しました。首席合格したオデット・エインズワースを中心に見事な戦術で、……エインズワース、まさかこちらが団長の」
「いいからいいから、公私混同はなしで」
「申し訳ありません。団長の御令嬢が入団したと騎士団内では噂になっていましたので」
「気を遣わせて悪いな。でも俺の娘だからとか気にしないでいいから。他の新人騎士と同じように扱うように」
「はっ、申し訳ありません。承知いたしました」

 士官が敬礼して下がる。
 そうしているとまた別の士官が報告にきた。

「報告します。先ほど五班が二頭目の魔獣トロールに接触しました。首席合格したシャロット・エインズワースが一撃で討伐し、……エインズワース、まさかこちら」
「うん、そう、俺の娘。でも気にしないで。公私混同はなし。他の騎士と同じように扱ってくれ」
「はっ、申し訳ありません。承知いたしました」

 士官が敬礼して下がる。

 ……わかってた。もう騎士団では俺の娘が首席合格したことは知れ渡っている。

 幸いにも娘たちの優秀さは首席合格が証明している。さすがに俺の娘だからといって首席合格は実力でないと勝ち取れない。そのおかげで表立って妙なことを言ってくる者はいないが、それでも人の心は分からない。娘たちの同期のなかにはやっかむ者もいるだろう。それくらいでへこたれる娘たちではないが、それでも心配してしまうのは親心だ。もちろん公私混同はしないが。

 こうして俺は演習訓練の報告を聞いていたが、――――ふいに、ザワリッ。

「っ、なんだこの気配はっ……」

 ガタンッ! 立ち上がった勢いで椅子がひっくり返った。

 本部にいた士官たちが驚いた顔で俺を振り返る。誰も気付いていないが微かに感じた極小の気配。
 俺は急いでテントの外に出た。
 そして演習訓練場の山を見据える。

 山が……変わった?

 今までなにも感じなかったのに、突如、山でなにかが出現した。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...