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どこで私と兄の道がわかれてしまったのだろう。
あぁそうだ。マールバラ王は生涯ひとりの異性しか愛せないと知りながら、リリスが死ねば…と考えるようになった頃。
「私のほうが、リリスより兄さまを好き。」と言ってしまった。
何が切っ掛けだったからは覚えていないが、たわいもない話からそんなことを口走ることになったのだと思う。
なせなら、兄は簡単にそれも笑顔で「ありがとう。」と言ったのだ。驚く私に兄は
「妹に慕われるというのは気分がいいな。大臣が(妹が妻にやきもちを焼いて、困っているんです。)とよく言うのだが、でも困った顔ではないのだ…嬉しそうなのだ。あの時はわからなかったが、そうか大臣はこんな気持ちなのだなぁ。」
…大臣の妹はまだ10歳、そんな幼い子と同じ気持ちだと思われた。
兄にとって、私はいつまでも地下牢にいた頃の幼い私のままなのだと知った。
わかっていたはずだった。
リリスを呼ぶ兄の声には甘さがあった。
わかっていたはずだった。
リリスを見つめる目に熱があることを。
…あぁ、リリスの事は…もういい。リリスは殺したのだから、もういい。
兄自身が手に入らないのなら、兄の体に纏う《王華》が欲しいと思ったのはあの後すぐだ。
エリザベスを殺しさえすれば…兄にはもう子供はできない。
そうすれば、私の兄への思いを知らない貴族達は、私を担ぎ出すだろう。そうなれば…自然と《王華》は私へと譲られる。
マールバラ王国の終焉への始まりだ。マールバラ王族は愛する人の間しか子供が授からないから…滅亡する。
あぁマールバラが滅亡するのだ。私を認めなかったこの国を私が滅亡へと追い込む。その甘美な夢に酔いしれた。
だが、殺そうとしたエリザベスは生まれながらに《王華》を持っていたことを知り、計画は実行できずにいた。
そんな時、面白い事があった。
4歳のエリザベスが、10歳のアークフリードに、魅了の魔法を掛けたのだ。
さすがに私も驚いたが、兄やリリスは私以上だったのだろう。
慌てふためく二人を見ながら、マールバラ王一族は生涯たったひとりに愛情を捧げるのだ、遅かれ早かれ、あのアークフリードはエリザベスの伴侶となるはず、魅了の魔法を解いてもエリザベスはあの坊やを追いかける、ならほっとけばいいのに…と思った時だった。
…ひらめいたのだ。
エリザベスを殺すのが難しいなら、アークフリードを早いうちに始末すればいいのではないかと…。
マールバラの王族は生涯ひとりにだけ愛を捧げる運命、この運命を呪っていた私だったが、この時ばかりは笑いが止まらなかった。
計画は順調で、あの時はアークフリードを殺すことを神も望んでいるのかもと思ったぐらいだ…なぜならノーフォーク国への侵入も、そしてブランドン公爵家への侵入も簡単だったからだ。
だが、それからあとはうまくいかなかった。
それはリリスの友人でもあり、アークフリードの母親のせいだ。
今でもあの母親を思い出す、あれが…親の愛?というものだったのだろうか…と。
親の愛…アークフリードの母親は階段から落ちていくのに、眼だけは短剣を持ってアークフリードの後ろにいる私を見ていたのだ。そう、悲しみと恐れが混じったような眼で私を見ていた。
計画ではアークフリードとその妹の2人を庭に誘い込んで殺すつもりだった、なぜ2人?…理由はない。しいて言えば子供は嫌いだからだ。
日頃からアークフリードと庭を散策している事を調べていた私は、侍女のふりをして近づき、あの少女に一言いえばよかった。
「フランシス様、お庭に奥様と植えられたコスモスが咲いております。」と。
だが、 あの少女は兄のアークフリー ドの部屋にいたのに…アークフリードを誘わずに
「お兄様、コスモスがやっと咲いたのよ。お母様とお庭に行ってきますね。」と言って、部屋の扉を開けたまま母親の元に走っていった。
以外だった、私なら兄を誘うはずだからだ…戸惑った私は、その場で短剣を抜き…アークフリードを刺そうとした。
だが階段を降りる母親には、開いたままの扉から、その場面が見えたのだろう。
「アーク!!」と叫んで踵を返そうとしたようだったが、バランスを崩し落ちていった。
母親の叫び声が邸内に響き、私はチャンスを失った。
だけど今回はあの母親はアークフリードの傍にはいない。
…ぁ…だが、コンウォールが…いる。コンウォールは兄さまの懐刀だった男、きっと何か仕掛けてくる。
何かを…。
あぁ、ばかばかしい、くだらないことばかり頭に浮かぶ。
すべてこの男の下手な性交のせいだ。
余計なことを考える暇もないくらいこの行為に夢中にさせてくれたらいいのに!
あぁ!すべて、思い通りにいかない!
いや、もう少しの辛抱だ。やっと、バクルー王が動いてくれるのだから。きっと今度こそ《王華》を兄さまの中にあった《王華》を手に入れる。
あぁそうだ。マールバラ王は生涯ひとりの異性しか愛せないと知りながら、リリスが死ねば…と考えるようになった頃。
「私のほうが、リリスより兄さまを好き。」と言ってしまった。
何が切っ掛けだったからは覚えていないが、たわいもない話からそんなことを口走ることになったのだと思う。
なせなら、兄は簡単にそれも笑顔で「ありがとう。」と言ったのだ。驚く私に兄は
「妹に慕われるというのは気分がいいな。大臣が(妹が妻にやきもちを焼いて、困っているんです。)とよく言うのだが、でも困った顔ではないのだ…嬉しそうなのだ。あの時はわからなかったが、そうか大臣はこんな気持ちなのだなぁ。」
…大臣の妹はまだ10歳、そんな幼い子と同じ気持ちだと思われた。
兄にとって、私はいつまでも地下牢にいた頃の幼い私のままなのだと知った。
わかっていたはずだった。
リリスを呼ぶ兄の声には甘さがあった。
わかっていたはずだった。
リリスを見つめる目に熱があることを。
…あぁ、リリスの事は…もういい。リリスは殺したのだから、もういい。
兄自身が手に入らないのなら、兄の体に纏う《王華》が欲しいと思ったのはあの後すぐだ。
エリザベスを殺しさえすれば…兄にはもう子供はできない。
そうすれば、私の兄への思いを知らない貴族達は、私を担ぎ出すだろう。そうなれば…自然と《王華》は私へと譲られる。
マールバラ王国の終焉への始まりだ。マールバラ王族は愛する人の間しか子供が授からないから…滅亡する。
あぁマールバラが滅亡するのだ。私を認めなかったこの国を私が滅亡へと追い込む。その甘美な夢に酔いしれた。
だが、殺そうとしたエリザベスは生まれながらに《王華》を持っていたことを知り、計画は実行できずにいた。
そんな時、面白い事があった。
4歳のエリザベスが、10歳のアークフリードに、魅了の魔法を掛けたのだ。
さすがに私も驚いたが、兄やリリスは私以上だったのだろう。
慌てふためく二人を見ながら、マールバラ王一族は生涯たったひとりに愛情を捧げるのだ、遅かれ早かれ、あのアークフリードはエリザベスの伴侶となるはず、魅了の魔法を解いてもエリザベスはあの坊やを追いかける、ならほっとけばいいのに…と思った時だった。
…ひらめいたのだ。
エリザベスを殺すのが難しいなら、アークフリードを早いうちに始末すればいいのではないかと…。
マールバラの王族は生涯ひとりにだけ愛を捧げる運命、この運命を呪っていた私だったが、この時ばかりは笑いが止まらなかった。
計画は順調で、あの時はアークフリードを殺すことを神も望んでいるのかもと思ったぐらいだ…なぜならノーフォーク国への侵入も、そしてブランドン公爵家への侵入も簡単だったからだ。
だが、それからあとはうまくいかなかった。
それはリリスの友人でもあり、アークフリードの母親のせいだ。
今でもあの母親を思い出す、あれが…親の愛?というものだったのだろうか…と。
親の愛…アークフリードの母親は階段から落ちていくのに、眼だけは短剣を持ってアークフリードの後ろにいる私を見ていたのだ。そう、悲しみと恐れが混じったような眼で私を見ていた。
計画ではアークフリードとその妹の2人を庭に誘い込んで殺すつもりだった、なぜ2人?…理由はない。しいて言えば子供は嫌いだからだ。
日頃からアークフリードと庭を散策している事を調べていた私は、侍女のふりをして近づき、あの少女に一言いえばよかった。
「フランシス様、お庭に奥様と植えられたコスモスが咲いております。」と。
だが、 あの少女は兄のアークフリー ドの部屋にいたのに…アークフリードを誘わずに
「お兄様、コスモスがやっと咲いたのよ。お母様とお庭に行ってきますね。」と言って、部屋の扉を開けたまま母親の元に走っていった。
以外だった、私なら兄を誘うはずだからだ…戸惑った私は、その場で短剣を抜き…アークフリードを刺そうとした。
だが階段を降りる母親には、開いたままの扉から、その場面が見えたのだろう。
「アーク!!」と叫んで踵を返そうとしたようだったが、バランスを崩し落ちていった。
母親の叫び声が邸内に響き、私はチャンスを失った。
だけど今回はあの母親はアークフリードの傍にはいない。
…ぁ…だが、コンウォールが…いる。コンウォールは兄さまの懐刀だった男、きっと何か仕掛けてくる。
何かを…。
あぁ、ばかばかしい、くだらないことばかり頭に浮かぶ。
すべてこの男の下手な性交のせいだ。
余計なことを考える暇もないくらいこの行為に夢中にさせてくれたらいいのに!
あぁ!すべて、思い通りにいかない!
いや、もう少しの辛抱だ。やっと、バクルー王が動いてくれるのだから。きっと今度こそ《王華》を兄さまの中にあった《王華》を手に入れる。
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