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ジェラルドは後ろからフリールとエリザベスのやり取りを見ていて、可笑しくて堪らなかった。いつも、自分を馬鹿にしたような眼でみる…あのごついフリール将軍が、よたよたとしてなかなか前に進めない少女に、指一本触れることも、声をかけることも躊躇させている。
ジェラルドは小さな声で「これじゃ、見つかるよ…将軍。」と言って後ろからフリールを嘲笑った時だ。バクルー国の兵士6人ほどが「貴様ら!!」と叫びこちらにやってくるのが見えた。
とっさにエリザベスの腕をとったジェラルドは「将軍、俺が王女を先に連れて行きます!」と言って、フリールの返事を待つことなく、エリザベスの手を取ると走り出したが、今のエリザベスが走れるはずもない。ジェラルドは、舌打ちをしたかと思ったら、エリザベスを肩に担いだ。エリザベスに先程フリールに見せた迫力はなかった。
それほど疲れていたエリザベスは、ジェラルドにされるまま担がれ、王宮の奥へと連れて行かれた。
マールバラの…あのエリザベス王女が、自分の肩に黙って担がれていることに、優越感を感じたジェラルドは、にやにやと笑い
ーフリールには、すごい迫力で「触らないで」と言ったのに、俺には身を任せている。おいおい!これはひょっとしたら、俺はエリザベス王女に気に入られていたのか?!
などと他の人が聞いたら、ジェラルドを一笑に付すようなことを、至極真面目に考えていた。
かなり王宮の奥にまで入ったジェラルドは、さすがにここまできたら大丈夫だろうが、しばらく隠れて、様子をみてから動くか…とそう思い、恐る恐る入った部屋は…。
大理石で作られた女神像が一体とソファがあるだけの部屋だった。だが、とてつもなく広く何の為に作られた部屋なのか、子爵の三男のジェラルドに知る由もなかった。きょろきょろと回りを見たが、何もないことにため息をつくと近くのソファにエリザベスを降ろし、ジェイドは額にかかる黒い髪を、左手でかき上げながら、もう一度部屋をぐるりと見回し、この部屋の中央にある大理石で作られた女神像に眼を留めた。それは台座を入れると3mほどの高さがあり、両腕に果物が入った籠を抱え持つ女神像だった。
「ちぇっ!なにもない。この馬鹿でかい女神像だけだ。金目の物があれば戴くつもりが…この部屋は何にもないなぁ…」
淡い色の青い瞳が、イラついたまま、最後にソファに寝かせたエリザベスに向いた。エリザベスの顔色は真っ青だった。まぁ疲れていたうえに、肩に担がれおまけに揺れれば酔ってしまうか…とエリザベスの顔を覗き込み
ーこの女が、エリザベス王女なんだよねぇ。紫の髪の時は…ちょっと怖かったが、この赤い髪ふ~んこうやって見ると、赤い髪って綺麗だよなぁ、この白い肌によく映える。そう言って、エリザベスの頬を触った…。エリザベスの眼が開いた…緑色の瞳がぼんやりとしている。
ーやっと会えた。
そう呟いたエリザベスの眼に、黒い髪と…青い瞳の青年が見えたのだろう…微笑みを浮かべた。
その顔は、きっとアークフリードしか知らない。 艶やかな顔だった。
ジェラルドは思わず唾を飲み込んだ。
ーやっぱり…気に入られてるのか…俺は。
そっとその手をエリザベスの胸元に動かそうとした。
カチン・・・・・
…という音に、ジェラルドの手は小刻みに震え、声をあげようにも…冷たい金属が…首に当たっていた。ジェラルドの耳に、殺気立った男の声が「それ以上…気安く触れるな。」と聞こえたかと思ったら、腹を蹴られ、ジェラルドは扉の近くまで、嘔吐物を撒き散らしながら、転がっていった。
「こいつ、マジ切れてるから、逆らわないほうが良いぜ。」
とライドは、ジェイド頭を叩いて、
「13年前に王宮の奥はそれほど燃えなかったから、残っているだろうと思っていたが、だけどおまえ、マールバラ王宮がいざと言う時のために、兵士を隠したり、外への脱出口となる隠し部屋の存在を知っていたのか?いやまさかなぁ…悪運か?…だがおまえの悪運のこれまでだ。ちょうど、俺達が外から入ってきたら、隠し部屋でエリザベス様と待っていてくれるとは…笑える。なぁ!アークフリード!……って…おいおい…アークフリード…」
と呆れた声は、やがて大きなため息になり、ライドは「少しぐらい待てねぇのかよ。」と呟き、今度は大きな声で
「アークフリード!ちょっとだけだぞ!」そう言うと、ぐったりとしたジェイドを連れ、部屋の外に出た。
アークフリードには、聞こえていなかったろう。
いや、耳だけではなかった。五感はすべてエリザベスへと向いていた。
その耳は、アークと呼ぶ、エリザベスの小さな声を拾い
その眼は、愛しいげにエリザベスを見つめ
そして唇は……ゆっくりとエリザベスの唇に重なった。
「無事で良かった…。」アークフリードは、そう言ってエリザベスを抱きしめた。エリザベスは、言葉がでなかった…言葉のかわりに、アークフリードの背に手を廻した。
アークフリードは…エリザベスの頭にキスをすると
「エリザベス…」と言って、腰につけていた袋から《王華》が入ったペンダントを出し、エリザベスの首かけた。
エリザベスは頷き、そして小さな声で呪文を唱えると目映いほどの光が、エリザベスの体を包み、赤い色の髪は…紫の髪に、緑の瞳は紫の瞳に変わった…エリザベスがいた。
ジェラルドは小さな声で「これじゃ、見つかるよ…将軍。」と言って後ろからフリールを嘲笑った時だ。バクルー国の兵士6人ほどが「貴様ら!!」と叫びこちらにやってくるのが見えた。
とっさにエリザベスの腕をとったジェラルドは「将軍、俺が王女を先に連れて行きます!」と言って、フリールの返事を待つことなく、エリザベスの手を取ると走り出したが、今のエリザベスが走れるはずもない。ジェラルドは、舌打ちをしたかと思ったら、エリザベスを肩に担いだ。エリザベスに先程フリールに見せた迫力はなかった。
それほど疲れていたエリザベスは、ジェラルドにされるまま担がれ、王宮の奥へと連れて行かれた。
マールバラの…あのエリザベス王女が、自分の肩に黙って担がれていることに、優越感を感じたジェラルドは、にやにやと笑い
ーフリールには、すごい迫力で「触らないで」と言ったのに、俺には身を任せている。おいおい!これはひょっとしたら、俺はエリザベス王女に気に入られていたのか?!
などと他の人が聞いたら、ジェラルドを一笑に付すようなことを、至極真面目に考えていた。
かなり王宮の奥にまで入ったジェラルドは、さすがにここまできたら大丈夫だろうが、しばらく隠れて、様子をみてから動くか…とそう思い、恐る恐る入った部屋は…。
大理石で作られた女神像が一体とソファがあるだけの部屋だった。だが、とてつもなく広く何の為に作られた部屋なのか、子爵の三男のジェラルドに知る由もなかった。きょろきょろと回りを見たが、何もないことにため息をつくと近くのソファにエリザベスを降ろし、ジェイドは額にかかる黒い髪を、左手でかき上げながら、もう一度部屋をぐるりと見回し、この部屋の中央にある大理石で作られた女神像に眼を留めた。それは台座を入れると3mほどの高さがあり、両腕に果物が入った籠を抱え持つ女神像だった。
「ちぇっ!なにもない。この馬鹿でかい女神像だけだ。金目の物があれば戴くつもりが…この部屋は何にもないなぁ…」
淡い色の青い瞳が、イラついたまま、最後にソファに寝かせたエリザベスに向いた。エリザベスの顔色は真っ青だった。まぁ疲れていたうえに、肩に担がれおまけに揺れれば酔ってしまうか…とエリザベスの顔を覗き込み
ーこの女が、エリザベス王女なんだよねぇ。紫の髪の時は…ちょっと怖かったが、この赤い髪ふ~んこうやって見ると、赤い髪って綺麗だよなぁ、この白い肌によく映える。そう言って、エリザベスの頬を触った…。エリザベスの眼が開いた…緑色の瞳がぼんやりとしている。
ーやっと会えた。
そう呟いたエリザベスの眼に、黒い髪と…青い瞳の青年が見えたのだろう…微笑みを浮かべた。
その顔は、きっとアークフリードしか知らない。 艶やかな顔だった。
ジェラルドは思わず唾を飲み込んだ。
ーやっぱり…気に入られてるのか…俺は。
そっとその手をエリザベスの胸元に動かそうとした。
カチン・・・・・
…という音に、ジェラルドの手は小刻みに震え、声をあげようにも…冷たい金属が…首に当たっていた。ジェラルドの耳に、殺気立った男の声が「それ以上…気安く触れるな。」と聞こえたかと思ったら、腹を蹴られ、ジェラルドは扉の近くまで、嘔吐物を撒き散らしながら、転がっていった。
「こいつ、マジ切れてるから、逆らわないほうが良いぜ。」
とライドは、ジェイド頭を叩いて、
「13年前に王宮の奥はそれほど燃えなかったから、残っているだろうと思っていたが、だけどおまえ、マールバラ王宮がいざと言う時のために、兵士を隠したり、外への脱出口となる隠し部屋の存在を知っていたのか?いやまさかなぁ…悪運か?…だがおまえの悪運のこれまでだ。ちょうど、俺達が外から入ってきたら、隠し部屋でエリザベス様と待っていてくれるとは…笑える。なぁ!アークフリード!……って…おいおい…アークフリード…」
と呆れた声は、やがて大きなため息になり、ライドは「少しぐらい待てねぇのかよ。」と呟き、今度は大きな声で
「アークフリード!ちょっとだけだぞ!」そう言うと、ぐったりとしたジェイドを連れ、部屋の外に出た。
アークフリードには、聞こえていなかったろう。
いや、耳だけではなかった。五感はすべてエリザベスへと向いていた。
その耳は、アークと呼ぶ、エリザベスの小さな声を拾い
その眼は、愛しいげにエリザベスを見つめ
そして唇は……ゆっくりとエリザベスの唇に重なった。
「無事で良かった…。」アークフリードは、そう言ってエリザベスを抱きしめた。エリザベスは、言葉がでなかった…言葉のかわりに、アークフリードの背に手を廻した。
アークフリードは…エリザベスの頭にキスをすると
「エリザベス…」と言って、腰につけていた袋から《王華》が入ったペンダントを出し、エリザベスの首かけた。
エリザベスは頷き、そして小さな声で呪文を唱えると目映いほどの光が、エリザベスの体を包み、赤い色の髪は…紫の髪に、緑の瞳は紫の瞳に変わった…エリザベスがいた。
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