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11、ごはん仲間が試験勉強仲間になりました
しおりを挟む試験期間が近づいて、学生たちはストレスを抱えている。「ごはん仲間」のメンバーは「試験勉強仲間」に変わっていた。パワーアップだ。
「異世界から来たばかりのあたしにみんなと同じ点を取れって無理だと思うの」
嘆くマナちゃんは、国の歴史や外国語が苦手で、数学が得意みたい。
「歴史は暗記すればいける。いい箱開けてオレのお祖父様即位、だ」
アキュレス殿下が年表を手に暗記方法を教えている。ロザリア様はその隣で白いハンカチを手に、さりげなくアキュレス殿下の汗を拭った。
「ありがとうオレのロザリア。愛しているよ」
「アキュレス殿下……」
熱く見つめ合う二人を日常背景にして、私たちはノートに「いい箱開けて、アキュレス殿下のお祖父様即位」と書き留めた。
そして後日行われた試験で揃って同じ文言を書いて、赤ペンで「いい箱は年号を指すのかと思いますが、ちゃんと数字で年号を書きましょう。アキュレス殿下のお祖父様ではなくちゃんとお名前を書きましょう」と丁寧に指摘されたのだった。
「お前たち、何故そっくりそのまま答案に書いたのだ。オレのせいみたいだろうが」
アキュレス殿下は残念そうな顔をしてジャスティン様の肩を叩いた。
「ジャスティンはちゃんと正解したぞ、見習いたまえ」
アキュレス殿下は褒美と称して仰々しいプレゼントボックスを運ばせた。
「わあ、何が入っていますの?」
見守る私たちの視線の先で、箱がパカっと開けられる。
「箱ですね」
なんと箱の中には箱があった。
「……」
アキュレス殿下に微妙な視線が集中すると、ロザリア様が「殿下は悪戯がお好きで……」とフォローしている。
「ジャスティン、ちょっと箱の中に箱が入ってたくらいでなんだその眼は、不敬だぞ。オレの好意を疑うな、ほらさっさと次オープンだオープン」
「殿下……」
半眼になりながらジャスティン様が箱を開けていく。
パカっ。
「また箱ですね」
「どうだ、この一瞬の期待が絶望に変わる感覚。楽しいだろう?」
「いえ全然」
パカっ、
「また箱……もう開けなくていいです?」
「諦めるなよ! 投げ出すなよ! 最後まで開けていこうぜ!」
パカっ。
「……」
「ジャスティン、ファイトだ! くじけるな!」
「じゃ、ジャスティン様、頑張って……」
だんだんうんざりムードの高くなるジャスティン様。
アキュレス殿下は謎のハイテンションで暑苦しく励まし続け、それにロザリア様が乗り、しまいには私とマナちゃんも応援し始めた。
「ふぁ、い、と!」
「頑張って……!」
「なんであたし応援してるんだろうコレ。まあいっかがんばれー!」
「最後にきっと良いことがありますわ!」
謎のハイテンション空間、箱オープン大会は、やがて終わりを迎えた。
「あ、箱じゃなくてモノがありましたよ。これはハンカチですね」
何度か箱を開けて、ジャスティン様がようやく贈り物に辿り着いたのだ。
「うむ! そのハンカチをコーデリア嬢に渡して刺繍してもらうのだ!」
アキュレス殿下が突然キラーパスをしてくる。
「ふぁっ!?」
「もうすぐダンスパーティだろう! そこでコーデリア嬢は刺繍入りのハンカチをジャスティンに渡すのだ。オレ様の命令だぞ!」
「殿下! オレ様キャラも素敵ですがあんまり暴君っぽくなると悪役ルートに入って痛い目に遭う危険性もありますから、気をつけてくださいまし……!」
ロザリア様があやしい発言をしている。
「さてはロザリアちゃん、こっちの人ね?」
マナちゃんが目をキラーンとさせた。
この日私たち女子三人は異世界トークができる仲間になったのだった。
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