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出会う
二、
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それから2日後、意外にもあっさり男を見つけることができた。
その日は茶色にピンクのストライプのスーツにコバルトブルーのシャツ。レモン色の蝶ネクタイが、美しく映えてうらやましい限りだった。
すぐにでも声をかけたかったが、女の人と歩いていたから、物陰に隠れながらチョット後ろをついて行った。
僕はそのスーツに釘付けで、瞬きもせず追い、ようやく、彼が1人になったところですかさず走って横に並んだ。
「こんにちわ。また見つけちゃいました。」
男は驚きを隠せず3、4歩よろめいて、「あ、あ、君か。」と言った。
そんなに驚いたのは、たぶん女の人と今別れたばかりだからだろうと勝手に思い込んだ。
「ここじゃなんだから、アイスクリームでも食べながらゆっくり話そう。」
スーツの男は又、スタスタと先を歩いて路地の奥に入って行った。
今日は一段と足が速く、置いて行かれないように必死で跡を追った。
路地を曲がって、曲がって、曲がった先の結局こないだ来たのと同じ喫茶店。
そこについた時は二人とも息がきれ、椅子になだれ込むように腰かけると、ハアハアと呼吸を整えた。
「今日は・・・なにに・・・する?ココは・・・アイスクリームも・・・うまいんだ・・・」
「ぼ・・・僕・・・プリン・・・」
「おーいいねー、プリンも・・・うまいんだ・・・
すいません~~ここプリンにアイスクリームのったやつ2つ・・・」
男は注文したあと、店主がテーブルに置いたばかりのコップの水を一杯、一気に飲み、中の氷もガブガブ食べた後、大きく息をついた。
「君、なかなかしつこいね。」
「やっぱり~~僕をまこうとしてましたね。」
「うん、してた。」
「やっぱり・・・今日コソはそのスーツの事、教えてもらいますよ。」
「今日のコレもいいだろ~」
その男は今日もスーツを見せびらかすように、テーブルの上に寄りかかってじっくりと見せた。
「かっこいいっす。そのシャツとタイのカラーが絶妙っす。」
「だろう。なかなかわかるね。エイゴくんっつたか。」
「はい。」
「特別に僕の名前を教えよう。俺の名前はマーブル・マービー・ケルン。長いからロビンでいいぞ。」
「あの~~名前にロビンの要素がまるでないんですが、そのニックネームはどうやってつきましたか?」
「俺がそう呼んで欲しいから。みんな、なかなかそう呼んでくれなくてね。一人くらいは呼んでくれると嬉しいなーと思って。」
その人・・・通称”ロビン“は机にプリンが置かれると同時に、スプーンで丸ごとすくいあげ、耳まで避けたかと思うほど大きな口を開けぽこんとほおりこんだ。
「この間の俺の質問に答えてよ。」
ロビンの口から溢れだしそうで溢れないプリンに気を取られ、質問どころではなくなった。
「ねえ、」と数回言われて初めて「なんでしたっけ?」と答えた。
「いくつ?」
「23です。」
「あ、意外にいい感じの歳じゃん。見た目、若く見えるね。まだ高校生かと思ったよ。」
その人"ロビン“は内ポケットから、手帳を取り出した。
「よく言われます。童顔なんですよね。」
「身長は?」
「172ですけど。」
手帳に【A5 23 172 童顔 顔○ 】と書いた。
「A5って文房具みたいじゃないですか。」
「見るなよ。俺は漢字が苦手なんだ。呼び方は同じなんだからいいだろ。172か・・・惜しいなー175ほしかったなーまあいい、妥協するか。」
「なんスカ妥協って。」
「このスーツさ背が高くないとピエロみたいになっちゃうんだよ。前の奴はさ、身長は高かったんだけど、しばらくしたらドンドン太ってきてさ、お祭りの水風船みたいなんだ。シャツのボタンもかえなくなっちゃって・・・派手なスーツは紙一重だからね。」
「前の奴って・・・」
「前、俺と組んでた奴。バディ??」
「バディがいたんですか?」
「いたけど、2日しか持たなかった。その二日でびっくりするほど太ったんだ。」
「バディを組むとその派手なスーツ着られるのですか。」
「俺と組むならこれだよ。着たいだろう。」
「着たいですけど。」
「けどなんだよ。」
「いったい何やるんですか?」
「それは・・・その前におまえ・・・エイゴは今、なにやってるの?」
「何ってのは、仕事とか?ですか・・・」
「そう、日々の暮らしは?」
「何にもっす。」
「何にも?」
「高校卒業して、会社入ったんすけど、1年くらいで倒産して。
次見つけて働いたんすけど、又、会社潰れちゃって・・・給料もらえなかったから、何とか生活費稼ぐタメにもうバイトでいいやと思って、頑張るんすけど、なんかすぐクビになるんですよ。なんでですかねェ・・・。頑張ったんすけど・・・」
「・・・・・そう・・・・」
「それで何度も何度も、同じようなこと続いて、もいいやどうにでもなれって思ったら。あなた“ロビン”・・・さん・・・に出会って、スーツかっけー~って。」
「スーツかっけー~~って、お金なければ買えないでしょ。」
「そうですけど、わかってますけど、なんつーか、人生の最後くらいはいい服着て・・・つーか・・・」
「死にたい・・・か?」
「それっす!!」
「ふーん。おまえに俺が見えた訳がわかってきたわ。」
「なんすか?」
「まだ教えない。」
「けち。」
ロビンはその言葉に睨み返し舌打した。
「ま、まずは言葉使い直そうか。バディ組むにしても、俺センパイだし。」
「はあ・・・・?」
「上手に喋れるようになったらまた俺を見つけてよ。」
「僕、次ないかもしんないっす。」
「あるよ。キット。おまえは簡単には死なない。プリン、ちゃんと残さず食べて帰れよ。じゃあな。」
ロビンは顔だけを向けてそう言い残し、手を軽く挙げると店を出て行った。
食べますよ・・・このプリンが今日はじめての食事だ。
その日は茶色にピンクのストライプのスーツにコバルトブルーのシャツ。レモン色の蝶ネクタイが、美しく映えてうらやましい限りだった。
すぐにでも声をかけたかったが、女の人と歩いていたから、物陰に隠れながらチョット後ろをついて行った。
僕はそのスーツに釘付けで、瞬きもせず追い、ようやく、彼が1人になったところですかさず走って横に並んだ。
「こんにちわ。また見つけちゃいました。」
男は驚きを隠せず3、4歩よろめいて、「あ、あ、君か。」と言った。
そんなに驚いたのは、たぶん女の人と今別れたばかりだからだろうと勝手に思い込んだ。
「ここじゃなんだから、アイスクリームでも食べながらゆっくり話そう。」
スーツの男は又、スタスタと先を歩いて路地の奥に入って行った。
今日は一段と足が速く、置いて行かれないように必死で跡を追った。
路地を曲がって、曲がって、曲がった先の結局こないだ来たのと同じ喫茶店。
そこについた時は二人とも息がきれ、椅子になだれ込むように腰かけると、ハアハアと呼吸を整えた。
「今日は・・・なにに・・・する?ココは・・・アイスクリームも・・・うまいんだ・・・」
「ぼ・・・僕・・・プリン・・・」
「おーいいねー、プリンも・・・うまいんだ・・・
すいません~~ここプリンにアイスクリームのったやつ2つ・・・」
男は注文したあと、店主がテーブルに置いたばかりのコップの水を一杯、一気に飲み、中の氷もガブガブ食べた後、大きく息をついた。
「君、なかなかしつこいね。」
「やっぱり~~僕をまこうとしてましたね。」
「うん、してた。」
「やっぱり・・・今日コソはそのスーツの事、教えてもらいますよ。」
「今日のコレもいいだろ~」
その男は今日もスーツを見せびらかすように、テーブルの上に寄りかかってじっくりと見せた。
「かっこいいっす。そのシャツとタイのカラーが絶妙っす。」
「だろう。なかなかわかるね。エイゴくんっつたか。」
「はい。」
「特別に僕の名前を教えよう。俺の名前はマーブル・マービー・ケルン。長いからロビンでいいぞ。」
「あの~~名前にロビンの要素がまるでないんですが、そのニックネームはどうやってつきましたか?」
「俺がそう呼んで欲しいから。みんな、なかなかそう呼んでくれなくてね。一人くらいは呼んでくれると嬉しいなーと思って。」
その人・・・通称”ロビン“は机にプリンが置かれると同時に、スプーンで丸ごとすくいあげ、耳まで避けたかと思うほど大きな口を開けぽこんとほおりこんだ。
「この間の俺の質問に答えてよ。」
ロビンの口から溢れだしそうで溢れないプリンに気を取られ、質問どころではなくなった。
「ねえ、」と数回言われて初めて「なんでしたっけ?」と答えた。
「いくつ?」
「23です。」
「あ、意外にいい感じの歳じゃん。見た目、若く見えるね。まだ高校生かと思ったよ。」
その人"ロビン“は内ポケットから、手帳を取り出した。
「よく言われます。童顔なんですよね。」
「身長は?」
「172ですけど。」
手帳に【A5 23 172 童顔 顔○ 】と書いた。
「A5って文房具みたいじゃないですか。」
「見るなよ。俺は漢字が苦手なんだ。呼び方は同じなんだからいいだろ。172か・・・惜しいなー175ほしかったなーまあいい、妥協するか。」
「なんスカ妥協って。」
「このスーツさ背が高くないとピエロみたいになっちゃうんだよ。前の奴はさ、身長は高かったんだけど、しばらくしたらドンドン太ってきてさ、お祭りの水風船みたいなんだ。シャツのボタンもかえなくなっちゃって・・・派手なスーツは紙一重だからね。」
「前の奴って・・・」
「前、俺と組んでた奴。バディ??」
「バディがいたんですか?」
「いたけど、2日しか持たなかった。その二日でびっくりするほど太ったんだ。」
「バディを組むとその派手なスーツ着られるのですか。」
「俺と組むならこれだよ。着たいだろう。」
「着たいですけど。」
「けどなんだよ。」
「いったい何やるんですか?」
「それは・・・その前におまえ・・・エイゴは今、なにやってるの?」
「何ってのは、仕事とか?ですか・・・」
「そう、日々の暮らしは?」
「何にもっす。」
「何にも?」
「高校卒業して、会社入ったんすけど、1年くらいで倒産して。
次見つけて働いたんすけど、又、会社潰れちゃって・・・給料もらえなかったから、何とか生活費稼ぐタメにもうバイトでいいやと思って、頑張るんすけど、なんかすぐクビになるんですよ。なんでですかねェ・・・。頑張ったんすけど・・・」
「・・・・・そう・・・・」
「それで何度も何度も、同じようなこと続いて、もいいやどうにでもなれって思ったら。あなた“ロビン”・・・さん・・・に出会って、スーツかっけー~って。」
「スーツかっけー~~って、お金なければ買えないでしょ。」
「そうですけど、わかってますけど、なんつーか、人生の最後くらいはいい服着て・・・つーか・・・」
「死にたい・・・か?」
「それっす!!」
「ふーん。おまえに俺が見えた訳がわかってきたわ。」
「なんすか?」
「まだ教えない。」
「けち。」
ロビンはその言葉に睨み返し舌打した。
「ま、まずは言葉使い直そうか。バディ組むにしても、俺センパイだし。」
「はあ・・・・?」
「上手に喋れるようになったらまた俺を見つけてよ。」
「僕、次ないかもしんないっす。」
「あるよ。キット。おまえは簡単には死なない。プリン、ちゃんと残さず食べて帰れよ。じゃあな。」
ロビンは顔だけを向けてそう言い残し、手を軽く挙げると店を出て行った。
食べますよ・・・このプリンが今日はじめての食事だ。
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