お気に入りの悪魔

富井

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小さくてかわいいやつに会う

一、

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山田は少し具合が悪そうだった。
「効果が出るのが早すぎるな・・・」
ロビンは手帳を見直して言った。家の中へ入り少し心配そうに顔を覗き込んだり、額に手を当てたりした。

「厄年か・・・今日締めるのは少しにしよう。」

そう言ってハーモニカを引き出した。山田の頬が少し赤らんだが、すぐに咳き込みだした。

「やばいな。死なれると厄介だ。エーゴ、ここらへんを探して30cmくらいのかわいいのがいないか探してくれ。人形に化けててっていることが多いから棚の中とかも入念に探せ。」

何が何だかわからなかったがとにかく探した。
ソファーの隅っこ、下。カーテンの裏、本棚。カバンの中。

「ここにはいなさそうですね。」

「じやあ、二階を見てきてくれ。俺は一階のほかの部屋を見てくる。寝室を重点的にな。」

僕は階段を駆け上がって寝室へ入った。よその家の寝室に入るのはちょっと勇気がいる。悪いことをしているわけでもないのにドキドキした。
布団の中やベッドの下。マットレスの間。枕の中。
やっといた・・・鏡台の前に堂々と立っていた。僕は鷲掴みにしてロビンのところへ行った。

「こいつですか?」
「そうだ・・・やっぱりお前か。」

ロビンはそれを指先でつまむと自分の目線まで引き上げた。

「げっ、マーブル・マービー・ケルン。お前か!」

「やめてくれよ。よそいけよ。」

「わかった。わかっったから。離せ。」

「こいつは仲間ですか?」

「悪魔と一緒にするな。」

かわいい顔をした小さいのは、意外にガラが悪い。

「こいつは疫病神だ。こう見えて神様だ。こんなんでも。」

「こんなんでも、とか、言うな。こいつは?お前の弟子か?」

「そう、エーゴだ。」

「そうか頑張れよ。お前が担当の悪魔でこいつも命拾いしたな。山田康夫 41歳。前厄。クソ!」

そう言って疫病神は背景の中に溶けるように消えていった。山田の咳はとまった。

「これで心置きなく締め付けられる。」

ロビンはハーモニカの続きを引いた。山田は少しぼっとしていたが急に娘や息子に自分の子供の頃の話をしだした。娘は父親の話が少し迷惑そうに顔をそむけた。

いつもは口数の少ない普通の父親のようだったが、今は軽快に話をしていたが、子供たちは山田より一足先に家を出て行った。それを少し残念そうに見送ると、山田も会社へ出勤する時間になった。妻と一緒に山田を見送り、次の現場へと向かった。

「疫病神ってあんなに小さいんですね。」

「しかも可愛いだろ。だから拾ってくるんだよ、人間は。特に厄年の人間がいるうちには住み着くんだ。でも普通の悪魔はここまではしないよ。病気になったらなったで、死んだら、死んだで終わりだ。
でも僕は新しいスーツがほしいから、最後の日まできっちり縄を締めたいんだ。だから元気でいてもらわないと困る。」

「普通は何日くらい締めているんですか?」

「ん~。大人は長い人で3年。短い人は数週間の人もいる。でも人生の中で通算して何日って感じだから、子供の時長く絞められていた人は大人になってから短い時もあるし、寿命が長い人は細かいピッチで定期的に数ヶ月といった具合である人もいる。とにかく平等に決められているんだよ。時期も強さも。事務所から送られてくるファックス通りにやればいいんだ。細かいことまではわからない。説明を聞いたけど忘れちゃった。」



またひらりと飛んで、2件目はあの金持ちの金田の家だった。昨日と同じように松の枝に座って中を覗いた。

「いるいる。あのへんなの」
「本当だ。」

金田はあのへんな動物をおんぶしているような格好だった。

「なんか笑えるな。」

ロビンは松の枝に座ったままハーモニカを吹いた。


ここで奏でるいつもの曲、それにに合わせてカスタネットを叩くと、変な動物は僕らに向かって歯茎を見せた。

金田はそのへんな動物をおぶっているからだろうか、体がとても重そうで、立ち上がるとき杖をついていた。

縄が刺付きだからか、縄が締まると痛むのか腕をさすっていた。


「少し痛そうですね。」

「大丈夫だ。この男は体力がある。刺付きを使った分、早く縄を解く日がくるから、逆にいいだろ。」

帰り際、ロビンは落ちていた枝で変な動物をつついて喜んでいた。

僕はその変な動物の肉球の感触が大好きで、くるくると触った後、ぐっと押すと、歯茎を見せ、シャーっと吠えたので二人で走って逃げた。
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