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消えた悪魔の思い出
一、
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秋山は午後からも相変わらずビラを配っていた。
最近は、ちょっとしたこつでもつかんだのか、時々、貰ってくれる人もでてきた。
「じゃあ、いってくるからな。ここなら天使も来ないから大丈夫だ。絶対どこへも行くなよ。ここで待ってろよ。」
僕を広場の中央のベンチに座らせると、ロビンはスーっと真上に上がり南の方向へ一瞬で姿を消した。
そのあまりの速さに暫く見とれていたが、また秋山の姿に目を移した。
「エーゴじゃないか。今日は一人?」
バルビンバーがベンチの隣に座った。
「昨夜、天使に襲われちゃってね。」
「それは災難だったね~。よく生きていられたね。」
「ちようど、死神十八番が通りかかって・・・」
「運がいいよ。よかったね。」
「どうして死神が通りかかると助かるんだ。」
「神には誰もさからえないだろ。神の前で悪い事が出来ないのは人間も悪魔も、天使もいっしょさ。死神も神だからね。」
そうか。僕は運が良かったんだ・・・人間をやめてから運がよくなった事が少し複雑だった。
「あれ、そのステッキ。」
バルビンバーはロビンから借りたステッキに触ろうと手を伸ばした。
「ダメっす。コレ借りモノっス。とても大切なモノなんで。」
「マーブル・マービー・ケルンから借りたのか?」
「そうなんすけど・・・みんなこのステッキの事聞くんすよねぇ・・・」
「それは、そのステッキの持ち主がとっても素敵な人だったからだよ。悪魔なら誰でも知っている伝説の悪魔だよ。
背が高くて、凄く怖い顔をして、でもとても優しくて、みんなロビンのことが大好きだった。
僕もね、生まれたてのときは何もわからなくて何度か助けてもらったんだ。とても親切に教えてくれて、彼がいなかったらたぶん一人前なる前に消えていたよ。ここでは、彼のことを悪く言う人はいないと思うよ。
最後に会ったときは、子供の新米悪魔を連れていたんだけど、その子供悪魔がまったくダメ悪魔で、いつも泣きべそばかりでロビンのコートにしがみつくように握って・・・」
「え?・・・その悪魔、 ロビンって言うのですか?」
「そうだよ。ロビン・マービー・ケルン。あ、ごめん時間だ・・・次、行かなきゃ。ただでさえのろいのに、縄にしてからさらに時間かかって、もっと話しをしていたいけどもう行くよ。じゃあな。」
「その人の事・・・誰に聞いたら・・・」
「誰でも知っているだろうけど、一番はグリーンかマーブルだなぁ・・・二人共、話したがらないだろうけどね。」
もっと、もっとその人のことが知りたくなった。ロビンにはさっきも誤魔化されて、聞いたとしても話してもらえそうにない。
「やあ エーゴ もういいのか?」
ちょうどそこに死神十八番が通りかかった。
「昨日はありがとうございました。」
「助かってよかったよ。あのままだったら、あと5分くらいで食べられていたね。でも君はまだ半分人間だから・・・なぶり殺しまでかな・・・・」
綺麗な顔にヤサシイ笑みを浮かべてあっさりと、そうわれるとぞっとする。これで2度死にかけて助けられた。本当に今こうして息をしていられることに感謝だ。
「そうだ、死神さんはこのステッキを事知っていますか?」
「ああ 懐かしいな・・・これはロビンのステッキだね。あの人はとても優しい悪魔だった。楽器を弾くのがうまくてね。チェロ、バイオリン、サックスなんでもうまかった。でも僕が一番好きだったのはハーモニカ。彼はね自分の担当している人間が死ぬと、夜、どこかのビルの屋上でハーモニカを吹くんだ。
彼が人間だった時に大好きだった曲だと言っていたかな ”愛の賛歌”・・・なぜ弾くと思う?」
「亡くなった人を送るためですか?」
「ううん・・・残された家族や友人のためにだよ。
亡くなった人の思い出だけに囚われて生きるのではなく、ひとつ前に踏み出せるために・・・って・・・・優しい人だった。あの曲は僕もとても好きだった。美しいメロディだったな・・・」
「ロビンは・・・死んだのですか?」
「うん。正確には消えた。悪魔は死ぬと言う終わりはないんだ。消えるんだよ。」
「足が悪かったって・・・」
「天使と戦ったらしいね。その時足を取られたって。」
「それで・・・?」
「ごめん、足のことはよく分からないんだ。別の悪魔に聞いて・・・僕はそろそろ呼ばれる時間だ・・・」
死神十八番は消えて行った。もっとちゃんと知りたいと思ったが、それからそこを通る人は少なくなった。
たまに通っても、悪魔なのか人なのか、見分けることもできなかった。それでも、相変わらず秋山はビラを配っていた。ここを通る子供たちも秋山に挨拶するくらい、それほど長く真面目に、彼はここでビラを配っていた。
「ちゃんと待っていたな。」
ロビンが帰ってきた。とても急いでいたのかスーツがよれよれになっていた。
秋山の様子を見て秋山にも優しい曲を奏でると、
「あのやる気のない喫茶店に寄ったら少し早いけど帰ろう。」
今日のロビンは奏でる曲も話し声もいつもよりいっそう優しかった。
喫茶店の夫婦も相変わらずの様子で並んでぼんやりと外を眺めていた。
この夫婦もあと数日で縄がはずれるらしいが、この調子だと悪魔が、いなくなったあともパッとした人生は送れないらしい。
ロビンはいつもより長めにハーモニカを吹いて縄を一層締めた。
ロビンはこの夫婦に「気づけよ」という気持ちで縄を締めたのだと思うが、夫婦は相変わらずぼんやりと外を眺めていた。
最近は、ちょっとしたこつでもつかんだのか、時々、貰ってくれる人もでてきた。
「じゃあ、いってくるからな。ここなら天使も来ないから大丈夫だ。絶対どこへも行くなよ。ここで待ってろよ。」
僕を広場の中央のベンチに座らせると、ロビンはスーっと真上に上がり南の方向へ一瞬で姿を消した。
そのあまりの速さに暫く見とれていたが、また秋山の姿に目を移した。
「エーゴじゃないか。今日は一人?」
バルビンバーがベンチの隣に座った。
「昨夜、天使に襲われちゃってね。」
「それは災難だったね~。よく生きていられたね。」
「ちようど、死神十八番が通りかかって・・・」
「運がいいよ。よかったね。」
「どうして死神が通りかかると助かるんだ。」
「神には誰もさからえないだろ。神の前で悪い事が出来ないのは人間も悪魔も、天使もいっしょさ。死神も神だからね。」
そうか。僕は運が良かったんだ・・・人間をやめてから運がよくなった事が少し複雑だった。
「あれ、そのステッキ。」
バルビンバーはロビンから借りたステッキに触ろうと手を伸ばした。
「ダメっす。コレ借りモノっス。とても大切なモノなんで。」
「マーブル・マービー・ケルンから借りたのか?」
「そうなんすけど・・・みんなこのステッキの事聞くんすよねぇ・・・」
「それは、そのステッキの持ち主がとっても素敵な人だったからだよ。悪魔なら誰でも知っている伝説の悪魔だよ。
背が高くて、凄く怖い顔をして、でもとても優しくて、みんなロビンのことが大好きだった。
僕もね、生まれたてのときは何もわからなくて何度か助けてもらったんだ。とても親切に教えてくれて、彼がいなかったらたぶん一人前なる前に消えていたよ。ここでは、彼のことを悪く言う人はいないと思うよ。
最後に会ったときは、子供の新米悪魔を連れていたんだけど、その子供悪魔がまったくダメ悪魔で、いつも泣きべそばかりでロビンのコートにしがみつくように握って・・・」
「え?・・・その悪魔、 ロビンって言うのですか?」
「そうだよ。ロビン・マービー・ケルン。あ、ごめん時間だ・・・次、行かなきゃ。ただでさえのろいのに、縄にしてからさらに時間かかって、もっと話しをしていたいけどもう行くよ。じゃあな。」
「その人の事・・・誰に聞いたら・・・」
「誰でも知っているだろうけど、一番はグリーンかマーブルだなぁ・・・二人共、話したがらないだろうけどね。」
もっと、もっとその人のことが知りたくなった。ロビンにはさっきも誤魔化されて、聞いたとしても話してもらえそうにない。
「やあ エーゴ もういいのか?」
ちょうどそこに死神十八番が通りかかった。
「昨日はありがとうございました。」
「助かってよかったよ。あのままだったら、あと5分くらいで食べられていたね。でも君はまだ半分人間だから・・・なぶり殺しまでかな・・・・」
綺麗な顔にヤサシイ笑みを浮かべてあっさりと、そうわれるとぞっとする。これで2度死にかけて助けられた。本当に今こうして息をしていられることに感謝だ。
「そうだ、死神さんはこのステッキを事知っていますか?」
「ああ 懐かしいな・・・これはロビンのステッキだね。あの人はとても優しい悪魔だった。楽器を弾くのがうまくてね。チェロ、バイオリン、サックスなんでもうまかった。でも僕が一番好きだったのはハーモニカ。彼はね自分の担当している人間が死ぬと、夜、どこかのビルの屋上でハーモニカを吹くんだ。
彼が人間だった時に大好きだった曲だと言っていたかな ”愛の賛歌”・・・なぜ弾くと思う?」
「亡くなった人を送るためですか?」
「ううん・・・残された家族や友人のためにだよ。
亡くなった人の思い出だけに囚われて生きるのではなく、ひとつ前に踏み出せるために・・・って・・・・優しい人だった。あの曲は僕もとても好きだった。美しいメロディだったな・・・」
「ロビンは・・・死んだのですか?」
「うん。正確には消えた。悪魔は死ぬと言う終わりはないんだ。消えるんだよ。」
「足が悪かったって・・・」
「天使と戦ったらしいね。その時足を取られたって。」
「それで・・・?」
「ごめん、足のことはよく分からないんだ。別の悪魔に聞いて・・・僕はそろそろ呼ばれる時間だ・・・」
死神十八番は消えて行った。もっとちゃんと知りたいと思ったが、それからそこを通る人は少なくなった。
たまに通っても、悪魔なのか人なのか、見分けることもできなかった。それでも、相変わらず秋山はビラを配っていた。ここを通る子供たちも秋山に挨拶するくらい、それほど長く真面目に、彼はここでビラを配っていた。
「ちゃんと待っていたな。」
ロビンが帰ってきた。とても急いでいたのかスーツがよれよれになっていた。
秋山の様子を見て秋山にも優しい曲を奏でると、
「あのやる気のない喫茶店に寄ったら少し早いけど帰ろう。」
今日のロビンは奏でる曲も話し声もいつもよりいっそう優しかった。
喫茶店の夫婦も相変わらずの様子で並んでぼんやりと外を眺めていた。
この夫婦もあと数日で縄がはずれるらしいが、この調子だと悪魔が、いなくなったあともパッとした人生は送れないらしい。
ロビンはいつもより長めにハーモニカを吹いて縄を一層締めた。
ロビンはこの夫婦に「気づけよ」という気持ちで縄を締めたのだと思うが、夫婦は相変わらずぼんやりと外を眺めていた。
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