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やりきれないココロ
二、
しおりを挟む僕らはすぐには部屋に戻れなかった。
アパートのあるビルの屋上の手すりの上に二人並んで立ち、地上のあかりを見下ろして大きく息を吸った。
「俺もあんな感じだった。」
「え・・・?」
「犬のオリの中でそだった。何年も何年もオリの中にいれられていた。
言葉も話せない文字も読めない。自分がいくつかも知らない。真っ暗な押し入れの中の織にいた。
母親は俺をオリに押し込んで鍵をかけて出かけて、何日も、何日も帰ってこない。
ごはんも最後にいつ食べたのか忘れてしまうほどもらえなくて、お風呂も、布団で寝ることすらも知らないで育った。
そんなオリを隔ててあの悪魔と出会った。1年間俺のところに毎日きた。
そして、毎日ハーモニカを聞かせてくれた。最後の日、オリを開けてくれたんだ。
出ろ、そこから出てこいって、やり直せる、まだ間に合う、その声に俺はついて行った。そして悪魔としてもう一度生きる決意をしたよ。負けたくなかった。生きることに。
信じられるか。
オリに入れたのが母親でオリから出してくれたのが、悪魔だなんて。
生まれたときからオリだぜ、悪魔に取り憑かれていたのはたった1年間。
わかるかそれがどんなことか。
俺は頑張ったよ、がんばって一番最初のご褒美にこの大人の身体をもらった。生まれ代わったんだ。
何年かして母親に縄をかけたとき、今日のエーゴのようについ感情がはいって思いっきり締めてしまった。
そしたら2日で自殺だ。子どもは苦しめても自分が苦しむのは我慢できないんだ。
ドロドロになった母親のタマシイを袋に詰めて飛んだ、遠くへ。
泣いたのはあのときだけだ。でも悲しくて泣いたんじゃない。
本当に終われた喜びでだ。
あいつも行くところは違うけど、終われて喜んでいると信じているよ。」
ロビンは力強く両手を広げて天を仰いだ。
今、生きているのだと言わんばかりに。
そして、ハーモニカを吹いた。美しいメロディだった。
そのメロディがあまりにも美しすぎて、ロビンの心がまっすぐすぎて、胸のずっと奥のほうに強くひびいた。
その日の夜が遅く、季節はずれの雪になった。
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