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第23話 二人の王子
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あれは何時だっただろうか、絵本の中に出てくるお姫様を自分に照らせ合わせたのは。
いつ頃からだったのだろうか、お姫様を助けてくれる王子様に憧れ出したのは。
「そこまでにしてもらおうか」
目の前の光景に幼い頃の記憶が蘇る。
お姫様がピンチの時に颯爽と駆けつけてくれる白馬に乗ったの王子様。生まれた時から可愛がられて育った私が、絵本の王子様に憧れるのは仕方がなかったと今では思う。だから初めて本物の王子様に出会った時には心がトキめいた。
でも現実はそんなに甘くはなく、憧れた王子様に私は心を殺され、二度と恋などしないと誓ったのだ。
あの人に出会うまでは……
「だ、誰ですの!? 無礼でしょ、離し…な…さい…よ……」
エレオノーラが邪魔をした男性を睨めつけたかと思うと、顔を赤く染めながら声のトーンが下がっていく。
ん? なぜ彼女が照れた表情をしているの?
「大丈夫かリーゼ」
「あ、はい。ありがとうございますクロードさん」
颯爽と現れた王子様……じゃなかったクロードさんが、今まさに振り下ろされようとしていたエレオノーラの腕を掴み、私を助けてくれた。エレオノーラの方も何故か抵抗せず、クロードさんに腕を掴まれたまま動こうとしない。
壁ドンではないが、こんなカッコイイとこを見せられて恋に落ちない女性がどこにいる。
いや、自分でももう分かっている、私はクロードさんが好きだ。だけど……心の何処かで怯えている私も確かにいるのだ。
あっ……
「お嬢様!」
「リーゼ!」
「大丈夫よ、ごめんなさい」
自分でも分からなかったが、思っていた以上に気が張り詰めていたようだ。
膝の力が抜け崩れそうになった私を、いつの間にか近くまで来ていたティナとクロードさんに支えられたお陰で、人前で倒れるという失態を見せつけずに済んだが、成り行きとはいえガッツリと正面から抱き合う感じになってしまい、再び思考が停止してしまう。
店内からこういうシチュエーションが大好きなお嬢様方から、黄色い悲鳴に近い声援が聞こえてくるが、今の私にはそれすらも遠く感じてしまう。
「貴様、リーゼから離れろ!」
どれぐらいの間クロードさんと抱き合っていたのか分からないが、自分の名前を呼ばれた事でようやく我を取り戻し、徐々に今の状況が頭に入ってくる。
って、きゃぁーーー。私こんな大勢の人前で抱き合っちゃってるよー。
お互いようやく今の置かれた状況が分かり、頬を赤く染めながら何方ともなく顔を反らす。気づけばティナはいつの間にか離れており、近くで私たちの様子を暖かく見守っていた。
「くっ、俺のいう事が聞けないのか、リーゼから離れろと言ってるだろうが!」
いつまでもクロードさんと抱き合っているのがそんなに気に入らないのか、再び店内に響き渡る男性の声。
ここに来てようやく自力で立つ事が出来、クロードさんの拘束から解き放たれた。
「どけ! 貴様何者だ、俺の婚約者に手を出すとはいい度胸だな!」
強引に私とクロードさんの間に入り、罵声を放つのはウィリアム王子!?
えっ? なんでウィリアム様が怒っているの? それに今、俺の婚約者に手を出すなって、今更何を言ってるのよ。
「ウィリアム様、何をおっしゃっているんですか。リーゼはもう妃候補を辞退したんですよ? それなのに今更……」
「エレオノーラは黙っていろ! 俺はこの男に聞いているんだ」
「……」
あれ? 誰か今のこの状況を説明してください。
そもそもこれは私とエレオノーラの喧嘩だったはずだ。ウィリアム様がエレオノーラ側に立ち、それを止めたクロードさんに罵声を浴びせるのなら納得ができる。だけど、何故私側に立ち、不可抗力とはいえ抱き合ってしまったクロードさんを責める必要があるの? っていうかウィリアム様は全然関係なくね?
とにかく今は大事になる前に何とか誤解を解かないと、今度はクロードさんに迷惑をかけてしまう。あと断っておくが私とウィリアム様の婚約は、陛下承認の元で完全に破棄されており、この事は既に国民への通知も終わっている。
「失礼ですが、リーゼと王子の婚約は既に破棄されたと伺っております。それなのにまだ彼女を縛り付けようとするのですか?」
「なんだと! リーゼは未だ俺の婚約者だ、何も知らない部外者が出しゃばる問題ではないわ」
いやいや、何も分かっていないのはあなたの方ですよウィリアム様。この後の及んでまだ私が貴方の事を好きだとでも思っているのだろうか? 先に突き放したのはそちらだというのに。
エレオノーラの方を見れば、ウィリアム様に軽くあしらわれた事が気にいらなかったのか、不機嫌そうに二人の様子を伺っている。
「お止めくださいウィリアム様、クロードさんはただ倒れそうになった私を支えてくださっただけでございますよ? 感謝の言葉はあれ、非難されるような事は一切ございません。
それに私と王子との婚約は正当な手続きの上、完全に破棄されております。なのに今更婚約者などと言われても正直いって困ります」
「待てリーゼ、俺は婚約を破棄するとは言っていないぞ、お前だって俺を好きだと言っていただろう」
何を今更……この人はいったい何処まで私を侮辱すれば気が済むのだろう、はっきり言って今のウィリアム様には怒りしか湧き上がってこないと言うのに。
「残念ですが今の私はウィリアム様の事を愛しておりません、貴方にはアデリナ様という立派な婚約者がおられるではございませんか」
「嘘だ、以前言ったではないか、俺の事を愛していると」
あぁ、あの時か、一方的に婚約破棄を言いつけ、私が別れ際に放った言葉。『私は貴方の事を愛していたのに気持ちは通じていなかったのですね』
「勘違いしないでください、あれは突き放される以前の私の心、今の私は誰のもの……でもありません」
一瞬クロードさんの顔が浮かぶが、ここで彼の名前を出して巻き込むわけにはいかない。っていうかそんな度胸は私にはない。
「くっ」
「申し訳ございませんが今日はお引き取り頂けないでしょうか、こちらに非があるのなら真摯に受け止めますが、お二人がおっしゃっている事は余りにも道理に添いません。
それでもまだ言い足りないと言うのなら、正式にブラン家へ抗議状をお送りください」
アデリナ様程ではないが、ウィリアム様程度なら私でも言い負かせる自身はある。エレオノーラにしても肝心のウィリアム様がこんな状態では切り札にもならないだろうし、私との口論で挑発された挙句、手を上げようとした事は店内のお客様が見ているのだ。
二人とも変なところで人前で失態を晒すのだけは妙に嫌がる傾向があるから、彼女に貴族としてのプライドがあるのならこれ以上何も言ってこれないだろう。
取り敢えず今はこの場から立ち去りやすいよう誘導したし、逃げ道として抗議状というアイテムも提示した。もっとも、こんな大勢の証人がいるのだ、バカ正直に抗議状を出したとしてもブラン家は相手にしないし、笑い者にされるのは逆に向こうの方だろう。
これで何とか解決、っと思い動こうとした時。
ズキッ(痛っ)
足首に電気が走った様な痛みを感じ、その場で崩し倒れそうになった私を再びクロードさんが受け止めてくれる。
「大丈夫か? リーゼ」
「あ、はい。何度もすみません……痛っ」
姿勢を正し、自力で立とうとすると左の足首に痛みが走る。
立っていた時には分からなかったが、先ほどバランスを崩した時に足首を捻っていたのかもしれない。痛めていると自覚してしまえば左足に体重を掛けられず、立っていられる事が出来なくなった。
今はクロードさんに抱きついてるお陰で何とかバランスを保つ事が出来るが、一度離れようとすると再び倒れそうになってしまう。
「足を痛めているのか?」
「そうみたいです」
私の様子に気づき、クロードさんが優しく声を掛けてくれる。
周りから見れば、今の状態は私の方からクロードさんに抱きついていると見えるのではないだろうか?
「貴様、何度も言わせるな。リーゼから離れろ!」
「待ってください、足を痛めたみたいで一人で立てないんです」
ついつい流れで言い訳をしてしまったが、なんでウィリアム様が怒っているのか理解できない。
って言うかエレオノーラも見てないで止めなさいよ、仮にもあんたの恋人でしょうが。
「退け、俺がリーゼを支える」
そう言って強引に私をクロードさんから奪い取ろうとするが、クロードさんも私を奪われない様、片手でウィリアム様を引き離す。
あれ? なにこの状況、もしかして私今モテ期なの?
……はいはい、分かっています。ちょっと言ってみたかっただけですよ。
クロードさんはただ私をウィリアム様から守ろうとしてくれているだけで、そこに深い意味はないって事ぐらい。
でも少しぐらい夢を見させてくれてもいいじゃない、私だって絵本の中のお姫様に憧れていたんだから。
「お断りします、リーゼは僕が責任を持って運びますので、貴方はそちらのお嬢さんを連れて早々にお引き取りください」
「何だと! 貴様、俺が誰だか分かっているのか!!」
まずい、これじゃさっきと同じになってしまう。
私としてはウィリアム様に抱えられるのは断固として拒否したいし、このままクロードさんに抱き抱えられている方が余程……コホン、な、何でもないわよ。
「えぇ、存じております。貴方の方こそ僕の顔をお忘れですか? 先の誕生祭で一度ご挨拶をしたと思いますが」
「何?」
「はぁ、やはりお忘れでしたか。ならばもう一度名乗りましょう、僕の名はクロード・エルス・ラグナス……」
クロードさんが私を抱き抱えながら自らの名を名乗られる。
ラグナス? そう言えばクロードさんのフルネームを聞くのは始めてだ。だけどこの国にそんな領地名ってあったかしら? それにミドルネームがある事も珍しい。
そんなのがあるのは歴史が古い隣国のレガリア王家とラグナス王家ぐら…い…し……か……
「ラグナス王国の第二王子です」
……えぇぇぇーー!!
「な、貴様、何故隣国の王子が我が国にいる!」
「僕はラグナス王国の外交特使です。今回は物流や人員の流れを話し合うためにこの国を訪問しております」
「だったら何故この店にいる! お前とリーゼとは関係ないだろう!」
「そうですね、確かに王子のおっしゃる通りだ……」
っ! 何を言ってるんですかクロードさん、もしかして私に迷惑をかけない様にとでも思っているんですか?
知らなかったとは言え私が隣国の王子様と知り合いだと分かれば、何かと疑われるんじゃないかと、そう考えておられるんじゃないんですか?
……嫌だ、助けようとしてくださってるのは分かるが、せっかくこんなにも近づけたと言うのにまた突き放される。例え私を庇う為の嘘だったとしても、もう離れたくはない。だって私の心はもう……
「……だけど、いつまでも部外者でいるつもりは僕にはない」
えっ?
「貴様、何を言って……」
「リーゼ」
「あっ、はい」
「僕は……君の事が好きだ」
いつ頃からだったのだろうか、お姫様を助けてくれる王子様に憧れ出したのは。
「そこまでにしてもらおうか」
目の前の光景に幼い頃の記憶が蘇る。
お姫様がピンチの時に颯爽と駆けつけてくれる白馬に乗ったの王子様。生まれた時から可愛がられて育った私が、絵本の王子様に憧れるのは仕方がなかったと今では思う。だから初めて本物の王子様に出会った時には心がトキめいた。
でも現実はそんなに甘くはなく、憧れた王子様に私は心を殺され、二度と恋などしないと誓ったのだ。
あの人に出会うまでは……
「だ、誰ですの!? 無礼でしょ、離し…な…さい…よ……」
エレオノーラが邪魔をした男性を睨めつけたかと思うと、顔を赤く染めながら声のトーンが下がっていく。
ん? なぜ彼女が照れた表情をしているの?
「大丈夫かリーゼ」
「あ、はい。ありがとうございますクロードさん」
颯爽と現れた王子様……じゃなかったクロードさんが、今まさに振り下ろされようとしていたエレオノーラの腕を掴み、私を助けてくれた。エレオノーラの方も何故か抵抗せず、クロードさんに腕を掴まれたまま動こうとしない。
壁ドンではないが、こんなカッコイイとこを見せられて恋に落ちない女性がどこにいる。
いや、自分でももう分かっている、私はクロードさんが好きだ。だけど……心の何処かで怯えている私も確かにいるのだ。
あっ……
「お嬢様!」
「リーゼ!」
「大丈夫よ、ごめんなさい」
自分でも分からなかったが、思っていた以上に気が張り詰めていたようだ。
膝の力が抜け崩れそうになった私を、いつの間にか近くまで来ていたティナとクロードさんに支えられたお陰で、人前で倒れるという失態を見せつけずに済んだが、成り行きとはいえガッツリと正面から抱き合う感じになってしまい、再び思考が停止してしまう。
店内からこういうシチュエーションが大好きなお嬢様方から、黄色い悲鳴に近い声援が聞こえてくるが、今の私にはそれすらも遠く感じてしまう。
「貴様、リーゼから離れろ!」
どれぐらいの間クロードさんと抱き合っていたのか分からないが、自分の名前を呼ばれた事でようやく我を取り戻し、徐々に今の状況が頭に入ってくる。
って、きゃぁーーー。私こんな大勢の人前で抱き合っちゃってるよー。
お互いようやく今の置かれた状況が分かり、頬を赤く染めながら何方ともなく顔を反らす。気づけばティナはいつの間にか離れており、近くで私たちの様子を暖かく見守っていた。
「くっ、俺のいう事が聞けないのか、リーゼから離れろと言ってるだろうが!」
いつまでもクロードさんと抱き合っているのがそんなに気に入らないのか、再び店内に響き渡る男性の声。
ここに来てようやく自力で立つ事が出来、クロードさんの拘束から解き放たれた。
「どけ! 貴様何者だ、俺の婚約者に手を出すとはいい度胸だな!」
強引に私とクロードさんの間に入り、罵声を放つのはウィリアム王子!?
えっ? なんでウィリアム様が怒っているの? それに今、俺の婚約者に手を出すなって、今更何を言ってるのよ。
「ウィリアム様、何をおっしゃっているんですか。リーゼはもう妃候補を辞退したんですよ? それなのに今更……」
「エレオノーラは黙っていろ! 俺はこの男に聞いているんだ」
「……」
あれ? 誰か今のこの状況を説明してください。
そもそもこれは私とエレオノーラの喧嘩だったはずだ。ウィリアム様がエレオノーラ側に立ち、それを止めたクロードさんに罵声を浴びせるのなら納得ができる。だけど、何故私側に立ち、不可抗力とはいえ抱き合ってしまったクロードさんを責める必要があるの? っていうかウィリアム様は全然関係なくね?
とにかく今は大事になる前に何とか誤解を解かないと、今度はクロードさんに迷惑をかけてしまう。あと断っておくが私とウィリアム様の婚約は、陛下承認の元で完全に破棄されており、この事は既に国民への通知も終わっている。
「失礼ですが、リーゼと王子の婚約は既に破棄されたと伺っております。それなのにまだ彼女を縛り付けようとするのですか?」
「なんだと! リーゼは未だ俺の婚約者だ、何も知らない部外者が出しゃばる問題ではないわ」
いやいや、何も分かっていないのはあなたの方ですよウィリアム様。この後の及んでまだ私が貴方の事を好きだとでも思っているのだろうか? 先に突き放したのはそちらだというのに。
エレオノーラの方を見れば、ウィリアム様に軽くあしらわれた事が気にいらなかったのか、不機嫌そうに二人の様子を伺っている。
「お止めくださいウィリアム様、クロードさんはただ倒れそうになった私を支えてくださっただけでございますよ? 感謝の言葉はあれ、非難されるような事は一切ございません。
それに私と王子との婚約は正当な手続きの上、完全に破棄されております。なのに今更婚約者などと言われても正直いって困ります」
「待てリーゼ、俺は婚約を破棄するとは言っていないぞ、お前だって俺を好きだと言っていただろう」
何を今更……この人はいったい何処まで私を侮辱すれば気が済むのだろう、はっきり言って今のウィリアム様には怒りしか湧き上がってこないと言うのに。
「残念ですが今の私はウィリアム様の事を愛しておりません、貴方にはアデリナ様という立派な婚約者がおられるではございませんか」
「嘘だ、以前言ったではないか、俺の事を愛していると」
あぁ、あの時か、一方的に婚約破棄を言いつけ、私が別れ際に放った言葉。『私は貴方の事を愛していたのに気持ちは通じていなかったのですね』
「勘違いしないでください、あれは突き放される以前の私の心、今の私は誰のもの……でもありません」
一瞬クロードさんの顔が浮かぶが、ここで彼の名前を出して巻き込むわけにはいかない。っていうかそんな度胸は私にはない。
「くっ」
「申し訳ございませんが今日はお引き取り頂けないでしょうか、こちらに非があるのなら真摯に受け止めますが、お二人がおっしゃっている事は余りにも道理に添いません。
それでもまだ言い足りないと言うのなら、正式にブラン家へ抗議状をお送りください」
アデリナ様程ではないが、ウィリアム様程度なら私でも言い負かせる自身はある。エレオノーラにしても肝心のウィリアム様がこんな状態では切り札にもならないだろうし、私との口論で挑発された挙句、手を上げようとした事は店内のお客様が見ているのだ。
二人とも変なところで人前で失態を晒すのだけは妙に嫌がる傾向があるから、彼女に貴族としてのプライドがあるのならこれ以上何も言ってこれないだろう。
取り敢えず今はこの場から立ち去りやすいよう誘導したし、逃げ道として抗議状というアイテムも提示した。もっとも、こんな大勢の証人がいるのだ、バカ正直に抗議状を出したとしてもブラン家は相手にしないし、笑い者にされるのは逆に向こうの方だろう。
これで何とか解決、っと思い動こうとした時。
ズキッ(痛っ)
足首に電気が走った様な痛みを感じ、その場で崩し倒れそうになった私を再びクロードさんが受け止めてくれる。
「大丈夫か? リーゼ」
「あ、はい。何度もすみません……痛っ」
姿勢を正し、自力で立とうとすると左の足首に痛みが走る。
立っていた時には分からなかったが、先ほどバランスを崩した時に足首を捻っていたのかもしれない。痛めていると自覚してしまえば左足に体重を掛けられず、立っていられる事が出来なくなった。
今はクロードさんに抱きついてるお陰で何とかバランスを保つ事が出来るが、一度離れようとすると再び倒れそうになってしまう。
「足を痛めているのか?」
「そうみたいです」
私の様子に気づき、クロードさんが優しく声を掛けてくれる。
周りから見れば、今の状態は私の方からクロードさんに抱きついていると見えるのではないだろうか?
「貴様、何度も言わせるな。リーゼから離れろ!」
「待ってください、足を痛めたみたいで一人で立てないんです」
ついつい流れで言い訳をしてしまったが、なんでウィリアム様が怒っているのか理解できない。
って言うかエレオノーラも見てないで止めなさいよ、仮にもあんたの恋人でしょうが。
「退け、俺がリーゼを支える」
そう言って強引に私をクロードさんから奪い取ろうとするが、クロードさんも私を奪われない様、片手でウィリアム様を引き離す。
あれ? なにこの状況、もしかして私今モテ期なの?
……はいはい、分かっています。ちょっと言ってみたかっただけですよ。
クロードさんはただ私をウィリアム様から守ろうとしてくれているだけで、そこに深い意味はないって事ぐらい。
でも少しぐらい夢を見させてくれてもいいじゃない、私だって絵本の中のお姫様に憧れていたんだから。
「お断りします、リーゼは僕が責任を持って運びますので、貴方はそちらのお嬢さんを連れて早々にお引き取りください」
「何だと! 貴様、俺が誰だか分かっているのか!!」
まずい、これじゃさっきと同じになってしまう。
私としてはウィリアム様に抱えられるのは断固として拒否したいし、このままクロードさんに抱き抱えられている方が余程……コホン、な、何でもないわよ。
「えぇ、存じております。貴方の方こそ僕の顔をお忘れですか? 先の誕生祭で一度ご挨拶をしたと思いますが」
「何?」
「はぁ、やはりお忘れでしたか。ならばもう一度名乗りましょう、僕の名はクロード・エルス・ラグナス……」
クロードさんが私を抱き抱えながら自らの名を名乗られる。
ラグナス? そう言えばクロードさんのフルネームを聞くのは始めてだ。だけどこの国にそんな領地名ってあったかしら? それにミドルネームがある事も珍しい。
そんなのがあるのは歴史が古い隣国のレガリア王家とラグナス王家ぐら…い…し……か……
「ラグナス王国の第二王子です」
……えぇぇぇーー!!
「な、貴様、何故隣国の王子が我が国にいる!」
「僕はラグナス王国の外交特使です。今回は物流や人員の流れを話し合うためにこの国を訪問しております」
「だったら何故この店にいる! お前とリーゼとは関係ないだろう!」
「そうですね、確かに王子のおっしゃる通りだ……」
っ! 何を言ってるんですかクロードさん、もしかして私に迷惑をかけない様にとでも思っているんですか?
知らなかったとは言え私が隣国の王子様と知り合いだと分かれば、何かと疑われるんじゃないかと、そう考えておられるんじゃないんですか?
……嫌だ、助けようとしてくださってるのは分かるが、せっかくこんなにも近づけたと言うのにまた突き放される。例え私を庇う為の嘘だったとしても、もう離れたくはない。だって私の心はもう……
「……だけど、いつまでも部外者でいるつもりは僕にはない」
えっ?
「貴様、何を言って……」
「リーゼ」
「あっ、はい」
「僕は……君の事が好きだ」
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