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騒乱
第26話 嵐の前の静寂
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陛下がご崩御されたという話は翌日には国民へと知れ渡っており、国中が喪に伏して静まり返っている。
国内情勢が悪いといっても、それは長年の平和に対して政府が溜め込んできた負の部分が多い事は、今や国民も知るところである。そんな中でも陛下は権力という重圧を掛けてはいたが、少しでも国内を良くしようと努力されていた事は、国民も感じていたのではないだろうか。
今のところ大きな混乱は見せてはいないが、早すぎる陛下の死と、その後を継ぐ王子の存在に不安を隠せない者も多いと聞いている。
「お呼びでしょうかお父様」
陛下が亡くなってから一週間、発表が翌日になった事で服喪期間が明日までとなっている為、現在店の方で客足が少なく開店休業の状態となっている。
そんな中、別館でスタッフ達とオーダードレスの仕事を進めていると、お城から帰ってこられたお父様に書斎まで呼び出された。
「すまんな、仕事をしているというのに」
「いいえ、ここ一週間はオーダーの受注も止まっておりますし、お店の方も来店されるお客様も少ないですから、この期にスタッフ達には交代で休暇を与えて、私ものんびりとさせてもらっております」
お父様は私の答えに何故か満足そうに頷き、一息ついた後にゆっくりと話出される。
「……お前は今回陛下の件をどう考えている?」
ブランリーゼを立ち上げてから、お父様は何かと私の意見を求める事が多くなった。
「恐らくお父様と同じ事を考えております。今回行政府の対応は迅速且つ適切だったと思いますが、余りにも準備が早すぎます」
行政府にはお父様や公爵様などを含め、有力貴族の中でも特に力を持った者や、優秀な学歴を持った主要のメンバーで構成されている。その為誰か一人が良からぬ事を企てたからと言ってどうにかなるようなものではない。
だけど行政府の決定事項を実行する実務部ともなると話は変わってくる。
この部署は行政機関の中でも最も低い位置に存在しているので、上の命令には従わざるを得ず、事前になんらかの働きかけがあったとしても、本人達が口を割らない限りは真相は分からない。
「お前もそう思うか? 行政府としても翌日には告知をする事を早々に決め、7日間の服喪期間を発表したのだが、その日の内に王都全土に話が広まっておった」
この世界ではテレビや電話などといった物がないため、告知の方法は新聞記事か街の主要な場所に設けられている掲示板に張り出され、それを見た国民は人づてに徐々に広まっていくのが通常の流れ。地方によっては一週間遅れで告知が届くとかもザラにあるという。
あの日陛下が亡くなったと知らせを受け、その日の内にお父様達がお城へと駆けつけたのだが、既に日が落ちていたという事と、地方から出てくる者いるんだとかで、翌日の早朝より貴族達を集め話し合いが開かれたんだそうだ。
つまり何が言いたいのかというと、翌日の新聞記事には間に合わないという点と、印刷技術が発達しておらず、特殊なインクを使い版画の要領で一枚一枚擦っていく告知状は、用意するにもそれなりの時間を要してしまう。
確かに国王が崩御されるなど重大ニュースなので、職員達が頑張って仕事を早めたという事もあるだろうが、張り出す掲示板は一箇所だけではなく王都の至る場所に存在しており、如何に人数を用意したところで、入り組んだ王都中全てに張り出すまでには半日程度は掛かるのではないだろうか。
それなのに翌日の午後には既に張り出されていたという場所もあるらしく、どうしても時間の計算が合わない。まるで陛下が亡くなる事が分かっており、事前に何らかの用意をしていたのではないかと思えるぐらいに。
「何故発表を急がなければならなかったのかは分かりませんが、何か嫌な感じがします。もしかして……」
「分かっている、だがブラン家としては深入りするつもりはない」
お父様のおっしゃっている事はある意味正しい。怪しいという理由だけで深入りをして、何かあってからでは取り返しがつかない。
私とお父様の考えが同じならば、最も怪しいのはベルニア王妃とフェルナンド侯爵家なのだ。陛下と言う最終兵器を無くしてしまった今では、迂闊に手を出してブラン家に何かあってはどうしようもない。
とにかく今は傍観を決め込み、国が最悪の事態になった時でも、ブラン領だけはビクともしない領地作りを進める事の方が先決だろう。
アデリナ様が王妃になられたらもう少し何かが変わるかもしれないが、お父様は既にこの国を見限っている節があるので、私としては最悪独立を宣言するのではないかと考えている。
「お前には悪いが、クロード王子との婚姻はもう少し後になってしまうだろう」
「それは構いませんが、アデリナ様の方はどうなるのでしょう? 陛下が亡くなったとなればすぐにでもウィリアム様が即位なされるでしょうが、それを支えるべくある王妃様の存在が不在となってしまいます」
これが既に結婚されていれば何も問題ないのだが、アデリナ様とウィリアム様の関係は未だ婚約者のまま。だったらすぐにでも結婚すればいいじゃないかと思うかもしれないが、国を代表する陛下が亡くなった場合、必ずという訳ではないが王族は約一年の間婚姻を見合わせる風習がある。
恐らく貴族達の考えは、アデリナ様がウィリアム様をコントロールして、国を良い方向へと運んでいければと考えていたのではないだろうか。
「その点はウィスタリア公爵が中心となり王子を支えていくだろう、元々あの王子に期待している者など誰もおらんよ。
他国からは傀儡政権と捉えられるかもしれんが、あのバカ王子を表に出す訳にもいかんしな。はぁ……」
これは早速ウィリアム様に振り回されているのかもしれない。言葉は悪いが私も同じ意見なので、お父様や貴族方の心中を察してしまう。
「とにかくだ、今我らがするべき事はブラン領の基盤を万全の状態にする事だ。その為に今まで蓄えてきた資材や資金なのだからな」
「わかりました。それで私を呼ばれた本当の理由はなんでしょう?」
お父様がただ私の意見が聞きたかったという理由だけで呼ばれたとは思えない。次期王妃となられるアデリナ様の件でさえ、睨まれる事を恐れ中立の立場を取ってこられたのだ。陛下が亡くなられるという重大事件に首を突っ込まない事ぐらいは予想がついている。
お父様は口元を一瞬だけ緩ませ
「お前に頼みたい事がある」
「頼み、ですか? 私に出来る事なら何でも協力させてもらいますが……」
これまでお父様が私に何かを頼まれた事など一度もない。ブラン家には優秀な執事もいるし最強(私視点)とも言えるお母様もいる。それに今じゃお姉様と婚約者のレオンお義兄様までいるんだ、こんな中で私が役に立てる事などあるんだろうか?
「リーゼよ、お前に伯爵代理を貸し与える。ブラン領に戻り地盤を固めよ」
「私がですか? お義兄様やお姉様ではなく?」
「あぁ、此度のファッションブランドを立ち上げた事もそうだが、スタッフを気遣う姿勢は評価に価する。
今回予想外に早く陛下が亡くなってしまった事で、急ぎ領地の基盤を固めねばならなくなったが、私は王都から離れる事が出来ないからな」
「ですが、私なんかに領地を運営していく事なんて出来るのでしょうか?」
伯爵代理も驚いたが、そこまで私を買ってくださっているとは思ってもいなかった。
でも店の経営と領地運営って全く違うし、レオンお義兄様のように何かを教わった事もなければ経験もない、そもそも何をしていいのかすら分からないのだ。
そんな状態の私にお父様は一体何を期待しているというのだろう?
「心配しなくても向こうにはハンスがおるから、実務面は任せていても何も問題はない。お前は自分が思うような領地へと導いて行けばいいだけだ」
正直お父様の真意はわからないが、急ぎ領地の基盤を固める事に関しては私も同意見。先ほどは急だったのでついつい否定的な思考が過ぎったが、よくよく考えてみれば立場が逆なら同じ事を考えていたかもしれない。
お義兄様はまだブラン家の人間ではないため領地を任す事は出来ず、お姉様は私と同じくお父様から何も教わっていない。お母様に至ってはベルニア王妃への牽制の意味を込めて王都に残ってもらっていた方がいいだろう。
私としても今後店を経営していくにあたり、ブラン領の生産ラインをもっと充実させたいと思っていた時だし、オーダードレスの受注もアプローチブックとオーダーシートさえしっかりしていれば、別に王都に居続ける意味合いは薄いとも言える。
それに私は一度ベルニア王妃からとんでもない事を言われており、あの時止めてくださった陛下はもうこの世にはおられない。もし再びウィリアム様が……いや、先日店に押しかけた事からエレオノーラが嫌がらせをしようとして、またバカな事を言い出さないとも限らないのだ。
……もしかしてその辺りも考えて、お父様は私を王都から放そうとされているんじゃないだろうか。
「分かりました。何処までご希望に添えるか分かりませんが、精一杯領地の為に尽くしてまいります」
「うむ、それと念のためにレガリアへも親書を送るつもりでいるから、何かあれば彼の国を頼るがいい」
「レガリアに、ですか? それはどういった状況を指すのでしょうか?」
ブラン領はレガリア王国の国境沿いに面している関係で、災害などあった場合お互い支援し続けてきた歴史がある。
だけど、これらは自主的に声を上げ率先的に支援していたのであって、今更わざわざ親書をおくってまで確かめ合うことではない。するとお父様が言う『念のため』というのはどういった事態を想定しているのだろう、まさかブラン領が国に奪われそうになるとでも考えておられるんじゃ……。
「あくまでも念のためにだ。そんな深い意味はない」
「分かりました、何かあれば頼るようにします」
いまいち腑に落ちないが、領地運営に素人なので保険程度にと考えればいいのかもしれない。
私はお父様の意図を汲み取れないまま素直に従う事にした。
そして私がブラン領へと旅出した日、お城では人知れず人事の移動が行われる事となる。
国内情勢が悪いといっても、それは長年の平和に対して政府が溜め込んできた負の部分が多い事は、今や国民も知るところである。そんな中でも陛下は権力という重圧を掛けてはいたが、少しでも国内を良くしようと努力されていた事は、国民も感じていたのではないだろうか。
今のところ大きな混乱は見せてはいないが、早すぎる陛下の死と、その後を継ぐ王子の存在に不安を隠せない者も多いと聞いている。
「お呼びでしょうかお父様」
陛下が亡くなってから一週間、発表が翌日になった事で服喪期間が明日までとなっている為、現在店の方で客足が少なく開店休業の状態となっている。
そんな中、別館でスタッフ達とオーダードレスの仕事を進めていると、お城から帰ってこられたお父様に書斎まで呼び出された。
「すまんな、仕事をしているというのに」
「いいえ、ここ一週間はオーダーの受注も止まっておりますし、お店の方も来店されるお客様も少ないですから、この期にスタッフ達には交代で休暇を与えて、私ものんびりとさせてもらっております」
お父様は私の答えに何故か満足そうに頷き、一息ついた後にゆっくりと話出される。
「……お前は今回陛下の件をどう考えている?」
ブランリーゼを立ち上げてから、お父様は何かと私の意見を求める事が多くなった。
「恐らくお父様と同じ事を考えております。今回行政府の対応は迅速且つ適切だったと思いますが、余りにも準備が早すぎます」
行政府にはお父様や公爵様などを含め、有力貴族の中でも特に力を持った者や、優秀な学歴を持った主要のメンバーで構成されている。その為誰か一人が良からぬ事を企てたからと言ってどうにかなるようなものではない。
だけど行政府の決定事項を実行する実務部ともなると話は変わってくる。
この部署は行政機関の中でも最も低い位置に存在しているので、上の命令には従わざるを得ず、事前になんらかの働きかけがあったとしても、本人達が口を割らない限りは真相は分からない。
「お前もそう思うか? 行政府としても翌日には告知をする事を早々に決め、7日間の服喪期間を発表したのだが、その日の内に王都全土に話が広まっておった」
この世界ではテレビや電話などといった物がないため、告知の方法は新聞記事か街の主要な場所に設けられている掲示板に張り出され、それを見た国民は人づてに徐々に広まっていくのが通常の流れ。地方によっては一週間遅れで告知が届くとかもザラにあるという。
あの日陛下が亡くなったと知らせを受け、その日の内にお父様達がお城へと駆けつけたのだが、既に日が落ちていたという事と、地方から出てくる者いるんだとかで、翌日の早朝より貴族達を集め話し合いが開かれたんだそうだ。
つまり何が言いたいのかというと、翌日の新聞記事には間に合わないという点と、印刷技術が発達しておらず、特殊なインクを使い版画の要領で一枚一枚擦っていく告知状は、用意するにもそれなりの時間を要してしまう。
確かに国王が崩御されるなど重大ニュースなので、職員達が頑張って仕事を早めたという事もあるだろうが、張り出す掲示板は一箇所だけではなく王都の至る場所に存在しており、如何に人数を用意したところで、入り組んだ王都中全てに張り出すまでには半日程度は掛かるのではないだろうか。
それなのに翌日の午後には既に張り出されていたという場所もあるらしく、どうしても時間の計算が合わない。まるで陛下が亡くなる事が分かっており、事前に何らかの用意をしていたのではないかと思えるぐらいに。
「何故発表を急がなければならなかったのかは分かりませんが、何か嫌な感じがします。もしかして……」
「分かっている、だがブラン家としては深入りするつもりはない」
お父様のおっしゃっている事はある意味正しい。怪しいという理由だけで深入りをして、何かあってからでは取り返しがつかない。
私とお父様の考えが同じならば、最も怪しいのはベルニア王妃とフェルナンド侯爵家なのだ。陛下と言う最終兵器を無くしてしまった今では、迂闊に手を出してブラン家に何かあってはどうしようもない。
とにかく今は傍観を決め込み、国が最悪の事態になった時でも、ブラン領だけはビクともしない領地作りを進める事の方が先決だろう。
アデリナ様が王妃になられたらもう少し何かが変わるかもしれないが、お父様は既にこの国を見限っている節があるので、私としては最悪独立を宣言するのではないかと考えている。
「お前には悪いが、クロード王子との婚姻はもう少し後になってしまうだろう」
「それは構いませんが、アデリナ様の方はどうなるのでしょう? 陛下が亡くなったとなればすぐにでもウィリアム様が即位なされるでしょうが、それを支えるべくある王妃様の存在が不在となってしまいます」
これが既に結婚されていれば何も問題ないのだが、アデリナ様とウィリアム様の関係は未だ婚約者のまま。だったらすぐにでも結婚すればいいじゃないかと思うかもしれないが、国を代表する陛下が亡くなった場合、必ずという訳ではないが王族は約一年の間婚姻を見合わせる風習がある。
恐らく貴族達の考えは、アデリナ様がウィリアム様をコントロールして、国を良い方向へと運んでいければと考えていたのではないだろうか。
「その点はウィスタリア公爵が中心となり王子を支えていくだろう、元々あの王子に期待している者など誰もおらんよ。
他国からは傀儡政権と捉えられるかもしれんが、あのバカ王子を表に出す訳にもいかんしな。はぁ……」
これは早速ウィリアム様に振り回されているのかもしれない。言葉は悪いが私も同じ意見なので、お父様や貴族方の心中を察してしまう。
「とにかくだ、今我らがするべき事はブラン領の基盤を万全の状態にする事だ。その為に今まで蓄えてきた資材や資金なのだからな」
「わかりました。それで私を呼ばれた本当の理由はなんでしょう?」
お父様がただ私の意見が聞きたかったという理由だけで呼ばれたとは思えない。次期王妃となられるアデリナ様の件でさえ、睨まれる事を恐れ中立の立場を取ってこられたのだ。陛下が亡くなられるという重大事件に首を突っ込まない事ぐらいは予想がついている。
お父様は口元を一瞬だけ緩ませ
「お前に頼みたい事がある」
「頼み、ですか? 私に出来る事なら何でも協力させてもらいますが……」
これまでお父様が私に何かを頼まれた事など一度もない。ブラン家には優秀な執事もいるし最強(私視点)とも言えるお母様もいる。それに今じゃお姉様と婚約者のレオンお義兄様までいるんだ、こんな中で私が役に立てる事などあるんだろうか?
「リーゼよ、お前に伯爵代理を貸し与える。ブラン領に戻り地盤を固めよ」
「私がですか? お義兄様やお姉様ではなく?」
「あぁ、此度のファッションブランドを立ち上げた事もそうだが、スタッフを気遣う姿勢は評価に価する。
今回予想外に早く陛下が亡くなってしまった事で、急ぎ領地の基盤を固めねばならなくなったが、私は王都から離れる事が出来ないからな」
「ですが、私なんかに領地を運営していく事なんて出来るのでしょうか?」
伯爵代理も驚いたが、そこまで私を買ってくださっているとは思ってもいなかった。
でも店の経営と領地運営って全く違うし、レオンお義兄様のように何かを教わった事もなければ経験もない、そもそも何をしていいのかすら分からないのだ。
そんな状態の私にお父様は一体何を期待しているというのだろう?
「心配しなくても向こうにはハンスがおるから、実務面は任せていても何も問題はない。お前は自分が思うような領地へと導いて行けばいいだけだ」
正直お父様の真意はわからないが、急ぎ領地の基盤を固める事に関しては私も同意見。先ほどは急だったのでついつい否定的な思考が過ぎったが、よくよく考えてみれば立場が逆なら同じ事を考えていたかもしれない。
お義兄様はまだブラン家の人間ではないため領地を任す事は出来ず、お姉様は私と同じくお父様から何も教わっていない。お母様に至ってはベルニア王妃への牽制の意味を込めて王都に残ってもらっていた方がいいだろう。
私としても今後店を経営していくにあたり、ブラン領の生産ラインをもっと充実させたいと思っていた時だし、オーダードレスの受注もアプローチブックとオーダーシートさえしっかりしていれば、別に王都に居続ける意味合いは薄いとも言える。
それに私は一度ベルニア王妃からとんでもない事を言われており、あの時止めてくださった陛下はもうこの世にはおられない。もし再びウィリアム様が……いや、先日店に押しかけた事からエレオノーラが嫌がらせをしようとして、またバカな事を言い出さないとも限らないのだ。
……もしかしてその辺りも考えて、お父様は私を王都から放そうとされているんじゃないだろうか。
「分かりました。何処までご希望に添えるか分かりませんが、精一杯領地の為に尽くしてまいります」
「うむ、それと念のためにレガリアへも親書を送るつもりでいるから、何かあれば彼の国を頼るがいい」
「レガリアに、ですか? それはどういった状況を指すのでしょうか?」
ブラン領はレガリア王国の国境沿いに面している関係で、災害などあった場合お互い支援し続けてきた歴史がある。
だけど、これらは自主的に声を上げ率先的に支援していたのであって、今更わざわざ親書をおくってまで確かめ合うことではない。するとお父様が言う『念のため』というのはどういった事態を想定しているのだろう、まさかブラン領が国に奪われそうになるとでも考えておられるんじゃ……。
「あくまでも念のためにだ。そんな深い意味はない」
「分かりました、何かあれば頼るようにします」
いまいち腑に落ちないが、領地運営に素人なので保険程度にと考えればいいのかもしれない。
私はお父様の意図を汲み取れないまま素直に従う事にした。
そして私がブラン領へと旅出した日、お城では人知れず人事の移動が行われる事となる。
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