101 / 105
終章 未来への道筋
第101話 それはないでしょ!
しおりを挟む
公王が息子であるレイヴン公子に刺されて6日が経過した。
「あのー、それで私はいつ帰れるのでしょうか?」
現在私はと言うと、これが何故かいまだトワイライト公国の公城で、囚われのお姫様状態。
公王様も無事に毒の治療から回復してきているというし、長年蟠りがあったヘンドリック様の関係と公妃様への誤解も解け、全てが良い方へと進んでいるとと聞いている。
後は継承者問題が残ってはいるものの、その辺りはそちらでゆっくりとご相談くださいという事で、全く関係のない私はお邪魔にならないようとっと帰ろうとしたのだが、何故が引き止められ現在に至るというわけ。
待遇はすっごくいいのよ。豪勢な食事にお昼寝付き。三人の精霊達にも可愛らしいお洋服をご用意してくださったし、ベットもふかふかで3分も経たずに爆睡できるほどの快適さ。ただ行動範囲が限られている関係、少々物足りなさと運動不足に悩まされがちだが、比較的自由に過ごさせていただいている、のだが……。
「恐らく今日明日辺りに動きがある筈だからもう暫く我慢して頂戴」
と公妃様のお言葉。
私はただ「はぁ、そうですか」としか答えられずにいた。
「それにしてもリネアお姉様、少し『ふっくら』されてきてませんか?」
「えっ!?」
何時ものお茶の席でセレスに指摘され、慌てて自分のお腹辺りを触れてみる。
「そうね、ここに来た時と比べると少しふっくらしてきたわね」
って、マジですか!?
でも思い返せばここに来てからロクに仕事はしていないし、毎日ドレスを着せられている関係、運動らしい運動すらしてこなかった。おまけにセレスと公妃様が、最近噂になっているアクア領のお料理に興味があるとかで、私監修のお料理が連日テーブルに並び続けている。
まさか公城にまでマヨネーズやドレッシングが使われていた事には驚かされたが。お陰で食が弾むこと弾むこと……。
確かにこれは油断していたわね。
「大丈夫ですよ。お兄様は見た目で判断されるような方ではありませんから」
「そうね。子供を作るならもう少しふっくらしている方がいいわね」
いやいや、二人揃ってなに意味不明な言葉をのたまっているのよ。そもそも何故そこにアレクが出てきて、尚且つ子供を作る話になるのかと、問いただしたい気持ちになってくる。
まぁ、変な反撃を受けそうだからやらないケドね。
「コホン。それは取り敢えず横へと置いておいて、本当のところはどうなんですか?」
このままズルズルとセレスと公妃様の話に乗ってしまうと、何時ものように適当にはぐらかされて、気づけばベットの中でスヤスヤでは、まるで何もすすまない。
私も良い加減ここでの生活も飽きて来たし、留守中の領地の事も気掛かりで仕方がない。
一応手紙で私の無事と、領地運営の事で細かく書いた指示書を、執事のハーベスト宛に送っているので、仕事が滞るなんて事態にはならないと思うが、それでも領主である私が居なければ領民たちも不安が広まることだろう。
できれば今すぐ帰りたいところなのだが、何故か適当に誤魔化されてはいつも帰してくれない。
「まぁそうね。そろそろ貴女にも説明しておいた方がいいわね」
「それじゃやっぱり何かあるんですね?」
「えぇ、実はね……」
公妃様は公王様が倒れられてからの経緯を全て私に説明してくださった。
内容はこうだ。
第一継承者でもあれレイヴン公子が、父である公王様を殺害しようとした事は誰の目で見ても明白。この事で現在レイヴン公子……、いや元公子は厳重の監視下の元で投獄中。例え公妃様であったとしても、そう簡単には会えない状態なのだとか。
そこまでは私も聞いていたのだが、話にはまだ続きがあり、公式の発表には公王様がレイヴン公子に刺され、現在猛毒に体を蝕まれて生死を彷徨っている状況なのだという。
「は? 公王様って助かったんですよね?」
「えぇ、無事よ。貴女だって昨日一緒に食事をしていたでしょ?」
ふと昨夜の出来事を思い出し、思わず頭を抱え込みそうな衝動に駆られてしまう。
実は公妃様からたまには一緒に食事をと昨夜のディナーを誘われ、何も考えずに案内されるままに食堂へと向かったのだが、何故かそこに居られたのは公妃様だけではなく、現在も療養中の公王様と、何故かまだ居られたオーシャン公国の王であるヘンドリック様の三人。思わずダッシュで逃げたくなる衝動を必死に抑えながら、泣く泣く非公式の会食会、なんて出来事があったのだ。
お元気そうな公王様のお姿を見れたのは良かったのだが、完全な場違いの席で久々に本気の緊張という体験をした事は、記憶として真新しい。
そんな公王様が何故、公式発表で生死の狭間を彷徨っている事になっているの?
「実はねあれからレイヴンを拷問……、コホン、何故陛下を刺したのかと問いただしたの。すると妙な事を言い出してね」
公妃様の口から一瞬でた言葉を軽く受け流し、事の真相に耳を貸す。
たぶん私がおこなった拷問もどきを見て、ヨツムンガンドの出処を突き止めようとでもされたのだろう。
口では偉そうな態度をとる公子も、自分が取り調べを受けるような事態になるとは、考えていなかったことだろう。普通なら耐えられてしまう痛みや脅しなんかで、簡単に口を割ってしまう事が既に全員に知れ渡っている。
そして拷問……、いや、その取り調べでわかった事が。
『俺への断罪が下されるより前に公王の方が先に倒れたら、俺はそのまま次の王になれると言われたんだ。だから俺は……』
確かに王族たる公子に断罪が下せるのは、父親である公王様のみ。
平民は勿論、貴族が王族を裁ける訳がなく、母親である公妃様でも正当なトワイライトの血を引く公子は捌けない。
これは謀反だ策謀だと、そういった対策から受け継がれてきた法政らしいが、実際公子に問題ありとなれば、公王の指示により第二公子が継いだり、別の家系から選ばれたりもする。
そして継承問題が確定しない間に公王が亡くなれば、第一継承者でもあるの長男のレイヴン公子が選ばれる事だろう。
「でもそれって私への口封じが上手くいけばの話ですよね? あの時点では私への暴行未遂だけだった訳だし、事件自体を無かったものとすればそんな可能性も」
「えぇ、あの時点であの子が次の王になれる可能性はほぼゼロよ。それこそ反旗を翻し返して力づくで奪うか、家臣の半数以上の指示と同意がなければ不可能でしょうね」
聞けばレイヴン元公子は日頃から問題を起こしていたようだし、家臣の大半は実績を積み上げて来たアレクを次の王に、という声が上がっていたのだという。
そもそもあのバカ公子に人の心を動かせるようなカリスマ性は皆無だろう。
「わからない事が多いですね。今の話だって、自分への断罪が下される前に公王様を殺したいのなら、ヨツムンガンドなんて毒を使わずに、即効性のある毒を使った方が効果的ですよね?」
ヨツムンガンド事態珍しい毒だという話だし、死に至るまでわざわざ7日かけるという理由もわからない。
もしその7日間で遺言状なり言伝なりで、次の王をアレクにと残せばそこまでの話になってしまう。
単に恨みから、死ぬまで苦しめ続けたいという理由もわからないでもないが、万が一解毒方法が見つかるかもしれないのだから、方法としては愚策中の愚策といっても間違いない。
「一応レイヴンの口から首班の名前はでているよ。ただ直接本人が接触したのではなく、食事を運ぶメイドを通しての犯行らしくてね。ワザと関係のない人間の名を出して、濡れ衣を着せようとしている、というのが私たちの考えなの」
なるほど、自分が助かるために父親を殺そうとする人間だ。そんな人間にわざわざ自分の名前は明かさないだろう。
しかもレイヴンが口を割る事を前提に考えれば、自分にとって都合の悪い人物を排除できれば、公王を殺し、罪をレイヴンとその人物に着せれば自身の手を汚さず一石三鳥にもなる。
「それでレイヴン元公子が口にしたという人物は誰なんですか? 裏を読んで実はその人が犯人、なんて事もあるかもしれませんし、逆に推測して、犯人を絞っていくって考え方も出来ると思うんですが」
正直トワイライトの家臣の名前をあげられても、私が分かるはずもないのだけれど、これをきっかけに何か進展出来ればとして尋ねたのだが、なぜか公妃様はニコニコしながら私の方を見つめてこられるのみ。
「取りあえず、レイヴンが口にした人物が無実なのは間違いないわ」
「そうなんですか? 公妃様がそんなに信頼できる人物なら、間違いないのでしょうね」
公妃様がそこまで信頼出来るというのなら、まず『実は犯人説』という可能性は潰れた事になる。するとやはり無実の人間に濡れ衣を着せて、本人は裏でのうのうと状況を見定めていると言ったろ事だろう。
それにしても公妃様がそこまで信頼している人物ってある意味すごいわね。
「リネアお姉様、状況を理解されておられますか?」
「えっ、どういう事?」
公費様と話をしていると、ため息まじりにセレスが割り込んでくる。
「お姉様ですよ」
「私? 私がどうしたの?」
「レイヴン義兄様が自分を唆したのはリネアお姉様だと言ったんです」
「……はい?」
私?
「…………って、えぇーーー!!!????」
ちょちょちょちょちょちょっとぉぉ!!! なんで私が犯人になっているのよぉぉーーー!!
「安心しなさい。さっきも言った通り私は勿論、公王も兄上も貴女が犯人だなんて誰も信じてはいないわ」
なんて事を……。私を信じてくださった事に感謝の言葉しかないが、なんで無関係であるはずの私がいきなり犯人扱いにされないといけないよ。
「これは私と陛下、そして兄上と話し合った結果で導いたのだけれど、レイヴンにヨツムンガンドを渡した黒幕は、陛下の排除ではなく別の目的があると考えているの」
「別の目的……」
「えぇ。リネア、もし貴女が今の状況から公国を奪おうとすれば、どうすればいいと思う?」
「トワイライト公国をですか? そうですね、今の状況からレイヴン元公子は除外するとして、残りで邪魔なのはアレクとセレスの二人。セレスはアレクの抱き合わせのような感じですので、アレクが失脚すれば一緒にって声も上がるでしょうね。後は陛下が毒で亡くなられば王族の血を引く別の家系から、助かったとしても療養の関係から公王の座は空席になります」
今更レイヴンを次の王にと考える者はほとんどいない。仮にいたとしても彼が公王と認められる事はほぼ不可能だろう。
すると後邪魔なのは第二公子であるアレクだが、もともと平民出身の母を持つアレクをよく思わない家臣も多いと聞く。
あとは適当な理由を見つけてアレクを失墜させたり、彼の短な人物が不祥事を起こせば、そこから失脚を図ろうとする者も出てくるかもしれない。
つまり現状アレクさえ居なければ、公王の座自体が空席となってしまうのだ。
……あれ?
「あ、あの……。もしかして私って……」
「ふふふ、貴女は現在アレクを失脚させるために利用されているの」
「……」
どうやら私は知らぬ間に、どっぷりと継承権問題に浸かってしまっていたようです。
「あのー、それで私はいつ帰れるのでしょうか?」
現在私はと言うと、これが何故かいまだトワイライト公国の公城で、囚われのお姫様状態。
公王様も無事に毒の治療から回復してきているというし、長年蟠りがあったヘンドリック様の関係と公妃様への誤解も解け、全てが良い方へと進んでいるとと聞いている。
後は継承者問題が残ってはいるものの、その辺りはそちらでゆっくりとご相談くださいという事で、全く関係のない私はお邪魔にならないようとっと帰ろうとしたのだが、何故が引き止められ現在に至るというわけ。
待遇はすっごくいいのよ。豪勢な食事にお昼寝付き。三人の精霊達にも可愛らしいお洋服をご用意してくださったし、ベットもふかふかで3分も経たずに爆睡できるほどの快適さ。ただ行動範囲が限られている関係、少々物足りなさと運動不足に悩まされがちだが、比較的自由に過ごさせていただいている、のだが……。
「恐らく今日明日辺りに動きがある筈だからもう暫く我慢して頂戴」
と公妃様のお言葉。
私はただ「はぁ、そうですか」としか答えられずにいた。
「それにしてもリネアお姉様、少し『ふっくら』されてきてませんか?」
「えっ!?」
何時ものお茶の席でセレスに指摘され、慌てて自分のお腹辺りを触れてみる。
「そうね、ここに来た時と比べると少しふっくらしてきたわね」
って、マジですか!?
でも思い返せばここに来てからロクに仕事はしていないし、毎日ドレスを着せられている関係、運動らしい運動すらしてこなかった。おまけにセレスと公妃様が、最近噂になっているアクア領のお料理に興味があるとかで、私監修のお料理が連日テーブルに並び続けている。
まさか公城にまでマヨネーズやドレッシングが使われていた事には驚かされたが。お陰で食が弾むこと弾むこと……。
確かにこれは油断していたわね。
「大丈夫ですよ。お兄様は見た目で判断されるような方ではありませんから」
「そうね。子供を作るならもう少しふっくらしている方がいいわね」
いやいや、二人揃ってなに意味不明な言葉をのたまっているのよ。そもそも何故そこにアレクが出てきて、尚且つ子供を作る話になるのかと、問いただしたい気持ちになってくる。
まぁ、変な反撃を受けそうだからやらないケドね。
「コホン。それは取り敢えず横へと置いておいて、本当のところはどうなんですか?」
このままズルズルとセレスと公妃様の話に乗ってしまうと、何時ものように適当にはぐらかされて、気づけばベットの中でスヤスヤでは、まるで何もすすまない。
私も良い加減ここでの生活も飽きて来たし、留守中の領地の事も気掛かりで仕方がない。
一応手紙で私の無事と、領地運営の事で細かく書いた指示書を、執事のハーベスト宛に送っているので、仕事が滞るなんて事態にはならないと思うが、それでも領主である私が居なければ領民たちも不安が広まることだろう。
できれば今すぐ帰りたいところなのだが、何故か適当に誤魔化されてはいつも帰してくれない。
「まぁそうね。そろそろ貴女にも説明しておいた方がいいわね」
「それじゃやっぱり何かあるんですね?」
「えぇ、実はね……」
公妃様は公王様が倒れられてからの経緯を全て私に説明してくださった。
内容はこうだ。
第一継承者でもあれレイヴン公子が、父である公王様を殺害しようとした事は誰の目で見ても明白。この事で現在レイヴン公子……、いや元公子は厳重の監視下の元で投獄中。例え公妃様であったとしても、そう簡単には会えない状態なのだとか。
そこまでは私も聞いていたのだが、話にはまだ続きがあり、公式の発表には公王様がレイヴン公子に刺され、現在猛毒に体を蝕まれて生死を彷徨っている状況なのだという。
「は? 公王様って助かったんですよね?」
「えぇ、無事よ。貴女だって昨日一緒に食事をしていたでしょ?」
ふと昨夜の出来事を思い出し、思わず頭を抱え込みそうな衝動に駆られてしまう。
実は公妃様からたまには一緒に食事をと昨夜のディナーを誘われ、何も考えずに案内されるままに食堂へと向かったのだが、何故かそこに居られたのは公妃様だけではなく、現在も療養中の公王様と、何故かまだ居られたオーシャン公国の王であるヘンドリック様の三人。思わずダッシュで逃げたくなる衝動を必死に抑えながら、泣く泣く非公式の会食会、なんて出来事があったのだ。
お元気そうな公王様のお姿を見れたのは良かったのだが、完全な場違いの席で久々に本気の緊張という体験をした事は、記憶として真新しい。
そんな公王様が何故、公式発表で生死の狭間を彷徨っている事になっているの?
「実はねあれからレイヴンを拷問……、コホン、何故陛下を刺したのかと問いただしたの。すると妙な事を言い出してね」
公妃様の口から一瞬でた言葉を軽く受け流し、事の真相に耳を貸す。
たぶん私がおこなった拷問もどきを見て、ヨツムンガンドの出処を突き止めようとでもされたのだろう。
口では偉そうな態度をとる公子も、自分が取り調べを受けるような事態になるとは、考えていなかったことだろう。普通なら耐えられてしまう痛みや脅しなんかで、簡単に口を割ってしまう事が既に全員に知れ渡っている。
そして拷問……、いや、その取り調べでわかった事が。
『俺への断罪が下されるより前に公王の方が先に倒れたら、俺はそのまま次の王になれると言われたんだ。だから俺は……』
確かに王族たる公子に断罪が下せるのは、父親である公王様のみ。
平民は勿論、貴族が王族を裁ける訳がなく、母親である公妃様でも正当なトワイライトの血を引く公子は捌けない。
これは謀反だ策謀だと、そういった対策から受け継がれてきた法政らしいが、実際公子に問題ありとなれば、公王の指示により第二公子が継いだり、別の家系から選ばれたりもする。
そして継承問題が確定しない間に公王が亡くなれば、第一継承者でもあるの長男のレイヴン公子が選ばれる事だろう。
「でもそれって私への口封じが上手くいけばの話ですよね? あの時点では私への暴行未遂だけだった訳だし、事件自体を無かったものとすればそんな可能性も」
「えぇ、あの時点であの子が次の王になれる可能性はほぼゼロよ。それこそ反旗を翻し返して力づくで奪うか、家臣の半数以上の指示と同意がなければ不可能でしょうね」
聞けばレイヴン元公子は日頃から問題を起こしていたようだし、家臣の大半は実績を積み上げて来たアレクを次の王に、という声が上がっていたのだという。
そもそもあのバカ公子に人の心を動かせるようなカリスマ性は皆無だろう。
「わからない事が多いですね。今の話だって、自分への断罪が下される前に公王様を殺したいのなら、ヨツムンガンドなんて毒を使わずに、即効性のある毒を使った方が効果的ですよね?」
ヨツムンガンド事態珍しい毒だという話だし、死に至るまでわざわざ7日かけるという理由もわからない。
もしその7日間で遺言状なり言伝なりで、次の王をアレクにと残せばそこまでの話になってしまう。
単に恨みから、死ぬまで苦しめ続けたいという理由もわからないでもないが、万が一解毒方法が見つかるかもしれないのだから、方法としては愚策中の愚策といっても間違いない。
「一応レイヴンの口から首班の名前はでているよ。ただ直接本人が接触したのではなく、食事を運ぶメイドを通しての犯行らしくてね。ワザと関係のない人間の名を出して、濡れ衣を着せようとしている、というのが私たちの考えなの」
なるほど、自分が助かるために父親を殺そうとする人間だ。そんな人間にわざわざ自分の名前は明かさないだろう。
しかもレイヴンが口を割る事を前提に考えれば、自分にとって都合の悪い人物を排除できれば、公王を殺し、罪をレイヴンとその人物に着せれば自身の手を汚さず一石三鳥にもなる。
「それでレイヴン元公子が口にしたという人物は誰なんですか? 裏を読んで実はその人が犯人、なんて事もあるかもしれませんし、逆に推測して、犯人を絞っていくって考え方も出来ると思うんですが」
正直トワイライトの家臣の名前をあげられても、私が分かるはずもないのだけれど、これをきっかけに何か進展出来ればとして尋ねたのだが、なぜか公妃様はニコニコしながら私の方を見つめてこられるのみ。
「取りあえず、レイヴンが口にした人物が無実なのは間違いないわ」
「そうなんですか? 公妃様がそんなに信頼できる人物なら、間違いないのでしょうね」
公妃様がそこまで信頼出来るというのなら、まず『実は犯人説』という可能性は潰れた事になる。するとやはり無実の人間に濡れ衣を着せて、本人は裏でのうのうと状況を見定めていると言ったろ事だろう。
それにしても公妃様がそこまで信頼している人物ってある意味すごいわね。
「リネアお姉様、状況を理解されておられますか?」
「えっ、どういう事?」
公費様と話をしていると、ため息まじりにセレスが割り込んでくる。
「お姉様ですよ」
「私? 私がどうしたの?」
「レイヴン義兄様が自分を唆したのはリネアお姉様だと言ったんです」
「……はい?」
私?
「…………って、えぇーーー!!!????」
ちょちょちょちょちょちょっとぉぉ!!! なんで私が犯人になっているのよぉぉーーー!!
「安心しなさい。さっきも言った通り私は勿論、公王も兄上も貴女が犯人だなんて誰も信じてはいないわ」
なんて事を……。私を信じてくださった事に感謝の言葉しかないが、なんで無関係であるはずの私がいきなり犯人扱いにされないといけないよ。
「これは私と陛下、そして兄上と話し合った結果で導いたのだけれど、レイヴンにヨツムンガンドを渡した黒幕は、陛下の排除ではなく別の目的があると考えているの」
「別の目的……」
「えぇ。リネア、もし貴女が今の状況から公国を奪おうとすれば、どうすればいいと思う?」
「トワイライト公国をですか? そうですね、今の状況からレイヴン元公子は除外するとして、残りで邪魔なのはアレクとセレスの二人。セレスはアレクの抱き合わせのような感じですので、アレクが失脚すれば一緒にって声も上がるでしょうね。後は陛下が毒で亡くなられば王族の血を引く別の家系から、助かったとしても療養の関係から公王の座は空席になります」
今更レイヴンを次の王にと考える者はほとんどいない。仮にいたとしても彼が公王と認められる事はほぼ不可能だろう。
すると後邪魔なのは第二公子であるアレクだが、もともと平民出身の母を持つアレクをよく思わない家臣も多いと聞く。
あとは適当な理由を見つけてアレクを失墜させたり、彼の短な人物が不祥事を起こせば、そこから失脚を図ろうとする者も出てくるかもしれない。
つまり現状アレクさえ居なければ、公王の座自体が空席となってしまうのだ。
……あれ?
「あ、あの……。もしかして私って……」
「ふふふ、貴女は現在アレクを失脚させるために利用されているの」
「……」
どうやら私は知らぬ間に、どっぷりと継承権問題に浸かってしまっていたようです。
17
あなたにおすすめの小説
王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした
由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。
無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。
再び招かれたのは、かつて母を追放した国。
礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。
これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
モブ令嬢アレハンドリナの謀略
青杜六九
恋愛
転生モブ令嬢アレハンドリナは、王子セレドニオの婚約者ビビアナと、彼女をひそかに思う侯爵令息ルカのじれじれな恋を観察するのが日課だった。いつまで経っても決定打にかける二人に業を煮やし、セレドニオが男色家だと噂を流すべく、幼馴染の美少年イルデフォンソをけしかけたのだが……。
令嬢らしからぬ主人公が、乙女ゲームの傍観者を気取っていたところ、なぜか巻き込まれていくお話です。主人公の独白が主です。「悪役令嬢ビビアナの恋」と同じキャラクターが出てきますが、読んでいなくても全く問題はありません。あらすじはアレですが、BL要素はありません。
アレハンドリナ編のヤンデレの病み具合は弱めです。
イルデフォンソ編は腹黒です。病んでます。
2018.3.26 一旦完結しました。
2019.8.15 その後の話を執筆中ですが、別タイトルとするため、こちらは完結処理しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる