平民から貴族令嬢に。それはお断りできますか?

しゃーりん

文字の大きさ
15 / 47

15.

しおりを挟む
 
 
ナターシャがカーマイン侯爵令嬢である可能性が高い。

父は再度ナターシャの素性調査を依頼しつつも、そうであった場合の今後のことを話し合おうと言った。


「ナターシャはやはり、カーマイン侯爵家に帰すべきだろうな。」
 
 
そうであると知ってしまったからには、勘当されて縁を切ったミオナの実家の子爵家の時と同じ沈黙を選ぶわけにはいかないだろう。


「そうね。14年も侯爵夫人は待っているのですもの。知らぬフリはできないわ。」


侯爵家の攫われた令嬢なのだ。
たとえ、平民として育っていたとしても、温かく迎え入れるに違いない。
優しいジェシカ嬢も、可愛がるに違いない。

しかも、ナターシャは祖母が礼儀作法を仕込んでいる最中であるため、すぐに貴族令嬢として表に出て来られるような気もする。

あー……ナターシャが遠のいていく気分だ。

そう思ってようやく、本気でナターシャを好きになっていたのだと自覚した。
 

「ルーズベルト、メリッサのことが苦手だろう?」

「ええ、まあ。」

「ベック侯爵に押し切られてメリッサとお前が婚約することになったが、解消できるものなら解消したい。そしてナターシャをお前の婚約者にすることができれば、いいと思わないか?」
 

ナターシャを婚約者に?そんなことが可能なのか?


「それは望むところですが、ベック侯爵が婚約を解消するとは思えませんし、カーマイン侯爵が僕との婚約を許すでしょうか。」


コダック家は伯爵家だ。ジェシカ嬢は公爵家に嫁ぐのに、ナターシャを伯爵家に嫁がせるだろうか。


「カーマイン侯爵にはある程度、交渉できるのではないかと思っている。
うちはナターシャを保護した貴族だからな。しかも、みんなで可愛がっているだろう?
ナターシャも知らないところに嫁ぐよりかはいいと言ってくれるかもしれないからな。」


確かにそれは言える。だが僕のことを男として好意的に見てくれているとは思えない。
もちろん、嫌われているとは思わないが、恋愛感情を持っていないことは確かだろう。
立場が変わることで、意識してもらえるように努力しろってことだよな。


「ベック侯爵家の方は?」

「問題はそっちだな。メリッサに問題行動は見受けられないのか?」

「婚約解消に持ち込めそうな問題とまでは……学年が違うので、確認してみます。」 

「ああ。私の方でも婚約解消のきっかけになりそうなネタを探してみる。」

 
ひとまずナターシャは領地にいるのだから口説きようもない。
それに、まだ婚約者のいる身でそんなことをすると嫌われる可能性もある。
それでも、手紙を送るくらいはいいだろうか。

ナターシャと結婚できるのであれば、とても嬉しい。
しかし、カーマイン侯爵夫妻が手放さない可能性もある。
その場合は諦めざるを得ないだろうが、それでもメリッサとの婚約は解消したい。

メリッサ嬢との結婚は苦行のようだと将来を諦めていたが、婚約解消できるかもしれないと少し希望を抱くことができた。 



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

婚約破棄をされ、谷に落ちた女は聖獣の血を引く

基本二度寝
恋愛
「不憫に思って平民のお前を召し上げてやったのにな!」 王太子は女を突き飛ばした。 「その恩も忘れて、お前は何をした!」 突き飛ばされた女を、王太子の護衛の男が走り寄り支える。 その姿に王太子は更に苛立った。 「貴様との婚約は破棄する!私に魅了の力を使って城に召し上げさせたこと、私と婚約させたこと、貴様の好き勝手になどさせるか!」 「ソル…?」 「平民がっ馴れ馴れしく私の愛称を呼ぶなっ!」 王太子の怒声にはらはらと女は涙をこぼした。

過保護の王は息子の運命を見誤る

基本二度寝
恋愛
王は自身によく似ている息子を今日も微笑ましく見ていた。 妃は子を甘やかせるなときびしく接する。 まだ六つなのに。 王は親に愛された記憶はない。 その反動なのか、我が子には愛情を注ぎたい。 息子の為になる婚約者を選ぶ。 有力なのは公爵家の同じ年の令嬢。 後ろ盾にもなれ、息子の地盤を固めるにも良い。 しかし… 王は己の妃を思う。 両親の意向のまま結ばれた妃を妻に持った己は、幸せなのだろうか。 王は未来視で有名な卜者を呼び、息子の未来を見てもらうことにした。 ※一旦完結とします。蛇足はまた後日。 消えた未来の王太子と卜者と公爵あたりかな?

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
幼い頃から天の声が聞こえるシラク公爵の娘であるミレーヌ。 この天の声にはいろいろと助けられていた。父親の命を救ってくれたのもこの天の声。 そして、進学に向けて騎士科か魔導科を選択しなければならなくなったとき、助言をしてくれたのも天の声。 ミレーヌはこの天の声に従い、騎士科を選ぶことにした。 なぜなら、魔導科を選ぶと、皇子の婚約者という立派な役割がもれなくついてきてしまうからだ。 ※完結しました。新年早々、クスっとしていただけたら幸いです。軽くお読みください。

処理中です...