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しおりを挟むルーズベルトは、友人クレメンスに一つ上の学年で情報通の男を知らないか、と聞いた。
「情報通か。ひょっとして、メリッサ嬢について聞きたいのか?」
「ああ。できることなら婚約を解消したいと思っている。だけど、向こうのほうが爵位が上なこともあって、何かネタになるようなものはないか探そうと思っているんだ。」
「そうだよな。お前とは、性格が合わなさそうだもんな。」
クレメンスが苦笑しながらそう言った。メリッサは派手。ルーズベルトは外見に無頓着。
メリッサに勧められたものは着ることは一生ないだろう。
最近は、身長がまだ伸びているのでサイズが変わるということを口実に購入しないでいる。
「じゃあ、彼女の情報を入手するのと同時進行で、彼女の趣味に付き合える男を探すのはどうだ?」
「あ、それいいかも。メリッサと一緒に目立ってくれる男をあてがえばいいんだよな。」
「それでもいいし、彼女の趣味を理解してくれる男や、領地で作られたものを流行らせたいから、派手な彼女に身に着けてほしいと思っている男とかもいいんじゃないか?」
なるほど。メリッサを広告塔のように扱いたい男というのもいいかもしれない。
となると、商会を持っている貴族もアリだろう。
流行は女性が身に着けるかどうかで変わってくる。
母や姉にも協力してもらい、独身男を探すのもいいかもしれない。
「ありがとう。いい意見をもらえて助かったよ。」
「いや、情報の方も頼んでおくよ。」
名前を教えてくれれば自分で頼むつもりだったが、ひょっとすると誰に頼むのか知られたくないのかもしれない。
次期公爵ともなると、伯爵家とは比べ物にならないほどの付き合いがあるに違いないのだから。
それでも断ることなく手を差し伸べてくれるのは、友人だからだ。
それなのに、クレメンスの婚約者であるジェシカ嬢の妹かもしれないナターシャのことを黙っていることは正しいことだろうか。
ナターシャを王都に呼んでカーマイン侯爵夫妻と会わせれば、経緯はどうあれ、血縁関係の有無を明らかにすることができるのだ。
後ろめたく思うのは、コダック伯爵家のしていることが間違っているからではないか。
調査は必要だろう。
だが、その調査はコダック伯爵家が行わなければならないものというわけではない。
重要なのは、ナターシャがカーマイン侯爵家から攫われた娘であるかどうか、なのだ。
それにルーズベルトの婚約を絡めるのは、違う。
ナターシャと一緒にいたい。
それは、姑息なやり方ではなく堂々と向かってこそ報われるもので、後ろめたさを伴えば一生後悔することになるかもしれない。
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