分厚いメガネを外した令嬢は美人?

しゃーりん

文字の大きさ
37 / 44

37.

しおりを挟む
 
 
11日目の朝、ミーシャは期待を胸にガーゼと包帯を外した。

ここ毎日、見えにくかった場所が少しずつハッキリと見えていくのが嬉しかった。
近いところが見えるようになり、それが少しずつ遠くまでハッキリと見えるようになっていくのを実感していたからだ。
『あの辺までがハッキリと見えるかな?』と部屋におおよその目安になる物や文字を置いているから。

10日間の点眼を終えた今、昨日よりも少し先が見えるはず。一回り小さな文字も読めるはず。

そう思っていたミーシャは、部屋を見渡して戸惑った。

見え方が全然違ったから。カーテンを開けて明るくしてちゃんと確認する。

そう。なぜか………とても、とてもいろんな物がハッキリと見えた。


「え?どういうこと?」


レンズが3枚だけ入ったメガネは手に届くいつもの場所に置いてある。
昨日より1枚減らしたこのメガネで今日は過ごすつもりだった。

念のためにメガネをかけてみると、合わない。
レンズを3枚から2枚に、そして1枚にしても合わなかった。
 
メガネをかけない方が見やすいのだ。


「え?メガネもういらない?追加で点眼するか検証する必要もないの?」


目に異常は何も感じられない。痛くもないし充血もしていない。


「どんなに目が悪くても10日目には治るってことかしら。」


ジャンカ国の文献でも10日までしかなかったのは同じ理由?

その時、扉がノックされた。


「ミーシャ?起きてるみたいだけど、今日はどうだ?」


カーティス様が確認に来てくれた。
毎朝、レンズが1枚減ったと嬉しく報告している。
扉を開けて、カーティス様に挨拶と報告をした。


「おはようございます。見えます。とても。メガネが必要なくなりました。」

「おはよう。え?必要なくなった?」

「はい。なぜか、とても見えます。10日間で誰でも良くなる薬なのかも。」

「それは……意外だったけど、良かったな。え?じゃあ、もう素顔でいいのか?」

「そう、ですね?」


なぜだろう。確かに今日から素顔のまま過ごせるとは思っていなかったけど、カーティス様の方が狼狽えているような気がする。

カーティス様は私の頬に触って額にキスをしてから抱きしめてきた。


「抱きしめるのもメガネが邪魔にならなくていいな。
 ミーシャの念願が叶って喜ばしいことだし、俺も嬉しいけど……
 今日からメガネなしになるとは思ってなかったから不安だ。
 病院に行くんだろう?点眼はもう不要だろうけど、異常がないかちゃんと見てもらえ。
 それから、護衛から離れないこと。知らない人に話しかけられても護衛に任せたらいい。」

「わかりました。あの……恥ずかしいので着替えます。」


抱きしめられて、自分がまだ夜着のままだと気づいた。さすがに恥ずかしい。


「ああ。感触が柔らかくて気持ちよかった。結婚式が待ち遠しいな。先に下りてるよ。」


結婚後の性的なことを匂わせて、また額にキスをしたカーティス様は先に食堂に行ってしまった。
残されたのは顔が真っ赤だとわかる自分。

慌てて着替えて、鏡を見ながら髪を梳かした。
数日前から自分の顔がハッキリとわかるようになった。
顔の輪郭や鼻、口はメガネをかけている時も鏡を見ていたのでわかっていた。
だけど人の顔が、目や眉の印象でこんなに変わるとは知らなかった。

総合的に見ると、確かに自分の顔は整っているのかもしれないと思った。

だけど、貴族の令嬢は美人ばかりだと言うし、実際に会った数人もそれぞれ確かに美人だった。
カーティス様は私を心配しているようだけど、素顔に見慣れたら問題はないと思う。
ただ、娼館や愛人は嫌なので、護衛から離れるつもりはない。
 

良く見えることを嬉しく思いながら、メガネなしで階段を下りて食堂に向かった。

 





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

頭頂部に薔薇の棘が刺さりまして

犬野きらり
恋愛
第二王子のお茶会に参加して、どうにかアピールをしようと、王子の近くの場所を確保しようとして、転倒。 王家の薔薇に突っ込んで転んでしまった。髪の毛に引っ掛かる薔薇の枝に棘。 失態の恥ずかしさと熱と痛みで、私が寝込めば、初めましての小さき者の姿が見えるようになり… この薔薇を育てた人は!?

失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます

天宮有
恋愛
 水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。  それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。  私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。  それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。   家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。  お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。  私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。

公爵令嬢は運命の相手を間違える

あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。 だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。 アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。 だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。 今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。 そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。 そんな感じのお話です。

[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。

キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。 離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、 窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語

私は『選んだ』

ルーシャオ
恋愛
フィオレ侯爵家次女セラフィーヌは、いつも姉マルグレーテに『選ばさせられていた』。好きなお菓子も、ペットの犬も、ドレスもアクセサリも先に選ぶよう仕向けられ、そして当然のように姉に取られる。姉はそれを「先にいいものを選んで私に持ってきてくれている」と理解し、フィオレ侯爵も咎めることはない。 『選ばされて』姉に譲るセラフィーヌは、結婚相手までも同じように取られてしまう。姉はバルフォリア公爵家へ嫁ぐのに、セラフィーヌは貴族ですらない資産家のクレイトン卿の元へ嫁がされることに。 セラフィーヌはすっかり諦め、クレイトン卿が継承するという子爵領へ先に向かうよう家を追い出されるが、辿り着いた子爵領はすっかり自由で豊かな土地で——?

【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る

白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。 伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。 「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、 その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。 失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。 グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。 あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___  異世界恋愛:短編☆(全13話)  ※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

処理中です...