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最初の被験者に点眼してから1年が経った。
もちろん、失明した者はいない。
目が良くなる薬を点眼して、再び前と同じくらいに見えにくくなった者はほとんどいない。
老眼に効く薬を点眼して、以前のようにまた手元が見えにくくなった人は10人に1人くらい。
こちらは元々効能が弱くしたものなので効果が長続きしないのかもしれない。
早い人で8か月で前と同じように見えにくくなったそうだ。
効果が弱まった人にまた点眼してみると、再び効果が現れた。
老眼の薬は、定期的に点眼が必要なのかもしれないということだ。
栄養を与える薬は、目ヤニや乾燥、疲れ、充血、痒みなどのいろんな症状に効いたらしい。
常時使いたいという人もいたけれど、薬は約半月しか効果が保てない。
街の薬師でも処方できるようにしてほしいという意見もあって、どういう形で利用できるようになるかはまだ決まっていないらしいが、当分はトラブルが起こらないように経過観察が必要になるはず。
なので、しばらくは医師の診察後の処方になると思われる。
そして、ようやくミーシャにも点眼の許可が出た。
ミーシャの場合、おそらく最長の10日間は点眼することになるはず。
その時点でどれくらいまで見えているかが問題である。
ジャンカ国の文献では10日間以降の効果は書いていなかったから。
被験者の症状に合わせると、始めの3日間は見え方が何も変わらない。
4日目でメガネレンズ1枚分、5日目でメガネレンズ2枚分、6日目でメガネレンズ3枚分……といった具合なので、7日目で4枚分、8日目で5枚分、9日目で6枚分、10日目で7枚分。
ミーシャのレンズ10枚にはあと……3日足りない。
おそらく、10日目でレンズ3枚のメガネをかけると、レンズ10枚分の見え方とつりあうはず。
10日目以降も点眼するかは、医師に目の状態を確認してもらってから判断することに決まった。
「ミーシャ、緊張してるか?」
カーティス様が明日から点眼が始まるミーシャに聞いた。
「う~ん。緊張も少しありますが、楽しみですね。
5日目の朝は1枚ずつこのレンズを外せることになります。
9日目の朝からはこの特注メガネとはお別れで、普通のメガネになります。
10日経つと、レンズが3枚になるのですよ?
もし、それ以上点眼できない言われても、私にとってはすごいことです。
ひょっとして、それくらいならメガネを外しても自分の顔が鏡で見えます?」
「そうだな。見えるだろうな。
それに、それくらいならメガネをかけなくても家の中くらいは歩けるはずだ。」
「なんか、憧れます。メガネなしの生活。」
分厚いメガネを外して、間近でそれを眺めながらミーシャは微笑んだ。
点眼が始まった。
1日3回のうち、朝と昼は点眼後10分間だけ目を閉じておく。
そして最後の1回の夜は点眼後は朝まで目を開けないようにしなければならない。
被験者たちには目に包帯を巻いて、開かないようにして付き添いの人と家に帰ってもらっていた。
付き添う人がいない場合は片目ずつの点眼のままで、片目に眼帯をして帰ってもらっていた。
ミーシャは全部自分でするつもりだったけど、目の良くなる薬は今のところ医師の指示の下でないと許可されないことになっているため、自分で作った薬を医師に点眼されるという状況になってしまった。
そして、カーティス様はこの10日間はミーシャの家に泊まることになった。
なぜなら、目に包帯を巻いたミーシャの送り迎えをするためと、翌朝に少しずつ見えるようになっていくミーシャの喜ぶ顔が見たいから。
実際に変化が分かるのは、4日目の点眼後、つまり5日目の朝から。
10枚のレンズのうち、1枚取ることができた。取らなければ見え方に違和感がある。
1枚外した9枚のレンズでハッキリと見えたことが嬉しかった。
毎朝実感する薬の効果。
9日目で特注フレームとのお別れ。普通のメガネフレームですごせる感動。
そして10日間の点眼が終わり、11日目の朝になった。
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