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11日目の朝、ミーシャは期待を胸にガーゼと包帯を外した。
ここ毎日、見えにくかった場所が少しずつハッキリと見えていくのが嬉しかった。
近いところが見えるようになり、それが少しずつ遠くまでハッキリと見えるようになっていくのを実感していたからだ。
『あの辺までがハッキリと見えるかな?』と部屋におおよその目安になる物や文字を置いているから。
10日間の点眼を終えた今、昨日よりも少し先が見えるはず。一回り小さな文字も読めるはず。
そう思っていたミーシャは、部屋を見渡して戸惑った。
見え方が全然違ったから。カーテンを開けて明るくしてちゃんと確認する。
そう。なぜか………とても、とてもいろんな物がハッキリと見えた。
「え?どういうこと?」
レンズが3枚だけ入ったメガネは手に届くいつもの場所に置いてある。
昨日より1枚減らしたこのメガネで今日は過ごすつもりだった。
念のためにメガネをかけてみると、合わない。
レンズを3枚から2枚に、そして1枚にしても合わなかった。
メガネをかけない方が見やすいのだ。
「え?メガネもういらない?追加で点眼するか検証する必要もないの?」
目に異常は何も感じられない。痛くもないし充血もしていない。
「どんなに目が悪くても10日目には治るってことかしら。」
ジャンカ国の文献でも10日までしかなかったのは同じ理由?
その時、扉がノックされた。
「ミーシャ?起きてるみたいだけど、今日はどうだ?」
カーティス様が確認に来てくれた。
毎朝、レンズが1枚減ったと嬉しく報告している。
扉を開けて、カーティス様に挨拶と報告をした。
「おはようございます。見えます。とても。メガネが必要なくなりました。」
「おはよう。え?必要なくなった?」
「はい。なぜか、とても見えます。10日間で誰でも良くなる薬なのかも。」
「それは……意外だったけど、良かったな。え?じゃあ、もう素顔でいいのか?」
「そう、ですね?」
なぜだろう。確かに今日から素顔のまま過ごせるとは思っていなかったけど、カーティス様の方が狼狽えているような気がする。
カーティス様は私の頬に触って額にキスをしてから抱きしめてきた。
「抱きしめるのもメガネが邪魔にならなくていいな。
ミーシャの念願が叶って喜ばしいことだし、俺も嬉しいけど……
今日からメガネなしになるとは思ってなかったから不安だ。
病院に行くんだろう?点眼はもう不要だろうけど、異常がないかちゃんと見てもらえ。
それから、護衛から離れないこと。知らない人に話しかけられても護衛に任せたらいい。」
「わかりました。あの……恥ずかしいので着替えます。」
抱きしめられて、自分がまだ夜着のままだと気づいた。さすがに恥ずかしい。
「ああ。感触が柔らかくて気持ちよかった。結婚式が待ち遠しいな。先に下りてるよ。」
結婚後の性的なことを匂わせて、また額にキスをしたカーティス様は先に食堂に行ってしまった。
残されたのは顔が真っ赤だとわかる自分。
慌てて着替えて、鏡を見ながら髪を梳かした。
数日前から自分の顔がハッキリとわかるようになった。
顔の輪郭や鼻、口はメガネをかけている時も鏡を見ていたのでわかっていた。
だけど人の顔が、目や眉の印象でこんなに変わるとは知らなかった。
総合的に見ると、確かに自分の顔は整っているのかもしれないと思った。
だけど、貴族の令嬢は美人ばかりだと言うし、実際に会った数人もそれぞれ確かに美人だった。
カーティス様は私を心配しているようだけど、素顔に見慣れたら問題はないと思う。
ただ、娼館や愛人は嫌なので、護衛から離れるつもりはない。
良く見えることを嬉しく思いながら、メガネなしで階段を下りて食堂に向かった。
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