私が嫁ぐ予定の伯爵家はなんだか不穏です。

しゃーりん

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レイド伯爵令嬢サリューシアが、ブルーエ伯爵令息テオルドと婚約したのは12歳のとき。

テオルドは2歳年上で少し体の弱い令息だった。

領地が隣同士で、共同事業のために結ばれた婚約だった。



それから4年、サリューシアとテオルドはお互いに好感を持ち仲良く過ごしてきたが、テオルドは年々体が弱くなり寝込むことが増えて、学園も自宅学習とレポートで卒業認定を貰えたほどだった。
 
サリューシアが18歳になり学園を卒業すれば結婚するはずだが、それまであと2年あった。


そんな中、テオルドの見舞いに訪れたサリューシアは、ブルーエ伯爵からテオルドの弟だというティムという令息を紹介された。


「実はティムの母親は平民で、この子もずっと領地で暮らしていたんだがね、引き取ったんだ。
 サリューシア嬢の1歳下になる。仲良くしてやってくれ。」
 
「そうなのですか。初めまして、ティム様。サリューシア・レイドと申します。
 どうぞよろしくお願い致します。」

「あ、こちらこそ。まだ貴族として礼儀作法も勉強中です。助けて下さったら助かります。
 それにしても、とてもお綺麗な方ですね。兄がうらやましいです。」

「そ、そんな。ありがとうございます。では失礼しますね。」


初対面にも関わらず熱のこもった視線で容姿を褒められ、思わず照れてしまったサリューシアは、伯爵とティムの前から逃げてテオルドの部屋へと向かった。


「こんにちは。テオルド様。」

「やあ、サリューシア。来てくれてありがとう。」


テオルドのそばに行ったサリューシアは、すぐに手を握られた。
ほとんどこの屋敷内でしか会ったことはないが、2人はお互いを思い合う関係になっていた。


「具合はいかがですか?」

「大して変わらないかな。別の医師にも診察してもらいたいと母に頼んでいるんだけどね。
 伯爵家のかかりつけ医師を疑うようで、なかなか難しいみたいだ。」

「そうなのですね。うちの医師を連れて来られればいいのですが……
 医師同士にも繋がりがあるでしょうから、簡単ではないのかもしれませんね。」


テオルドの病気はよくわからない。
比較的元気な時もあれば、昏睡状態に陥る時もあるらしい。
毒ではないのかと疑っても、毒ではないらしい。


「先ほど、伯爵様に弟君のティム様をご紹介いただきました。急なことで驚いてしまいました。
 テオルド様はご存知だったのですか?」

「いや、知らなかった。
 領地の平民に、愛人がいたことがあるのは聞いたことがあった。
 だが3歳下に弟がいるとは思ってもみなかった。急に連れて来たから僕も驚いたよ。」

「そうだったのですか。伯爵夫人もご存知ではなく、急に知らされたのですか?」

「そうみたいだね。連れてくる数日前に聞かされたようだから。」

「まぁ。それはさぞかし………」


驚いただろう。不快だろう。許せないだろう。ショックだろう。

どんな言葉も伯爵夫人本人にしかわからないだろう。


「問題はなぜ父が今更引き取ったか、だ。ひょっとすると………」


テオルドは黙り込んでしまった。


「テオルド様?」

「いや、何でもない。」


テオルドの想像したことが、この半年後に現実となることをまだ2人は知らなかった。

 


 
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