私が嫁ぐ予定の伯爵家はなんだか不穏です。

しゃーりん

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ティムを紹介されてすぐ、学園は新学期が始まった。

サリューシアは2年生になり、ティムは1年に入学してきた。学園は基本3年制である。

まだ貴族になってひと月足らずであるにも関わらずティムを入学させたのだ。
マナーも勉強も付け焼刃だが、1年遅らせるよりも周りを見て覚える方が勉強になるだろう、と伯爵はそう考えたらしい。

貴族になったばかりで、母親が平民。
庶子であるティムは、初めは嫌厭されたが、わからないことに教えを請おうとする姿やいつも明るく前向きな姿に友人もできて、順調に伯爵令息として認められていった。

 
そして半年ほど経ったとき、ブルーエ伯爵夫妻とサリューシアの両親であるレイド伯爵夫妻との間で、サリューシアの婚約者をテオルドからティムに変更するという話がなされていた。

それを告げられたサリューシアは、両親に反対した。


「どうして?私の婚約者はテオルド様だわ。私はテオルド様をお慕いしているのに。」

「そうは言っても、テオルド君はここ最近、病状が悪化しているそうじゃないか。
 ティム君が将来、仕事を手伝ってくれたとしても、跡継ぎの問題もある。
 今のテオルド君のままでは、サリューシアとの間に子供を設けることなど無理だろう。
 ならば、健康なティム君を跡継ぎにしてサリューシアと結婚する方が望ましいのではないか。
 そういうブルーエ伯爵夫妻のお前に対する気遣いでもあるんだ。」

「でも……跡継ぎがティム様になったとしても、私はテオルド様と一緒になりたいわ。」

「サリューシア。これは政略結婚だ。
 いつまで夫婦でいられるかわからないテオルド君よりも、ティム君との将来を考えろ。
 お前とティム君が結婚して2人の間に産まれた子供が将来のブルーエ伯爵になる。
 それが貴族令嬢として育ってきたお前の役割だ。」

「そうよ、サリューシア。
 あなたはもうすぐ17歳になるけど、卒業までまだ1年半あるのよ。
 結婚までに、テオルド様が亡くなることも考えられるの。
 あるいは、結婚してすぐに亡くなるかもしれない。
 政略結婚なのに意味を成さなくなるし、次のあなたの嫁ぎ先も選べなくなる。
 あなたにはまだこの先に長い人生が続くの。
 親として、先の短いテオルド様に嫁ぐことは認められないの。わかって。」

 
政略結婚、貴族令嬢としての役割。

そして両親の、私に幸せを望む思い。

自分の我が儘で困らせるわけにはいかなかった。


「わかりました。ティム様と……婚約します。」

「よく言った。テオルド君は、領地で静養することになるらしい。終の棲家となるだろう。
 最後に挨拶したければ、伯爵に頼んでおこう。」

「体調がよくないのに領地へと向かうのですか?そんな、ひどい。」

「王都の伯爵家にいたままではお前とティム君の関係に気遣うからだろう。
 どうする?会わないでおくか?」

「いえ、会います。ちゃんとお別れを告げないと後悔しますから。」

「そうだな。サリューシア、死は誰にでも訪れる。
 だが、若い者が死に向かうというのは誰でも辛いことだ。
 それを、まだお前に経験させるのは早い。目にするのと耳にするのとでは大きく違うんだ。 
 その後の人生に影響を及ぼすこともある。
 心残りのないように、ケジメをつけてお別れをしておきなさい。」

「……はい。」


サリューシアは涙を堪えながら返事をした。 




 
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