7 / 9
7.
しおりを挟むソランジュとの結婚前に、伯爵夫妻から言われたことがあるのではないかと聞くと、オーリオは気まずそうな顔をしていた。
「白い結婚とすることは認めないということと、跡継ぎを作る努力をすることを言い聞かせられたのではありませんか?」
「……ああ。侯爵家に失礼なことはしてはいけない、跡継ぎを作ることで縁を深くする必要があると。」
オーリオは義務を果たさなければならなくなった。
「サミア様のことが好きなあなたは後先考えず、白い結婚にするつもりだったのではないですか?」
「……そのつもりだった。まるで裏切る気がして。殿下からもサミア様からも白い結婚の証明ができたら離婚すればいいと…………離婚してどうする気だったんだろうな。いずれ跡継ぎは必要なのに。」
2人それぞれから白い結婚による離婚を提案されていたのね。離婚というより婚姻無効になるのだけれど。
政略結婚した2人が、政略結婚しようとする人に離婚を勧めるなんて身勝手ね。
婚約後からほとんど交流がなかったのも殿下たちに言われていたのでしょうね。
「王太子殿下は、オーリオ様が私と閨を共にしていないと思っていたのですね。あの反応の理由がわかりました。だから私の勝ちなのでしょう。」
オーリオは側近を首になったこと以外でソランジュが勝った意味がわからなかった。
「あの時、私は王太子殿下にお腹に手を当てる仕草をしました。妊娠していると伝えたのです。つまり、私たちは白い結婚ではないと殿下に伝わりました。さすがに殿下も今から父親になろうというあなたを罠に嵌めることはできないと役目を下ろしてくれたのです。」
「にん…しん………こども?!」
オーリオはソランジュのお腹を凝視していた。
「ええ。昨日わかりました。強力な後押しとなって良かったです。」
王太子殿下の思惑にオーリオを巻き込まないでほしいと遠回しに伝えてわかってもらえるかは微妙だと思っていた。今更手駒を変えたくないと言われる可能性もあったから。
だけど、妊娠はマーズ伯爵家の跡継ぎを意味する。父親を犯罪者にはできなかった。
王太子殿下がオーリオを諦める後押しとなってくれたのだ。
罠に嵌めても、王太子殿下はオーリオの面倒は見たかもしれない。
ただし、オーリオ・マーズではない者として。
オーリオ・マーズは犯罪者として石切り場で死亡したことにでもして、別の名前で違う国で暮らすように逃がす。自分が嵌めたことなのに、オーリオに感謝されるように。
マーズ伯爵家は親戚に渡され降格。伯爵夫妻は隠居を命じられるが待遇は悪くしないだろう。
もちろん、ソランジュは白い結婚が認められて無関係と実家に戻される。
サミア様は離婚されて実家の領地に幽閉か修道院行き。
そんな感じになっていたはず。王太子殿下は策略家だから。
ソランジュのお腹を呆然と見ているオーリオに言った。
「王太子殿下は、あなたがサミア様に煽られながらも全く手を出す様子がなかったことをおかしいと思っていたみたいですよ。まるでそれも私のせいだと言うように。
ひょっとして以前に忠告した『超えてはならない一線をお忘れなく』という言葉が心に残っていましたか?」
オーリオはソランジュのお腹から顔に勢いよく目線を上げて答えた。
「……そうだったのかも。」
オーリオはサミア様と接する時、なぜか『一線』という言葉が頭にあったからだ。
それはソランジュに忠告された言葉だったのだとようやく気づいた。
2,282
あなたにおすすめの小説
【完結】騙された侯爵令嬢は、政略結婚でも愛し愛されたかったのです
山葵
恋愛
政略結婚で結ばれた私達だったが、いつか愛し合う事が出来ると信じていた。
それなのに、彼には、ずっと好きな人が居たのだ。
私にはプレゼントさえ下さらなかったのに、その方には自分の瞳の宝石を贈っていたなんて…。
いくつもの、最期の願い
しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。
夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。
そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。
メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。
死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。
あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。
誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。
しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。
幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。
その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。
実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。
やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。
妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。
絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。
なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。
要らないと思ったのに人に取られると欲しくなるのはわからなくもないけれど。
しゃーりん
恋愛
フェルナンドは侯爵家の三男で騎士をしている。
同僚のアルベールが親に見合いしろと強要されたと愚痴を言い、その相手が先日、婚約が破棄になった令嬢だということを知った。
その令嬢、ミュリエルは学園での成績も首席で才媛と言われ、一部では名高い令嬢であった。
アルベールはミュリエルの顔を知らないらしく、婚約破棄されるくらいだから頭の固い不細工な女だと思い込んでいたが、ミュリエルは美人である。
ならば、アルベールが見合いをする前に、自分と見合いができないかとフェルナンドは考えた。
フェルナンドは騎士を辞めて実家の領地で働くために、妻を必要としていたからである。
フェルナンドとミュリエルの結婚を知ったアルベールは、ミュリエルを見て『返せ』と言い出す、というお話です。
自国から去りたかったので、怪しい求婚だけど受けました。
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢アミディアは婚約者と別れるように言われていたところを隣国から来た客人オルビスに助けられた。
アミディアが自国に嫌気がさしているのを察したオルビスは、自分と結婚すればこの国から出られると求婚する。
隣国には何度も訪れたことはあるし親戚もいる。
学園を卒業した今が逃げる時だと思い、アミディアはオルビスの怪しい求婚を受けることにした。
訳アリの結婚になるのだろうと思い込んで隣国で暮らすことになったけど溺愛されるというお話です。
おしどり夫婦の茶番
Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。
おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。
一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる