逃げた先で見つけた幸せはずっと一緒に。

しゃーりん

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もうオリオール侯爵家に戻るつもりはない。

ローレンスは執務室にある金になりそうな物や数回着ただけの夜会用の服などを詰めるだけカバンに詰め込んで、夜中にこっそりと家出した。 

平民として自由に暮らす。

逃げた先で行き倒れることになっても、あそこに留まって殺されるよりはいいと思った。


夜が明けて、邪魔な物を全て換金した。

その金で馬車に乗り、少しでも王都から離れた街へと向かった。

ところどころで留まって、日雇いで金を稼いだりもした。
意外とそんな暮らしも楽しかった。

そんな暮らしを半年ほど続けた。
 



そしてある時、運命を変える出会いが訪れた。

ある町の宿で、ひどく具合の悪そうな男とそれを心配している若い女がいた。
 
ローレンスが受付をしている間に、男のほうがとうとう倒れた。


「バレル、大丈夫?ねぇ、どこが痛い?」


すると受付の女性が言った。


「多分、それククル熱だよ。ここに来る前の街で半生のククルでも食べたんじゃないの?」


ククルという食べ物は熱をよく通す必要があり、半生で食べてしまうと5日間くらい高熱が続くらしい。
人に移る病気ではないが、水分を摂らせたりして面倒を見ないと衰弱死する可能性があるという。 


「御者みたいだけど、宿にその男を置き去りにして出て行かないでね?」

「……病院はありますか?」
 
「あるけど、入院させるの?お嬢さん、急ぎなのかな?」

「はい。なので……」


彼女としても病人をここに置いていくのは心苦しいのだろう。
だけど、先に進まなければならないらしい。


「ちょっと、あんた。その男を担いで病院に運んでやってくれない?」

「……僕?」 

「そう。うちの旦那は腰を痛めそうだから運ばせたくない。少し前に痛めたところだから。
あんたもひ弱そうだけど若いから背負うくらいできるでしょう?」


家を出て半年以上経ってもまだひ弱そうに見えるらしい。
ひょろひょろと背ばかり高い棒のような体型からは大分マシになったと思っていたのに。

だが、奥から出てきた宿の主人を見て分かった。
彼に比べれば、確かにローレンスはひ弱そうなのかもしれない、と。

その宿の主人に手伝ってもらって、ローレンスは病人の男を背負った。


「病院はどこだろうか?」


宿の主人に案内されて、男を背負ったローレンスと女性は病院へと向かった。 



男の入院手続きを待つ間、女性と少し話をした。


「ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」


言葉遣いが丁寧だ。貴族にしては身なりも侍女もいないのも変だから、平民のいいところのお嬢さんか?

小柄で可愛らしい女性。そうか。自分の好みはこういう女性なのだと気づいた。


「いや、それより、彼は御者じゃないのか?」

「そうなのです。もう馬車では移動できそうにありません。ここから東の辺境まで行く方法をご存知ですか?」

「貸馬車か、乗り合い馬車か、だろうな。辺境までここから4日くらいか?よければ僕が御者の代わりをしようか?」

「あなたが?御者の方なのですか?」

「いや、違う。定住場所を探して旅をしているんだ。御者の真似事は少ししたことがある。」


馬車での荷物運びをして稼いだこともあるから。
 
 
 


 
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