逃げた先で見つけた幸せはずっと一緒に。

しゃーりん

文字の大きさ
6 / 50

6.

しおりを挟む
 
 
ローレンスは東の辺境へと向かわなければならない女性の御者になることを申し出た。

若い女性が一人、旅慣れない様子を見過ごせなかったからだ。


「辺境の用はすぐに終わるのか?あの御者の男はここで待たせていてもいいのか?」

「あ……辺境には嫁ぎに行くのです。ですので、御者はそのまま帰る予定で。」


嫁ぎに?結婚するのか?まだ若く見えるのに。荷物も最小限だし、大丈夫なのか?

口を出せることではないが。


「そうか。なら、君を送り届けて僕はここに戻ってきて御者に馬車を返せばいいのか?」

「そこまでしていただけると助かりますが。よろしいのですか?」

「特にアテがある旅でもないからな。戻ってくる頃には御者の体調も戻っているだろう。」


5日も高熱ではフラフラになるだろう。
それでも熱が下がって3日も経てば、馬車を動かせるくらいには回復しているはずだ。


「ありがとうございます。感謝いたします。」


気軽に申し出てしまったが、この女性も危機感が薄いよな。心配になるよ。


「私、メロディーナと申します。」

「僕は……ランス、だ。じゃあ、明日の朝に。」

「はい。よろしくお願いいたします。」 


こうしてメロディーナとの4日間の旅が始まった。


辺境までは大きな街道が通っているため、迷うことはない。
盗賊の心配もないくらい、馬車通りもあるのだ。

1日目はあまり自分のことを話さなかったが、2日目となってくると彼女は口が軽くなってきた。
 
メロディーナは親の借金の肩代わりで嫁ぐことになったらしい。
父親は経緯を話してくれなかったが、相手は60歳近い男らしく、介護のためだと思われるそうだ。

驚くことに、メロディーナはローレンスの1歳下の18歳だった。
16歳くらいかと思っていたとは言えない。

そして3日目にもなると情が湧く。

メロディーナは実家から二度と戻ってくるなと言われているらしい。

つまり、年老いた夫が亡くなっても戻る場所がないのだ。

だから、ついローレンスは言った。

「逃げないのか?」と。


「もう、お金を受け取ってしまっているのです。私が行かなければ返金しなければなりませんが、もうそのお金もないのです。父から解放されるだけで、満足です。逃げても、もし見つかれば、どうなるかわかりません。それなら、私は役目を果たしたい。」


自分の役目を放棄したローレンスとは真逆である。

久しぶりにオリオール侯爵家のことを思い出したが、どうなっているのか全然知らない。
ローレンスの家出を公表しているのかすら、知らないでいる。 


役目を果たせば、何年後か十何年後かには自由になるメロディーナ。

彼女が自由になるその日まで、近くで見守り続けることは可能だろうか。

そう思ったとき、ローレンスはメロディーナが好きになったのだと気づいた。
 


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下が好きなのは私だった

恋愛
魔王の補佐官を父に持つリシェルは、長年の婚約者であり片思いの相手ノアールから婚約破棄を告げられた。 理由は、彼の恋人の方が次期魔王たる自分の妻に相応しい魔力の持ち主だからだそう。 最初は仲が良かったのに、次第に彼に嫌われていったせいでリシェルは疲れていた。無様な姿を晒すくらいなら、晴れ晴れとした姿で婚約破棄を受け入れた。 のだが……婚約破棄をしたノアールは何故かリシェルに執着をし出して……。 更に、人間界には父の友人らしい天使?もいた……。 ※カクヨムさん・なろうさんにも公開しております。

〖完結〗冤罪で断罪された侯爵令嬢は、やり直しを希望します。

藍川みいな
恋愛
「これより、サンドラ・バークの刑を執行する!」 妹を殺そうとした罪で有罪となった私は、死刑を言い渡されました。ですが、私は何もしていない。 全ては、妹のカレンが仕組んだことでした。 刑が執行され、死んだはずの私は、何故か自分の部屋のベッドの上で目を覚ましたのです。 どうやら時が、一年前に戻ったようです。 もう一度やり直す機会をもらった私は、二度と断罪されないように前とは違う選択をする。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全14話で完結になります。

もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。 ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。 対して領民の娘イルアは、本気だった。 もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。 けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。 誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。 弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。

婚約破棄をされ、谷に落ちた女は聖獣の血を引く

基本二度寝
恋愛
「不憫に思って平民のお前を召し上げてやったのにな!」 王太子は女を突き飛ばした。 「その恩も忘れて、お前は何をした!」 突き飛ばされた女を、王太子の護衛の男が走り寄り支える。 その姿に王太子は更に苛立った。 「貴様との婚約は破棄する!私に魅了の力を使って城に召し上げさせたこと、私と婚約させたこと、貴様の好き勝手になどさせるか!」 「ソル…?」 「平民がっ馴れ馴れしく私の愛称を呼ぶなっ!」 王太子の怒声にはらはらと女は涙をこぼした。

〖完結〗私の事を愛さなくても結構ですが、私の子を冷遇するのは許しません!

藍川みいな
恋愛
「セシディには出て行ってもらう。」 ジオード様はいきなり愛人を連れて来て、いきなり出て行けとおっしゃいました。 それだけではなく、息子のアレクシスを連れて行く事は許さないと… ジオード様はアレクシスが生まれてから一度だって可愛がってくれた事はありませんし、ジオード様が連れて来た愛人が、アレクシスを愛してくれるとは思えません… アレクシスを守る為に、使用人になる事にします! 使用人になったセシディを、愛人は毎日いじめ、ジオードは目の前でアレクシスを叱りつける。 そんな状況から救ってくれたのは、姉のシンディでした。 迎えに来てくれた姉と共に、アレクシスを連れて行く… 「シモーヌは追い出すから、セシディとアレクシスを連れていかないでくれ!!」 はあ!? 旦那様は今更、何を仰っているのでしょう? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全11話で完結になります。

〖完結〗旦那様はどうしようもないですね。

藍川みいな
恋愛
愛人を作り、メイドにまで手を出す旦那様。 我慢の限界を迎えた時、旦那様から離婚だ! 出て行け! と言われました。 この邸はお父様のものですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全3話で完結になります。

婚約破棄でお願いします

基本二度寝
恋愛
王太子の婚約者、カーリンは男爵令嬢に覚えのない悪行を並べ立てられた。 「君は、そんな人だったのか…」 王太子は男爵令嬢の言葉を鵜呑みにして… ※ギャグかもしれない

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

処理中です...