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しおりを挟む明日には辺境に着く。
それがわかっているせいか、メロディーナの様子も少し変だった。
夕食を終え、メロディーナが言ってきた。
「少し、散歩に行きませんか?」と。
ローレンスは喜んで頷いた。
「ランスさん、手を繋いでもいいですか?」
「ああ。」
ローレンスが手を差し出すと、メロディーナが小さい手を乗せてきたのでそれを握った。
妻だったジョスリンほど手入れされていない手。それでも気分が高揚した。
「ドキドキするわ。こうして男の人と歩くの、初めて。」
「僕も、かな。なんか、幸せだな。」
そう呟くと、メロディーナは顔を真っ赤にした。
しまった。まるで口説いているように思われたかもしれない。気持ち悪く思っただろうか。
しかし、メロディーナは繋いだ手をギュッと握ってくれた。
それからは他愛もない話をしながら楽しく散歩をしてから、宿に戻った。
隣同士の部屋の前で繋いでいた手を放そうとした。
「おやすみ。また明日。」そう言おうとして。
しかし、メロディーナは手を放そうとしなかった。
「あ、あの、えっと、一緒に、一晩過ごしませんか?」
「…………え?」
「ダメ、ですか?嫁ぐ前に、あなたとの思い出が欲しくて。」
「…………いいの?」
「しばらく、自由はないと思うから。」
結婚して介護に明け暮れる日々になる。解放されるのは夫が死ぬとき。
先の見えない不安が、メロディーナに大胆な行動をさせているのだろう。
彼女の勇気を窘めることなど、ローレンスはできなかった。
あってはならないことだとわかっている。
だが、彼女の手を振りほどくことなどしたくなかった。
ローレンスはメロディーナを引き寄せ、部屋へと入った。
幸せな一夜を過ごし、離れがたく朝まで抱き合って眠った。
翌朝、今日は目的地に到着するだろう。
夕べのことはお互いに口にせず、出発した。
メロディーナに場所を確認したとき、愕然とした。
彼女の結婚相手は、前辺境伯だったのだ。
となると、メロディーナはやはり貴族か?
純潔を失ったメロディーナが咎められることはないのか?
ローレンスはひどく動揺したが、メロディーナが追い出されるようであれば一緒に逃げればいいと腹を括った。
前辺境伯の屋敷は、本邸から離れたところにあった。
メロディーナが金と引き換えに買われることになった経緯はわからないが、彼女が実家よりも居心地のいい場所になればと願った。
ローレンスに手を振り、メロディーナは屋敷の中へと姿を消した。
ローレンスは、再び4日かけて馬車を御者の元へと戻した。
御者は元気になっており、ローレンスに感謝した。
それから再び、ローレンスは東の辺境を目指した。
メロディーナの近くで暮らす。彼女を見守りたいのだ。
もちろん、メロディーナには知らせない。付きまとう気持ち悪い男と思われたくない。
今のローレンスには、彼女が自分の生きる意味になってしまった。
自分でもわかる。初恋に溺れる重い男だ。
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