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しおりを挟む東の辺境の街に戻ったローレンスは、住む部屋を借り、仕事を見つけた。
前辺境伯が若い娘と結婚したことはすぐに知れ渡っていた。
前辺境伯は杖をついているが、自分で歩く程度には元気だということだ。
介護だと言っていたから寝たきりを想像していたが、どうやらそうではなかったらしい。
怪我をして気難しかった前辺境伯が、笑顔を見せるようになったという話まで聞こえてきた。
どうやらメロディーナとうまくやっているらしい。
ローレンスはそれを耳にしたとき、祖父と孫のような関係を想像して心が温まる気がした。
しかし、それが勘違いだったと知ったのは、メロディーナが妊娠したと知ったときだ。
前辺境伯は精力が衰えていなかったらしい。
メロディーナと閨を共にしていたということだ。
『孫どころか、ひ孫と同じ年の子供を作るとはまだまだお若いな』
職場の者たちはそう笑いながら、辺境で産まれる新たな子供の誕生を心待ちにしていた。
ローレンスはショックのあまり、しばらく何をしていたか覚えていない。
やがて立ち直ったローレンスは、メロディーナが幸せであれば問題ないのだと前向きになった。
そして月日が経ち、メロディーナが女の子を出産したと聞いた。
ホッとして涙が出た。
前辺境伯は赤子にメロメロだとも伝わってきた。
ちなみに、メロディーナが嫁いでから、前辺境伯もメロディーナも赤子も街に姿を見せてはいない。
情報源は全て、屋敷で働く者たちからなのだろう。
この職場の者と身内なのかもしれない。
公表されていないのに、やけに詳しい情報がこの職場には届けられるのだ。
それでも、姿を見ることはできなくても、ローレンスはメロディーナの話を伝え聞くだけで幸せだった。
しかし突然、前辺境伯がこの世を去った。
どうやら辺境伯の屋敷に赤子を見せに向かったところ、胸を押さえて倒れたとのことだった。
メロディーナが嫁いでわずか1年のことだった。
メロディーナと赤子はどうなるのだろうか。
このまま屋敷に留まることになるのだろうか。
ローレンスは心配でならなかった。
そしてついに、メロディーナと赤子は前辺境伯の屋敷を追い出されてしまったようだ。
赤子と荷物を抱え、屋敷の近くでメロディーナは途方に暮れていた。
なんという仕打ちをするのだろうか。
メロディーナはともかく、赤子は辺境伯の血筋であるというのに、追い出すにしても馬車も何もなく放り出すだなんて信じられなかった。
ローレンスは悩んだ。
声をかけても大丈夫だろうか。気持ち悪がられないだろうか。
そう躊躇している間に、メロディーナの荷物を奪おうとしている男を見かけて慌てて駆けつけた。
「何をしているんだ!」
男から荷物を取り返そうとして、ローレンスは……意識を失った。
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