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しおりを挟む住んでいた街での仕事も退職し、思い出の街に引っ越した。
大家さんのお兄さんが紹介してくれた家は子育て世帯が多く、周りに気兼ねなく住めるところだった。
「若いあんたたちなら、まだまだ子供も増えるだろうしな。」
そう言って、部屋数の多いところを安く貸してくれた。
そうして新しい街で暮らし始めて3日目の夜、ローレンスはメロディーナに押し倒されていた。
「ねぇ、今のランスさんには私って魅力ない?抱きたくならないの?」
「え、そんなことない。もちろん、抱きたい。けど、ミレージュの世話で疲れてるかと思って。」
「ミレージュはここに来てから朝までぐっすり眠っているから、大丈夫よ。」
「じゃあ、いいの?」
「うん。」
ローレンスはメロディーナを下にして、思わずゴクンと唾を飲み込んだ。
人生2度目の経験。緊張しているが、興奮もしている。
焦らないよう、暴発しないように、ローレンスはメロディーナを抱いた。
僕たちは夫婦になったのだ。お互いが望む限り、いつでも触れ合える。
手に届くところにいるメロディーナに何度も愛を囁いた。
「好きだよ、メロディーナ。」
「私も好きよ。」
「愛してるよ、メロディーナ。」
「私も愛してるわ。ランスさん、離れないでね。」
「もちろん。ずっと一緒にいるよ。」
僕たちは同じ言葉を何度も繰り返していた。
まるで、いつか離されるかもしれないと感じているかのように。
そんなはずはない。
僕たちの幸せはここにあるんだから。
ミレージュが1歳の誕生日を迎えた頃、メロディーナが2人目を妊娠した。
僕たちは大喜びした。
少しずつ膨らむお腹。衝撃が伝わるほどの胎動。毎日が感動の連続だった。
母もこうして僕の誕生を心待ちにしてくれていたのだろうか。父は……感動もなかっただろうな。
遠くのオリオール侯爵家を久しぶりに思い出した。
そして産まれたのは男の子。リカルドと名づけた。
メロディーナ似の子だった。
自分がこんな賑やかな家庭を持てるだなんて、涙が出るくらい嬉しかった。
血の繋がった息子を虐待するような実の父は、人でなしだったと言えるだろう。
結婚して2年を迎えるとき、最近流行りの結婚指輪というものをメロディーナに贈ろうと思った。
平民の間でも既婚者の証として、人気が高まっている。
浮気防止という意味で、妻が夫に着けさせることもあるそうだが、ローレンスとしては妻とお揃いの物を身に着けられるという嬉しさから注文してしまった。
決して、メロディーナを疑っているわけではない。むしろ、狙われないようにという意味も兼ねている。
まぁ、いつも子連れで歩くことの方が多いため、未婚とは思われないだろうが念のため。
そして、その宝飾店でジェイド・ピルスナーに声を掛けられたのだ。
「ローレンス?お前、ローレンスじゃないのか?」
「僕はランスですが、お間違えでは?」
僕は2年前に過去の記憶を失った男だ。その設定は今も続いている。
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