12 / 50
12.
しおりを挟む宝飾店で声をかけてきた、学園の同級生だったジェイド・ピルスナー伯爵令息。
記憶喪失設定のローレンスは彼のことを覚えていないのだ。覚えていても、覚えていない!
そう言えば、メロディーナと一緒に暮らし始めて記憶喪失設定で苦労した覚えはないと気づいた。
彼女は昔の話をしないからだ。
まぁ、たった4日間一緒だっただけなので、メロディーナもあまり話すと恋人だったという設定の話が破綻するからだろう。
それでも、この街で、ここを手を繋いで歩いたという話だけは聞いた。
しかし、別れたという設定だったのになぜこの街でデートしたのかという辻褄の合わないことには気づかないふりをしている。
「いや、ローレンスだろう?君は殺されたのかと思っていた。」
殺された?確かに、事情を知らないと家出という事実すら疑いを持つかもしれない。
実際、殺される可能性も高かったのだし。
「ランスさん、お待たせしました。」
「すいません、失礼します。」
店員が声をかけてくれて助かった。
「こちらですね。奥様、お喜びになると思いますよ。」
「そうかな。そうだといいけど。」
「お二人の仲の良さは有名ですからね。さらなる虫よけでもうこれで完璧でしょう。」
メロディーナは旅の男にも声をかけられるからなぁ。予防線になればいいけど。
「はははっ。ありがとう。周りにも見せびらかして宣伝しておきます。」
「よろしくお願いしますね。ありがとうございました!」
ローレンスが宝飾店から出ると、ジェイドが待っていた。
しつこい。記憶喪失だと言うべきか?
「今、君はランスと名乗っているのか?」
「名乗るっていうか、ランスという名前ですけど?」
「君はローレンスじゃないか。オリオール侯爵になっていたはずの男だ。」
「侯爵?まさか。僕がそんな貴族なわけないじゃないですか。」
「君の妻は子供を産んだぞ?君は重婚しているのか?」
重婚?そうかもしれないが、戸籍は別だから重婚にはならないだろう?
「言いがかりはやめてくれませんか?話の内容がさっぱりわかりません。失礼します。」
ジェイドは追ってこなかった。
まさか、こんなところで知り合いに会うとは思わなかった。
あの頃の僕とは随分違っているはずだ。
メロディーナと初めて会った頃とも違い、そこそこがっしりとした体格になった。
もう誰も、ひょろひょろで気持ち悪いとは言わないだろう。
ジェイドはよく気づいたな、と思った。
それにしても、ジョスリンは子供を産んでいたのか。
それはもちろん、弟レナウンの子供に違いないが、結婚直後にできたのだろうか。
それとも、数か月後に妊娠してから、ローレンスが失踪したことにしたのだろうか。
アイツらが、ローレンスの家出直後に捜索したとは思えない。
これ幸いとジョスリンが妊娠するまで何事もないかのように過ごしていたに違いないだろう。
558
あなたにおすすめの小説
生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。
〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。
藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。
だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。
レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。
レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。
設定はゆるゆるです。
本編10話で完結になります。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
〖完結〗冤罪で断罪された侯爵令嬢は、やり直しを希望します。
藍川みいな
恋愛
「これより、サンドラ・バークの刑を執行する!」
妹を殺そうとした罪で有罪となった私は、死刑を言い渡されました。ですが、私は何もしていない。
全ては、妹のカレンが仕組んだことでした。
刑が執行され、死んだはずの私は、何故か自分の部屋のベッドの上で目を覚ましたのです。
どうやら時が、一年前に戻ったようです。
もう一度やり直す機会をもらった私は、二度と断罪されないように前とは違う選択をする。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全14話で完結になります。
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
〖完結〗記憶を失った令嬢は、冷酷と噂される公爵様に拾われる。
藍川みいな
恋愛
伯爵令嬢のリリスは、ハンナという双子の妹がいた。
リリスはレイリック・ドルタ侯爵に見初められ、婚約をしたのだが、
「お姉様、私、ドルタ侯爵が気に入ったの。だから、私に譲ってくださらない?」
ハンナは姉の婚約者を、欲しがった。
見た目は瓜二つだが、リリスとハンナの性格は正反対。
「レイリック様は、私の婚約者よ。悪いけど、諦めて。」
断った私にハンナは毒を飲ませ、森に捨てた…
目を覚ました私は記憶を失い、冷酷と噂されている公爵、アンディ・ホリード様のお邸のベッドの上でした。
そして私が記憶を取り戻したのは、ハンナとレイリック様の結婚式だった。
設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全19話で完結になります。
令嬢は魅了魔法を強請る
基本二度寝
恋愛
「お願いします!私に魅了魔法をかけてください」
今にも泣きそうな声で取り縋る令嬢に、魔法師団の師長を務める父を持つ子爵家の子息、アトラクトは慌てた。
魅了魔法などと叫ばれ周囲を見回した。
大昔、王室を巻き込んで事件の元となった『魅了魔法』は禁術となり、すでに廃術扱いの代物だった。
「もう、あの方の心には私が居ないのです。だから…」
「待て待て、話をすすめるな」
もう失われている魔法なのだと、何度説明しても令嬢は理解しない。
「私の恋を終わらせてください」
顔を上げた令嬢に、アトラクトは瞳を奪われた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる