令嬢は魅了魔法を強請る

「お願いします!私に魅了魔法をかけてください」

今にも泣きそうな声で取り縋る令嬢に、魔法師団の師長を務める父を持つ子爵家の子息、アトラクトは慌てた。
魅了魔法などと叫ばれ周囲を見回した。

大昔、王室を巻き込んで事件の元となった『魅了魔法』は禁術となり、すでに廃術扱いの代物だった。

「もう、あの方の心には私が居ないのです。だから…」

「待て待て、話をすすめるな」

もう失われている魔法なのだと、何度説明しても令嬢は理解しない。

「私の恋を終わらせてください」

顔を上げた令嬢に、アトラクトは瞳を奪われた。
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