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七
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「シュラブとの婚約は破棄された」
「わかりました」
伯爵は事務的に伝えた事に対し、娘の反応があまりに薄く、どうしたのかと首をひねる。
「良いのか…?」
「良いも悪いももう、決まったことですよね?」
つい最近まで、伯爵に泣いて縋っていたミファセスの姿はもうない。
シュラブの名を出しても動揺も無ければ、あれほど激しかった感情も鳴りを潜めていた。
「それで、その。次の婚約は、」
ミファセスは、言葉に躓きながら次の婚約を気にしている。
「しばらくはまだ良いのではないか?」
「いえ、他人の口を気にしていたらいつまでたっても婿を迎えられません」
伯爵は釣書を執事に持ってこさせた。
シュラブと婚約している時分から、家督を継げぬ子息らから送られていた。
シュラブの素行の悪さにチャンスがあるかもしれないと彼らは考えていたのだろう。
伯爵も、あまりにひどい状況の相手は外し、念の為に釣書は保管していた。
積み上がった釣書の一番上にあるのは最近送られてきたもの。
上から順に何枚かを開き、ミファセスは「この方が良いです」と釣書を伯爵に差し出した。
子爵家の三男。
魔法師団長の子息なら、将来に不安を感じることも無いだろうに。
何故、我が家に?と思わなくもなかった青年。
「まだ釣書を全部は開いてないが、他は見なくてよいのか?」
「はい」
「どうして彼を?」
「えっ?!あ、その。…直感…で」
そんな安易に決めてよいのかと確認したが、ミファセスは意見を変えず、伯爵が折れた。
伯爵が篩にかけた釣書。
その中から誰を選んでも構わなかったが、あまりに即決だったので不審に思ったが、実際釣書の本人と対面して、睦まじく過ごす二人に伯爵はひとまず安堵した。
シュラブの時のようなことにはならないだろうか、と一抹の不安はある。
しかし、新たにミファセスが選んだ婚約者は、調べたところ魔法の研究に明け暮れる変わり者らしい。
これまで女っ気のない生活をしていたようだ。
他者を懐に入れるような気安い性格ではないと聞いていたが、ミファセスに対してはそうではない。
時々、ミファセスを戸惑わせて反応を楽しんでいるようだけれど。
あれほどシュラブを想っていたはずの娘は、婚約破棄をして、魔法が解けたようにシュラブへの興味を無くした。
今はもう、新しい婚約者に夢中だ。
「年頃の女心は…わからんなぁ」
伯爵は、今日も学園からミファセスを送り届けてくれた新たな婚約者と、庭で話を弾ませている娘の二人を、優しく見つめていた。
「わかりました」
伯爵は事務的に伝えた事に対し、娘の反応があまりに薄く、どうしたのかと首をひねる。
「良いのか…?」
「良いも悪いももう、決まったことですよね?」
つい最近まで、伯爵に泣いて縋っていたミファセスの姿はもうない。
シュラブの名を出しても動揺も無ければ、あれほど激しかった感情も鳴りを潜めていた。
「それで、その。次の婚約は、」
ミファセスは、言葉に躓きながら次の婚約を気にしている。
「しばらくはまだ良いのではないか?」
「いえ、他人の口を気にしていたらいつまでたっても婿を迎えられません」
伯爵は釣書を執事に持ってこさせた。
シュラブと婚約している時分から、家督を継げぬ子息らから送られていた。
シュラブの素行の悪さにチャンスがあるかもしれないと彼らは考えていたのだろう。
伯爵も、あまりにひどい状況の相手は外し、念の為に釣書は保管していた。
積み上がった釣書の一番上にあるのは最近送られてきたもの。
上から順に何枚かを開き、ミファセスは「この方が良いです」と釣書を伯爵に差し出した。
子爵家の三男。
魔法師団長の子息なら、将来に不安を感じることも無いだろうに。
何故、我が家に?と思わなくもなかった青年。
「まだ釣書を全部は開いてないが、他は見なくてよいのか?」
「はい」
「どうして彼を?」
「えっ?!あ、その。…直感…で」
そんな安易に決めてよいのかと確認したが、ミファセスは意見を変えず、伯爵が折れた。
伯爵が篩にかけた釣書。
その中から誰を選んでも構わなかったが、あまりに即決だったので不審に思ったが、実際釣書の本人と対面して、睦まじく過ごす二人に伯爵はひとまず安堵した。
シュラブの時のようなことにはならないだろうか、と一抹の不安はある。
しかし、新たにミファセスが選んだ婚約者は、調べたところ魔法の研究に明け暮れる変わり者らしい。
これまで女っ気のない生活をしていたようだ。
他者を懐に入れるような気安い性格ではないと聞いていたが、ミファセスに対してはそうではない。
時々、ミファセスを戸惑わせて反応を楽しんでいるようだけれど。
あれほどシュラブを想っていたはずの娘は、婚約破棄をして、魔法が解けたようにシュラブへの興味を無くした。
今はもう、新しい婚約者に夢中だ。
「年頃の女心は…わからんなぁ」
伯爵は、今日も学園からミファセスを送り届けてくれた新たな婚約者と、庭で話を弾ませている娘の二人を、優しく見つめていた。
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