13 / 50
13.
しおりを挟むローレンスは宝飾店の後にも他の用事を済ませてから家に帰った。
「ただいま。」
「お帰りなさい。」
メロディーナがなぜかじーっと様子を伺うような目で見てきた。
ひょっとして、宝飾店に行っていたことを知っているとか?
知られてマズいわけではないが、ローレンスが帰るよりも先に情報が回ることに苦笑したくなる。
「どうかしたか?」
「あなたが貴族らしい人に絡まれていたって聞いたの。」
そっちか!
「あぁ、どうやら人違いをされたらしい。」
「そうなの?」
「うん。違う名前で呼ばれたからな。」
「何て?」
「……ローレンス。」
「ローレンス。なんだか貴族っぽいわね。」
「だよな。僕はランス、だろ?」
「そうね。あなたはランスだわ。」
ふふっとメロディーナは笑った後、手を出してきた。
「ん?」
「今、ほしいわ。」
だよな。貴族の男に絡まれていたという話だけで済むはずがない。
ローレンスがいたのは宝飾店で、そこを出てきてからもジェイドに絡まれたのだから。
ローレンスは指輪の箱を取り出した。
「お揃いの結婚指輪だ。これは、君と僕は一生一緒だという証だよ。」
そう言って、メロディーナの指に指輪を嵌めた。
メロディーナは箱からローレンスの指輪を取って、僕の指に嵌めてくれた。
「嬉しい!ランスとの絆が深まるような気がするわ。」
「うん。いいよな。指輪を見るたびに今のメロディーナの笑顔を思い出しそうだ。」
本当にそう思う。手ってよく目にするからな。
イヤリングやネックレスと違って、一番自分が目にする宝飾品だろう。
この結婚指輪を流行らそうと考えた人はすごいんじゃないか?
日常的に身に着けるから、大きな宝石も必要ない。かえって邪魔になる。
平民でも買える素材のものもあるし、一生物だからと少し奮発したくなったりもする。
ローレンスも少しいいものを買った。
金額で愛情を示す気はないが、この輝きがメロディーナに似合うと思ったからだ。
お揃いだから自分もそうなってしまったが、あくまでもメロディーナを基準に考えた末のことだった。
僕たちは指輪をした手を揃えて、しばらく眺めていた。
その後、数日間はジェイドが再び姿を見せないか、警戒していた。
彼が言った、重婚の響きが心を重くする。
ローレンス・オリオールとしてメロディーナと結婚したわけではないため、重婚にはならない。
そもそも、貴族籍と平民籍は別物なのだから、貴族と平民の結婚は少し手続きが面倒になるのだ。
それなのに、平民籍のランスと結婚したメロディーナは平民籍だったということか?
前辺境伯と結婚したということはメロディーナは貴族なのだろうと思っていたのだが。
今更ながら、なぜあんなに簡単に僕たちが入籍できたのか、不思議に思った。
546
あなたにおすすめの小説
勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。
〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。
藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。
だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。
レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。
レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。
設定はゆるゆるです。
本編10話で完結になります。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
〖完結〗冤罪で断罪された侯爵令嬢は、やり直しを希望します。
藍川みいな
恋愛
「これより、サンドラ・バークの刑を執行する!」
妹を殺そうとした罪で有罪となった私は、死刑を言い渡されました。ですが、私は何もしていない。
全ては、妹のカレンが仕組んだことでした。
刑が執行され、死んだはずの私は、何故か自分の部屋のベッドの上で目を覚ましたのです。
どうやら時が、一年前に戻ったようです。
もう一度やり直す機会をもらった私は、二度と断罪されないように前とは違う選択をする。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全14話で完結になります。
〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……
藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」
大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが……
ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。
「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」
エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。
エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話)
全44話で完結になります。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
やり直し令嬢は本当にやり直す
お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる