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しおりを挟む王都に戻ったジェイドは、父に血縁判定キットの研究は進んでいるのかを聞いた。
「かの国のものを基に、更に精度を高めたものを開発中とのことだが、どうしたんだ?」
「父上、オリオール侯爵代理が今の妻と不貞の末に産まれたのがローレンスの義理の弟レナウンだということは考えられませんか?」
「……後妻は息子を産んだ後に夫を亡くしていたな。その夫は嫁いだ時にはすでに60歳だった。その夫の子供ではなく侯爵代理が父親だと?いや、確かに2人の再婚は早かった。
幼くして母を亡くしたローレンスに母の愛情を与えてやりたいと再婚に踏み切った。年の近い義理の弟とも兄弟のように過ごせればと思って今の夫人を選んだと聞いていたが。
侯爵代理は不貞をしていたというのか?」
「レナウンが実子であるからこそ、乗っ取りの意味があるのではないかと。」
「確かにそうだな。となると、ジョスリン夫人の子供はやはりローレンスの弟の子供である可能性が高くなるな。」
「あ、それと、ローレンスを見つけました。」
「何?!そっちを先に報告するべきだろうが。連れて帰ったのか?」
「いえ、彼は記憶喪失らしく、この2年より前の記憶はないそうです。平民として暮らし、結婚して子供も2人いました。」
「記憶がない……彼の暮らしぶりはどうだった?貧しくはないのか?幸せそうだったか?」
「離れたところから見ただけで彼の妻には直接会っていませんが、2人は仲の良い夫婦だと耳にしました。子供は女の子と男の子で幸せそうな家族といった感じでした。それもあってか、貴族だと言っても興味を示しませんでしたね。」
「貴族に戻れば、平民の嫁と引き離されると感じたのかもしれないな。」
「あっ……そういうことですか。」
自分が貴族だと知ってもローレンスが全く興味を示さなかった理由はそこにあったのか。
平民の普通の反応としては、美味しいものが食べられるとか、いい服が着られるとか、広い部屋に住めるとか、裕福に暮らせることを期待して、あれこれ質問されるかと思っていた。
だが彼は、人違いだとか、自分がいなくても問題ないならそれでいいじゃないかとか、貴族としての恩恵をどうでもいいといった態度だった。
今が幸せだからだ。
家族が大切だからだ。
平民の妻、平民との間に産まれた子供のことを嫌う貴族もいる。
彼が貴族に戻れば、家族を辛い目に合わせるのが嫌で別れを選ぶことにもなり兼ねない。
そんなことをしてまで、彼は貴族に戻りたくないのだ。
自分のしていることは独りよがりなのだろうか。
……いや、ローレンスが貴族に戻るかどうかの問題とは別で、乗っ取りは重犯罪である。
それを暴くことは、正しいことのはずだ。
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