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しおりを挟むジェイドの父は、まるで悪だくみを考えているような笑みを浮かべながら言った。
「侯爵代理とレナウンとで血縁判定をすると面白いな。理由はどうとでもなる。
親子であるとわかれば、出自を偽った重犯罪を問えることになる。そうすればオリオールを出ざるを得ない。そしてもちろん、侯爵代理の座も剥奪される。侯爵代理夫人も不貞と息子の出自を偽った罪を問われる。そうすれば、レナウンがオリオールにいることも許されない。」
レナウンが誰の子であったとしても、オリオールの血筋ではない。
侯爵代理が罪に問われると、オリオールに住む資格はなくなる。彼は母親が侯爵代理と結婚したことでオリオールに住めているだけなのだから。
もしローレンスがいれば、弟として住む許可を与えたかもしれないが、そのローレンスも今はいない。
いたとしても、そんな温情は成人した弟にあり得ないことだろう。
「ですが、ローレンスの妻ジョスリンと子供は居座れるのでは?」
「そうだな。だが、血縁を詳細に判定できるようになれば夫人は嘘を突き通せなくなる。」
そうか。ただの血縁判定ではなく親子判定ができるように研究しているものが完成すれば言い逃れはできなくなる。
「ローレンスが失踪した時期と妊娠が判明した時期は2か月ずれていると公表したら反論も難しいでしょうしね。」
ローレンスの子供だと思っていたという言い訳も通用しない。
彼らがローレンスの失踪と夫人の妊娠を公にしたのは、ローレンスが家出をして3か月が過ぎてのことだった。
夫人は、『半月前に妊娠が発覚したとローレンスに告げた』と言っていた。
だから、父親になる覚悟がなくて逃げだしたのだという噂もあったのだ。
オリオールを継げる子供ができて安心して自分は重責から逃げ出したという噂もあったのだ。
だが実際は、夫人が妊娠したときにローレンスはすでにいなかった。
しかも、ローレンスが生きていると知れば、逃げ道はない。
ジョスリン夫人も不貞と出自の偽り、乗っ取りに関わったと判断されることになる。
「ジョスリン夫人の実家も関わっているのでしょうか。」
「乗っ取り計画を知っていた、あるいは推し進めた同罪に問えるかどうかか?ジョスリンとレナウン、侯爵代理が揃って同じような証言をすれば可能性もあるがな。少し難しいかもしれないな。」
ジョスリンは実家の父親や兄を巻き込むようなことはしないだろうということか。
「せいぜい、娘が犯罪を犯した責任を取って隠居するってところでしょうか。」
「だろうな。乗っ取りを知らなくても、そうなるだろう。誰も懇意にしなくなるだろうからな。」
オリオール家だけの問題で済むわけじゃないのだ。
さすがに義母の実家までは関わっていないだろう。
乗っ取りなど、計画を知る人が少なくなければ成功しないものなのだから。
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