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しおりを挟む数か月後、国王により謁見の間に集められた貴族たちは何の事情も知らずにいた。
姿を見せた国王に、貴族たちは礼をとる。
「楽にしていい。今日集まってもらったのは、少し面白いものが開発されてな。それを披露しようというわけだ。」
いったい何が開発されたのか、とザワザワし始めた。
「そこで、オリオール侯爵代理、そなたに協力を頼みたい。」
「わ、私でございますか?光栄でございます。」
何かも知らず、それでも多くの貴族の中から自分が選ばれたことを誇らしく自慢げにオリオール侯爵代理は前に出てきた。
「そこの研究員の指示に従ってくれ。なに、少し針を刺すだけだ。」
「針、でございますか?」
研究員の手に針があるのを確認し、オリオール侯爵代理は少し動揺しているように見えた。
「こ、これはいったい何の……」
「大丈夫です。痛みは一瞬です。ちょっと指先を刺して血をいただくだけですので。」
研究員がオリオール侯爵代理の手を掴んだにも関わらず、彼は暴れようとしていた。
「へ、陛下、私は血が苦手でございます。別の方にお願い致したく申し上げます。」
「何を子供みたいなことを言っておる。見なければいいだけではないか。血は後できれいに拭き取るから見ることはない。おとなしくしろ、みっともない。」
国王陛下がちょっと呆れたような、更に嫌悪するような表情を見せたため、オリオール侯爵代理の動きが一瞬固まった。そこを逃さず、研究員は指に針を刺し、血を得た。
ほんのわずかな血。それで何がわかるというのだろうか。何が開発されたのだ?
なんとなく想像がついている貴族、あるいは全くわかっていない貴族との反応の違いは明らかだった。
オリオール侯爵代理は指の血を拭われて解放されたにも関わらず、その場に留まるよう指示された。
「実はこれはな、耳にしたことがある者もいると思うが、血縁を判定できるものなのだ。
今回、オリオール侯爵代理に協力してもらったのは、ある投書を目にしてな。私もまさか彼がとは思ったのだが、コレが開発されたと聞いてちょうどいいと協力してもらうことにした。」
「陛下、投書の内容を話さないことにはお集りの方々には訳が分かりませんよ。私から話しましょうか?」
宰相が国王陛下にそう伝え、陛下は頷いた。演技くさい。茶番のようなものだから当然だが。
「では私から。投書の内容はオリオール侯爵代理が我が子を利用してオリオール侯爵家の乗っ取りを企んでいるというものでした。彼は亡きオリオール侯爵の夫で息子が一人います。だから乗っ取りではないと思われるかもしれません。ですが投書の内容は、再婚した妻の連れ子レナウン。彼がオリオール侯爵代理の子供ではないかというものだったのです。」
宰相がそこまで話すとざわつきが大きくなった。
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