側妃としての役割

しゃーりん

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王妃が自室へ戻ると、一緒にフェリシアのもとを訪れた侍女が言った。


「アンバー様、予定より多くのことをフェリシア様にお話なさったのでは?」 
 
 
「そうね。一目見て気に入ったの。彼女には腹暗い裏はないわ。
 事前に聞いていた通り、美人で聡明で……物分かりが良すぎる。
 淑女教育が完璧過ぎるのね。自分の意見は持っていても無意味な争いはしない。
 見方によれば、可愛げがないから男性からは好き嫌いが分かれる。
 怒り・悲しみ・不安…負の感情を終い込んで諦めるから。 

 フェリシアは側妃として王宮に来たからには子供を産む使命があるの。
 だけど、正妃は陛下を取られるのが嫌ではないのか?
 子供が出来やすい数日以外は正妃と閨を共にするのではないか?
 閨以外は陛下と距離を取るべきではないか? 

 そんな考えを持ったままだと陛下と打ち解けられないし、閨でも辛いでしょ?
 彼女なら役割を果たそうと努力するだろうけど、心と体は別よ。

 それに、フェリシアと会った後の陛下を見たでしょ?
 あまり感情が顔に出ない陛下が、嬉しそうに見えたわ。
 私に『フェリシアに意地悪なことを言うなよ』ですって。

 フェリシアが私に遠慮することなく陛下に心を開いてくれたら、相思相愛になれそうでしょ?
 だから、安心できるように早めに教えておいたのよ。

 裏がありそうな狡猾なタイプだったら、いろいろやり込めてもいいかと思ったけど…
 私から見れば、フェリシアは庇護欲そそるタイプね。愛されて自信を持つと良い妃になるわ。」


「まあ、そんな感じでしたね。アンバー様の気持ちを考えて陛下との距離感にウダウダと悩みそうな…」


「陛下がフェリシアとうまくいけば、私の罪悪感が減るわ!」


王妃には王妃の目的があるのだ。





その夜は、国王陛下、王妃、フェリシアの三人で食事をし、食後のお茶を飲みながら陛下とフェリシアは話をすることにした。


「王妃からいろいろ話を聞いたみたいだな?」


「アンバー様はお優しい方ですね。
 私の緊張や考えを見抜いて、先回りしてお話くださいました。
 …陛下にはアンバー様に対する気持ちはないのですか?」


「王妃は…戦友?みたいなものだな。
 この国と隣国とのいろんな条件締結のための結婚だった。
 国同士の契約もあるが、王妃と個人的な契約もあるんだ。
 そのうち詳しく話すよ。
 それよりも、今はフェリシアのことが聞きたい。」
 

この日から一週間、毎日お互いの聞きたいことや好みの物などを話し、打ち解けていった。




そして、正式に側妃となる日。

びっくりすることにドレスが、私のウエディングドレスであった。
結婚する予定だったので、ドレスは仕上がっていた。
元婚約者の好みに合わせたわけでも彼を思って作ったドレスでもなく、自分と母親の好みで作ったドレスであったので、もし結婚する機会に恵まれたら着ようと実家に置いておいたのである。


(本当にこのドレスを着てもいいの?)


フェリシアはとても嬉しかった。ウエディングドレスを着ることで本当に結婚するという気持ちになれた。


準備を終えると、両親がやってきた。


「まあ、フェリシア。とても綺麗だわ。やっぱり似合ってる。
 このドレスを着ることができるなんて…王宮での生活は辛くない?」


フェリシアが答えようとすると、ドアがノックされ王妃が入ってきた。


「あら。とても素敵じゃない。綺麗よ、フェリシア。持ってきてもらってよかった。
 ご両親の侯爵夫妻ね。
 王妃のアンバーよ。個人的に話すのは初めてね。」


両親は王妃が来たことにびっくりしていたが、ドレスを持ってくるように指示したのが王妃だったことにも驚いた。


「ありがとうございます。アンバー様。」


王妃とフェリシアの和やかなやり取りに、両親は更に驚いた。


「王妃様、フェリシアの父、ムジーナ侯爵ブランと申します。」


「侯爵、夫人、フェリシアの心配はしなくて大丈夫よ。
 別にイジメるつもりもないわ。
 共に陛下を支え、友人のように姉妹のように過ごすつもりよ。」


「ありがたいお言葉、感謝致します。
 フェリシアをどうぞよろしくお願い致します。」


両親は深々と頭を下げた。


「じゃあ、昼食会を楽しんで。フェリシアの姿を陛下より先に見に来たかったのよ!」


ホホホっと笑いながら、王妃は部屋を出て行った。







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