側妃としての役割

しゃーりん

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フェリシアがいる部屋の前に立つと同時に扉が開いた。
フェリシアの筆頭侍女サナだ。

「国王陛下、おめでとうございます。王子様でいらっしゃいます!」

「ああ。無事に産まれたんだな。シアの様子はどうだ?入っていいか?」

「申し訳ございません。後産がございますので、もうしばらくお待ちください。
 王子様でしたら、お体を奇麗にしてからお連れできますが。」

「いや、シアに先に抱いてもらおう。頑張った本人より先だと怒られそうだ。」

「フェリシア様ならお気になさらないと思いますが、準備が整い次第お呼びいたします。」


それから間もなく中へ呼ばれた。
フェリシアはヘッドボードにもたれ掛かり腕に包みを抱いている。

「シア!寝てなくて大丈夫なのか?」

「ウィル様、大丈夫です。ご覧ください。男の子です。まだしわくちゃなのに可愛いわ。」

「ああ。よく頑張ってくれた。ありがとう。…顔を見て名前を決めたよ。」

「あら。私もよ?同じかしら?」

「「サイラス」」

お互いに笑みがこぼれる。

「ウィル様、抱っこしてあげてください。」

国王は恐々息子を受け取り、腕の中に抱いた。

「小さいな。お前がシアの腹の中から俺を蹴ったんだな。早く大きくなれよ。」


王子はそのまま侍女の手に渡り、フェリシアは体を休めるために横たわった。

「ゆっくり休め。今日は我慢するが…早く私の隣に戻って眠ってくれ。」

フェリシアの額に口づけをして、部屋を後にした。



国王の私室の部屋の近くで王妃が待っていた。

「陛下、おめでとうございます。王子様だそうですね。
 フェリシアは大丈夫ですか?」

「ああ。シアも元気だ。今は休んでる。明日以降、シアにも子にも会えるだろう。」

「フェリシアは立派に側妃の役割を果たしてくれましたね。」

「そうだな。これで国内外からの側妃の打診も落ち着くだろう。」

「陛下、もっと黙らせるには最低あと一人はお願いしますね。」

「…そうだが、シアに強要する気はない。」

王妃に子が出来なかったため、フェリシアが側妃となった。
そのフェリシアが子を産めなければ、再度側妃が必要となったのだ。
跡継ぎ争いを避けるため、同時に複数の側妃を娶ることをやめたこの国で、フェリシアの出産は他の側妃の可能性をほぼ無しにした。
おそらく、王妃はもう一人、子が出来るまでフェリシアに公務をさせないだろう。
王城外での公務で、フェリシアに害が及ぶことがないように。
子が二人になれば安泰だ。
数年後の側妃候補として、まだ12歳の令嬢を打診されたこともあったのだ。
王妃も打診されたことがあるだろう。
フェリシアに知られないように、お互い黙っているはずだ。
王族として国王として跡継ぎは必要だが、改めて種馬の気分にさせられたものだ。

王妃はフェリシアを気に入っている。不快な話は耳に入れないようにしている。
そして国王もフェリシアを囲い込み、他者が接触する場所には連れて行かない。
侍女たちも同様だ。何故か団結して守っている。
こうして深窓の王女様の如く、フェリシアは側妃として囲われていた。




数日後、王子誕生が国内外に広められ、跡継ぎ誕生にお祭り騒ぎとなった。
お披露目は、大体が3年後、5年後の時もある。
それまでは決まった者だけしか接触しない慣例だ。

これから数年、貴族に出産が増えるだろう。…我が子が未来の王妃になることを夢見て…
















 
 
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