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しおりを挟むソンブラ侯爵はザフィーロがわざと成績を落としているのではないかと発言したことで、ザフィーロが娘のクリスタとの結婚を嫌がっているのだと認めたことになった。
普通の親であれば、可愛い娘のことを嫌っている男に嫁がせることはしたくない。
しかし、娘を公爵夫人にしたいソンブラ侯爵は必死だった。
「だ、だが、クリスタはザフィーロ君を好いている。だろう?な?」
ソンブラ侯爵は隣に座るクリスタに必死に言う。
「え、ええ。もちろんです。」
「あら。自分を好きじゃないとわかっていてもクリスタ嬢はザフィーロのことを思ってくれているの?」
「はい。片想いでも、そばにいられるだけで私はとても幸せです。」
よくもまあ、平然と嘘をつけるわね。
ザフィーロのことを、陰気だの、無口だの、男らしくないだの、ゴミカスみたいに言っていることを知っているのよ?
「どこを?」
エスメラルダはクリスタに聞いた。
「ザフィーロのどこを、あなたは好きなのかしら。」
「……優しい、ところ?」
「随分と自信なさげに答えるのね。優しい、ね。他は?」
「本をよく読んでいて真面目で物知りなところ?」
「物知りねぇ。あなたを満足させるような女性が好む知識はないと思うけど。他には?」
「……欲しいものを買ってくれるところ?」
「あぁ、あのびっくりするような値段のアクセサリーね。あまりの非常識さに驚いたわ。」
値段を告げると、ソンブラ侯爵夫妻も驚きを隠せなかった。
「っや、違うの。私は断ったのだけどザフィーロ様が似合うって、買ってくれて。」
ザフィーロが目の前にいるのに、よくそんな嘘が言えたわね?
好意がある女性に買うならともかく、さっきザフィーロの好意が自分にないと認めたでしょ?
好きでもないただの婚約者に使う金額ではないわ。
「そんなわけないじゃないの。請求書を見て何かの間違いじゃないかと思って店まで行ったわ。
ザフィーロは無理だと言ったのに、クリスタ嬢が無理やり買わせていたと聞いたわ。
15歳の誕生日プレゼントと聞いて、店の人も親に確認を取ることはしなかったと言っていたけど、あの店も非常識ね。15歳の子供には相応しくない高額な商品を決済させるなんて。
あの店には気をつけるように友人たちにも伝えておかないと。」
ソンブラ侯爵は顔色が悪かった。あの店はソンブラ侯爵の息がかかった店だからだ。
エスメラルダの友人に伝わると売上は大打撃になるだろう。
クリスタの婚約者は公爵の弟だから払わない、払えないなどと言ってくることはないだろう、と店側は通常価格に上乗せした請求書を送ってきたに違いなかった。
誕生日プレゼントだとしても、高額すぎるとソンブラ侯爵も認めるしかなかったのだろう。
謝罪をしてきた。
「娘が調子に乗りすぎたようで申し訳ない。そのアクセサリーの請求書はこちらで処理しましょう。」
「ええ。お願いしますね。」
エスメラルダは当然だと押しつけた。
ソンブラ侯爵が店に支払いする額はその請求書の半額以下になるだろう。正規の価格はそれくらいなのだから。
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