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しおりを挟むザフィーロの思い人、リルベルは遠縁の伯爵令嬢でまだ10歳。
ザフィーロとは5歳差である。
大人になれば5歳差くらいは問題はない。
だが、ザフィーロがリルベルがまだ7歳の時に見初めた。
正直、エスメラルダはゾゾっと寒気がした。
その理由は、ザフィーロの父親にあった。
ザフィーロはエスメラルダの弟で同じ両親から産まれた公爵令息ということになっているが、ザフィーロの父親は、エスメラルダの父親とは違う。というか、母親も違う。
ザフィーロはエスメラルダの息子だ。13歳の時に産んだ子だった。
父親は誰か?それは当時の婚約者であった第三王子ラルゴである。
ラルゴとエスメラルダの婚約は、ラルゴが15歳、エスメラルダが10歳の時に結ばれた。
エスメラルダは一人っ子で公爵家の跡を継ぐことが決まったからだ。
それから三年、何も問題はなかった。
だが、エスメラルダが13歳の時、突如異変が訪れた。
「奥様、お嬢様がまた食事はいらないと……いかがいたしましょうか。」
「どうしたのかしら。最近、あまり食べたくないみたいね。医師は微熱もあるから軽い風邪のようだと言っていたけれど、長いわね。」
「実は……気になっていることがあるのですが。」
エスメラルダ専属の侍女は戸惑うように、しかし、黙っていられないというように公爵夫人に気にしていたことを告げた。
「お嬢様の月のものが、もう四か月も来ておりません。」
「……あの子は初潮を迎えてまだ一年だから不順や長い周期があってもおかしくはないと医師には言われたわよね?でも四か月も?……まさか、あなたあの子が妊娠しているとでも?」
「申し訳ございません。ですが、症状が似ていると思ったのです。……眠そうですし。」
吐き気、微熱、眠気。妊娠初期に当てはまる症状だった。
「だけど、いつ?相手は?あの子を一人きりにする時間なんて寝室に忍び込まない限りないわ?」
いや、眠っている時でも物音がしたら駆けつけられる場所に侍女もいるので不可能である。
「……そうですよね。勘違いであればいいのです。奥様を不安にさせるようなことを申し上げてしまいました。」
「いえ、気になるのは当然よ。……あの子、閨教育はまだだったかしら。」
「そうですね。初潮を迎えられた時に子供を産むための大人の体に成長しているのだと説明は致しましたが、具体的なことは14歳でと伺っておりましたので。」
「そうね。……でも無知も問題かもしれないわ。少し早めましょうか。」
「わかりました。お嬢様の体調が良くなり次第、手はずを整えます。失礼いたします。」
公爵夫人は、部屋を出て行こうとしたエスメラルダの侍女を呼び止めて聞いた。
「待って。……エスメラルダに最後に月のものがきたのはいつ?」
「確か、お嬢様の13歳のお誕生日の半月ほど前のことで……す……」
侍女は言いながら、思い出してしまった。
エスメラルダは13歳の誕生日当日、少しの間、行方がわからなくなっていた時間があったことを。
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