出生の秘密は墓場まで

しゃーりん

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数か月後、エスメラルダは女の子を出産した。

ザフィーロの産まれた頃によく似ている。そう思った。
幸いにも、ザフィーロはエスメラルダ似だった。この子もそう。
エスメラルダも母に似たのだ。

母もレイリーも産まれた娘を嬉しそうに見ていた。

そして少し落ち着いた頃に会いに来たのがザフィーロだった。
部屋にはエスメラルダと産まれた子だけだった。


「うわー。母親そっくり。美人になるなぁ。僕にも似てる。」


間違ってはいない。いないのだが、何か違和感のある言い方に感じた。

『母親そっくり』

産まれた子にとって私は母親だから間違っていない。
だが、普段のザフィーロなら『姉上そっくり』と言うのではないだろうか。 

『僕にも似てる』

姉の子供はザフィーロにとって姪になる。血縁なので似ていてもおかしくない。
だが、実際は異父妹なので似ていて当然である。

少し自分が神経質になっているとエスメラルダは思った。 
ザフィーロがエスメラルダの子供だと知っているのは今では5人だけ。
エスメラルダと侍女、母と侍女、そしてレイリーだけだ。誰も口外することはない。心配ない……


「僕の妹だね。」

 
ザフィーロの言葉に、呼吸が止まった。
なんとか言葉を出そうとしたが、ザフィーロの顔を見るのにも時間がかかってしまった。


「……姪、よ?」

「そうだね。僕がこの部屋を出た後からは、そう振る舞うよ。」


ここ数年、いつもどこか演じているように振る舞うザフィーロが素を見せている気がした。
ここで誤魔化してはいけないと思った。


「……いつ知ったの?」

「二年くらい前にそう気づいた、かな。リルベルのことを話した時、姉上は異常な反応をしたから。
それから偶然、姉上の昔の婚約者の事件を知った。少女を愛でる性癖があったとね。
嫌なことを思い出したせいだと思ってた。だけど、姉上はリルベルのことがあってから僕をどこか警戒するように、見張るような素振りがあった。
リルベルを気に入ったことはそんなに変なことなのか、不思議だったよ。」

「それくらいで気づく?」

「もちろん、他にもいろいろあるよ。親子で癖が似る、嗜好が似ることはよくあるよね。
あの人の性癖に僕が似たのかもしれないと姉上が恐れたんじゃないかと考えれば、僕はあの人の子供ということになる。母上が産んだとは考えにくい。父上が気づいたはずだから。だから姉上になる。
僕が産まれた時期、母上と姉上は半年近く前から領地に籠っていたと聞いた。あの人の事件後のことだね。
13歳で僕を産んだことになる。どうして?」 


聡明な子だからこの二年、葛藤があったのだろう。いろんな自分を演じたのはそのせいかもしれない。


「あの人はね、私を眠らせて襲ったの。13歳の誕生日にね。
翌朝起きた時、違和感はあったんだけど気づけなかった。知識がなかったから。
両親が妊娠に気づいた時は四か月を過ぎていたの。堕胎するには私にも危険があると言われたそうよ。
婚約解消してから領地でひっそりと産む予定だったけど、事件が発覚してすぐに領地に向かった。
領地で妊娠五か月を過ぎた頃に、お母様から妊娠のことを聞いたわ。自分でも気づいたけどね。
お母様は妊婦のフリ、私は骨折したフリで部屋に籠ってあなたを産んだの。」

「そっか。僕は気づくのが遅れたから産まれることができたのか。」


確かにそうとも言えるが、それだけではない。
 


 
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