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しおりを挟む閨教育は明日の夜と言われた。
侍女でもない自分が他の侍女と顔を合わせる機会を減らすために一人だけ40歳くらいの侍女をつけて、私が泊まることになった客室に食事も運んでくれた。
翌朝も同じ侍女が食事を運んでくれた後、希望通り髪を染めてくれたり、体を磨いてくれたりした。
メイクを濃いめにしてもらい、渡された夜着を服の下に来て、人払いがされた廊下を侍女に案内されながら歩き始める。静かすぎてこっそり歩いてしまうのはなぜだろう。やましいからか。
……何時にこの客室に戻ってこれるかは殿下次第。らしい。
淡々と確認するような一連の流れを終えるだけなら、1時間後には戻れるだろう。
しかし、殿下の実践内容によっては、数時間に及ぶかもしれないということだ。
通常は1回2時間ほどで迎えの者が来る。それを3回ほど行うことで役目は終わる。
今回は数時間になるかもしれない。
それに付き合うことが一度で終えることになる閨教育の代償であると。
どうしてこんなことになったんだか……諦めの境地で歩いていると、急に腕を取られて肩に担がれた。
「すまないけど、コレは私のだから貰っていく。この手紙をビリーに渡してくれ。」
え?コレって私のこと?あなた誰?……顔が見えなくてわからないわ。
「殿下、お待ちください。彼女は……」
一緒にいた侍女が声を上げているけれど、気にせずに歩くこの人。
殿下?今から部屋に行く予定の第二王子殿下?部屋で待ってなかったの?どこに行くの?
「あ、あの……」
「ちょっと待って。もうすぐ着くから。」
しゃべるなってことね。担がなくても歩いたのに。
まぁ、薄暗い部屋じゃなくて明るい廊下で顔を見られるのも嫌だからいいけど。
どこをどう歩いて来たのかはわからないけれど、部屋に着いたらしい。
……見張りの人も扉の前にいるのね。顔を見られたくない。帰りはローブでも借りて顔を隠して帰りたいわ。
奥の部屋に辿り着いたようで、ようやくベッドの上に下ろされた。
目を合わせるように顔を近づけてきた人物を見て驚いた。第二王子殿下ではない。
「お、王太子殿下?」
なんで?
「久しぶりだね。ルーチェ嬢。こんなに近くで会うのは卒業してから初めてだ。」
そう。王太子レイノルドは学園の同級生だった。
ルーチェが密かに慕っていた人。
王太子妃となられた公爵令嬢のハイネ様と並んだ姿は学園時代からみんなが憧れた。
ハイネ王太子妃殿下は昨年に双子の王子を出産している。
幸せ真っただ中の王太子殿下がなぜ私を担いでここまで来たのだろう。
「ルーチェ嬢?どうした?」
「……どうしたと言われましても。私はなぜここに連れて来られたのでしょうか?」
「ん?それは、もちろん私がルーチェ嬢を抱くためだよ。」
は?
「え?第二王子殿下のはずでは?」
「全く、焦ったよ。まさか君が弟の閨教育に選ばれるなんて思ってもいなかったから。
情報が入ってから準備が大変だった。
これからここがルーチェ嬢の部屋だから。」
「ここが?」
見回すと今座っている大きなベッドの他にもソファやキャビネット、それに通ってきた部屋も広かったし一晩過ごした客室よりも豪華な気がする。
「あの……私はここで何をするのでしょう?」
「君は私の愛妾になるんだ。」
……ダメだ。さっきから、抱くとか愛妾とか言ってるけれど理解できない。
「ルーチェは結婚していた時は白い結婚だっただろ?」
呼び捨て!違う、そこじゃない。どうして白い結婚だったって知ってるの?
「どうして知っているのですか?」
「それは指示したのが私だから。
私が奴と取引した内容は3つ。
1つ目は白い結婚。2つ目は3年後の離婚。3つ目は君の純潔。」
私の純潔と聞いて驚いた。
「まさか、あの時の仮面の男性は……」
「もちろん、私だよ。」
いったい、いつから私の人生は決められていたのだろうか……
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