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しおりを挟む夜に部屋にやってきた王太子殿下は、入ってくるなり私を抱きしめて頭に頬擦りした。
……なんだかイメージがどんどん変わっていく。
侍女は私たちを横目にササッと部屋から出て行った。
「あぁ、今日もルーチェに会えた。明日も執務を頑張れるよ。」
そんな大げさな。
「そうそう、ルーチェの結婚は白い結婚だと認められて、なかったことにしたからね。」
「え?私、申請してませんでしたけど。」
「うん。こっちの都合だね。認められたのは奴の家を出た日になってるから。」
「わかりました。」
愛妾には結婚歴がない方がいいのかな?いろいろ決まり事があるのかもしれないわね。
純潔検査はしないですんで良かったけれど、あの人とは白い結婚だったのは事実だしね。
「あと、ビリーの手元にも閨教育として来たルーチェのことは残してないから。
私の愛妾として来たことになってるから心配ないよ。」
「ありがとうございます?」
王宮内の人の出入りはやっぱり理由が記録されるのね。
それはそうか。王族の住まいなんだものね。
「昨日話した閨の指南書の初級を持ってきたよ。
ゆっくりと読んでくれたらいいけれど、今日はコレ。」
パラパラと本をめくって、ある頁を指差した。
……なんだか動物の姿みたいね。後ろから入れてるの?これだと見られるのは背中だけね。
隣の頁は上体がうつ伏せでお尻だけ高く上がってるわ。手の支えをなくした形ね。
向き合って顔を見られるよりも恥ずかしくないかも。
結論……背中に触れられるのも気持ちいいとわかった。それと、隣の頁の格好は腕の力がなくなると上体がうつ伏せになってお尻を高く上げる結果になるとわかった。
つまり、腕の力も鍛えないとダメなのかしら?閨事って疲れる。
それに、恥ずかしくないと思ったのに、お尻を上げたままで殿下が中に放った子種を指でかきだして、目の前で流れ出る様子を眺めるんだもの。
そういえば、3年前も眺めていた。
変な性癖なのかしら?それともそれが普通なの?
わからないから聞いてみた。
「あぁ、多分、変だと思う。自己満足かな。
一つになった証、征服したような気持ち、恍惚感、出てきた分また入れたくなる欲求。
本当はルーチェの中に混じり合ってほしいけど、出てきてしまうから。
ルーチェの中に入れられるのって唾液と子種だけだから。」
……聞くんじゃなかった。性癖が変なんじゃない。思考が異常だった。
避妊薬は毎日飲んでいる。
『子供を産みたいなら飲まなくてもいいよ?』なんて軽く王太子殿下は言ってくれる。
ハイネ妃殿下は私が妊娠して側妃として表に出てくることを歓迎するつもりらしい。
本当は初めから側妃になってほしかったって。いや、無理だから。
今までにも愛妾のままで子供を産んだ人はいたらしい。その場合は継承権はない。
こっそりと、実家の兄弟の子供になっていたりする。
あるいは、こっそりと王宮で育てられて有名ではない領地なし爵位で王城で働くことも。
跡継ぎを狙わない限り、方法はいくらでもあるらしい。
いえ、結構です。
ここでおとなしく過ごさせてください。
面倒事は遠慮させていただきます。
殿下は殿下で、『子供というのは混じり合った結果だな。だけど、ルーチェが取られるようで嫌だ』と時々葛藤している。
産む気はないですよ?
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