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しおりを挟む私以上に戸惑っているのではないかという両親は、ひとまず部屋に戻ることになった。
私のお腹が鳴ってしまったから。
お父様が侯爵様と呼ばれていたから、私は侯爵令嬢ということになる。
それなのにお腹が鳴るなんて……令嬢として恥ずかしい。身内しかいなくてよかったわ。
そんなどうでもよさそうなマナーは覚えているのにね。
でも、丸一日眠っていたみたいだからお腹が空くのは当然よね?
濡れタオルで顔や体を綺麗に拭いてもらい、あまり肩を動かさずに着れる服を着せてもらった。
そして、片手で何とか食事をしながら、自分のことについてララに教えてもらった。
ここは王都にあるディブル侯爵家の屋敷。
家族は両親と兄が一人。ルシアンというのは兄の名前だった。
学園に通う18歳で、あと半年ほどで卒業。
婚約者は、ダリウス王太子殿下。殿下というのは婚約者のことだった。
っていうか私、王太子殿下の婚約者なの?
名前を聞いても、婚約者だって言われても、全く思い出せないわ。
結婚式は一年後の予定だったけれど、少し前に状況が変わってしまってどうなるかはわからない。
という、なぜか微妙な言い方をされてしまった。
「私って、そのダリウス殿下と仲が良かったの?」
「……申し訳ございません。
王太子殿下とのことはどこまで私から話していいのか判断がつきません。」
すごく困ったように言われてしまった。
つまり、婚約者なのにあまり良い関係じゃなかったのかもしれない。
どちらかに問題があったのかもね。
ララの様子じゃ、私はダリウス殿下のことを好きではなかったのかしら。
「そうなの。そう言えば、私は家の階段から落ちたの?」
「いえ、学園の階段です。
私は意識のないアンジェリーナ様のそばに付いておりましたので、詳しい情報はわかりません。
ですが、落ちたというより、突き落とされたと耳にしました。」
「……ねぇ、ララ。私って恨みを買うような人物だったということかしら。」
「違います!アンジェリーナ様はそのような方ではございません。
私たち使用人も、お仕えできてうれしく思っております。」
「そう。それなら良かったわ。
じゃあ、もしかしたら王太子殿下の関係なのかもね。」
突き落としたのが女性だったらそうかもしれない。
でも男性だったのなら?よくわからないわね。
「王太子殿下との関わりはわかりませんが、スザンヌ様が聴取を受けていると聞きました。」
「スザンヌ様?突き落としたのは女性なのね。私の友人かしら。」
「友人といえるほどのお付き合いはございませんでした。
ただ、アデル様と婚約するのではないかと噂されていた令嬢です。」
アデル。さっき、お母様が言った名前ね。
「アデル様というのは、私とどういった関係なのかしら。」
「アデル様は、アンジェリーナ様の幼馴染です。
王太子殿下との婚約がなければ、アデル様と婚約されていました。」
ちょっと待って。情報過多だわ。
私は婚約を考えていたほどアデル様との距離が近かった。幼馴染って言ってたわね。
だけど、王太子殿下と婚約することになった。
それなのに、ひょっとして私は今でもアデル様と仲良くしていたのかしら。
だから、王太子殿下との仲も良くなかった?
婚約するかもしれないスザンヌ様は、アデル様のそばにいる私が邪魔だったとか?
「王太子殿下は何歳?」
「殿下は2歳上の20歳です。アデル様とスザンヌ様はアンジェリーナ様と同い年です。」
「殿下との婚約はいつ?」
「3年ほど前です。前の婚約者の公爵令嬢と婚約解消をされてアンジェリーナ様が選ばれました。」
「……私が選ばれたのはなぜ?」
「国王陛下が選ばれたと聞いております。」
「……殿下ではないのね。」
「はい。殿下には恋人がおられますので。あっ!言ってしまったわ。
すいません。私が言ってはいけない情報かもしれません。」
さっき、どこまで話していいか判断つかないって言ってたものね。
そっか。殿下には恋人がいるのね。
それなのに私が婚約者。
あぁ、情報過多でわけがわからないわ。
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