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しおりを挟む夕食時、クルーシャ伯爵夫妻との挨拶を終え、和やか、とは言い難い食事が始まった。
「婚約もせず、結婚式も挙げず、入籍だけで済ますなんて、なんて非常識なのかしら。」
伯爵夫人はお怒りだ。
「事前に、親しくしている夫人方に会わせた方がサラーナさんの立場もいいのよ?」
怒っているのは私にではない。もちろん、ゲオルド様にだ。
「親に事後報告で勝手に契約を結んで。サラーナさん本人に会うのも今日が初めてですって?」
そうね。それは私も思ったけれど。
「どんなお嬢さんなのかも知らないまま、サラーナさんも9歳も年上のあなたのことなんて知るはずないじゃない。」
ゲオルド様は契約内容を私が考えたと思っていたから、事前にお互いのことを知らなくても問題ないと思ったのではないでしょうか?そんなこと言えないけど。
「感じの良いお嬢さんでホッとしたわ。嫁と姑の相性はね、とても大事なの。ギスギスしたくないわ。」
それは同感だわ。ネチネチと子供はまだかと言われることはないから気楽だし。
「サラーナさん、何か問題があればすぐに言ってね。ゲオルドは気が利かないから。あまりにも急で、お部屋の内装にも不満があるのではないかしら?」
夫人以外、頷くだけで誰も口を開けない中、サラーナに話がふられた。
「お気遣いいただきありがとうございます。部屋に不満はございませんし、つけていただいた侍女たちとも気が合いそうで楽しく過ごせそうです。」
「そう?よかったわ。侍女を連れて来ないと聞いて年が近い侍女を慌てて選んだのよ。」
「実家に夫婦で働いてもらっている侍女でしたので。」
だって両親は私を結婚させるつもりがなかったから嫁ぎ先について来れない既婚の侍女だったし、急に職場を変わってもいい侍女がすぐに見つかるわけもないし。
「お体が弱いと聞いたのだけど、どこが悪いのか聞いても大丈夫かしら?」
「はい。実は成長するにつれ、健康になっているのです。ですが、両親は幼かった頃の不安をずっと抱えたままで、おそらく私は長生きできないと思い込んでいるというか。ずっと診ていただいている先生がいくら大丈夫だと言っても聞く耳をもたないのです。」
その時、ゲオルド様が思い出したように言った。
「そう言えば、主治医から様子を見に来たいと連絡があったから明日の朝で返事をしておいた。勝手にすまない。」
「ジェファーソン先生からですか?まぁ。先週も診ていただいたところなのに。」
「月2回の診察が契約だからな。ご両親を安心させるためにも診てもらうしかない。それに、明日はおそらく挨拶と往診日時を決めるための顔出しだろう。私も挨拶をしておくよ。」
「お手数をおかけいたします。」
私の診察費用はどちら持ちなのだろう?なんてどうでもいいことを考えてしまった。
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