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しおりを挟む次の日から、セピアは侯爵家の財政を調べ始めた。
領地での災害に関する必要な経費や人材などは、実家の子爵家が行っている。
しかし、侯爵家が財政難になったのはそれだけではない。
無駄と出費が多すぎるせいだとわかっている。
侯爵様と父の契約では、私が女主人として内向きの財政を管理することを認めてもらっていた。
調べた結果、使用人の多さにびっくり。なんで財政難なのに解雇していないの?
……父の援助が早すぎたのよ。
まだ婚約の時点でポンっと多額を渡してしまってるから使用人たちも逃げなかったのね。
この侯爵家では、執事は使用人の配置や来客などを管理し、家令は請求書や給金などの金銭の管理となっている。
どちらも侯爵様が当主となられてから執事と家令の長になった人のようで、前任からの引き継ぎがうまくいかなかったのか、侯爵様が許可を出しているのか、独断で雇っているのか、その全てなのか。
詳しく調べると、募集もしていないのに使用人が親戚に頼まれて何人も雇われていた。
人数が増えても減らすことなくそのまま受け入れており、財政難になっても給料が払われていたからギリギリまで働こうとする使用人ばかりだった。
もちろん、適正人数に戻し、使用人の雇用を勝手にしないように釘をさした。
次に食材。使用人が多かったためにもちろん費用が嵩んだ。これもこれからは減らせる。
そして、厄介なのが侯爵夫人の出費とリースハルトの交際費だった。
もちろん、削る。それを告げると侯爵夫人が怒り出した。
「冗談じゃないわ!どうしてドレスや宝石を買えないの?
なんのためにあなたと息子を結婚させたと思ってるのよ!」
「……侯爵夫人のドレスや宝石のために、私は嫁いだのではありません。
私が侯爵家に嫁いだのは、この侯爵家を立て直すためです。
領地の方は父の方の援助で復興するでしょう。収穫物は来年になるでしょうが。
それまでは領地からの収入はほとんどありません。
災害時の対策費用すら侯爵家にはなかったようですので。」
「私は公爵家出なのよ?みすぼらしい格好なんてできないの。子爵家出のあなたにはわからないわ。」
「今は財政難の侯爵夫人です。しっかりと現状を理解してください。」
「生意気なことを言わないで!自分の地位を落とすような真似できないのよ。」
「では、離婚して公爵家にお戻りになられては?
侯爵様、夫人がこのままでは財政はいつまで経っても上向きになれません。」
「……セピアの方針に従えないのであれば、離婚するしかないな。」
「そんな……何を言っているの?どうしてこんな小娘に従うのよ。」
「……それが、領地復興のために援助してもらう契約の一つだからだ。
領地の収益がないと税も払えない。税が払えないのにお前はドレスや宝石を買う。
子爵家が立て替えてくれているが、借金がどんどん膨れ上がっているんだ。
破産すれば、もっと惨めな生活になる。そのために子爵家に頭を下げた。
今までのやり方では、いくら援助してもらっても意味がない。
だからセピアに任せることなった。彼女は財政管理を教え込まれているそうだ。
収益が出るまでは領民も困っているのに私たちだけ贅沢はできないんだ。
従えないのなら離婚だ。どうする?」
「……すぐには答えられないわ。」
「わかりました。月に利用できる金額を後ほど提示しますのでお考え下さい。
それと、侯爵家が財政難なのは周知の事実です。
それなのに着飾る方が印象が悪いと思いますよ?」
侯爵夫人は真っ赤になって言い返そうとしたが、言葉を飲み込んだようだ。
次は、リースハルトの番ね。
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