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教会で愛を誓い、口づけをして、子爵令嬢から侯爵令息夫人になったセピア。
参列者の誰もがまごうことなき政略結婚だと知っている。
財政難の侯爵家が資産家の子爵家と縁を結んだのだ。
昔からよくあること。
政略結婚の中でも、おそらく相手の誠意が見えない最低の部類であったことは間違いない。
婚約を結んだときから、この結婚式までに会った回数は2回だけなのだから。
それでも、夫婦になるならば努力はするつもりだった。何らかの情は出来るだろうと。
初夜、夫となったリースハルトは意外にも情熱的にセピアを抱いた。
『ひょっとすると夫婦として仲良くなれる?』
そう思ったセピアの心は一瞬で窄んだ。
「私には愛する人がいる。君は子供を産んでもらうためだけに抱く。」
「……そうですか。わかりました。」
夫婦の寝室を出ていくリースハルトに、セピアは期待するのをやめた。
教会で誓った愛は、まやかしで終わったから。
次の夜も寝室に現れてリースハルトは私を抱こうとした。
子供を産むことは嫁いだ身としても結婚の契約としても必要なこと。拒む気はない。だけど……
「口づけは結構です。」
「は?なぜ?昨日は何も言わなかった。」
「ええ。初夜が終わるまでは、あなたを夫として尊重するつもりでした。
政略結婚とはいえ、愛情を持てればよいと思っていましたので。
でも、愛を別人に捧げてるあなたに私の愛をあげる必要はないですよね?
子作りに口づけは必要ありませんから。」
そう言った私にリースハルトは少し驚き、苛立ち、眉をひそめて言った。
「私の愛を期待していたってことか?それは残念だったな。」
リースハルトは昨日の初夜よりも荒々しく抱いて寝室を出て行った。そして次の日も……
3日連続私を抱いて寝室を出ていこうとするリースハルトの後ろ姿に告げた。
「明日からは妊娠しにくい日ですので、閨事は結構です。」
「は?」
「あなたがおっしゃったではないですか。『子供を産んでもらうためだけに抱く』って。
なので、月のものが来ればまた来月。来なければ妊娠しているでしょうからこれきりです。」
「……いや、そういう意味では……妻としての務めだろう?」
「ええ。ですので、妊娠しやすい期間だけで十分でしょう?あなたの望みなのですから。」
その言葉がなければ、愛人がいようと望まれれば閨を共にしていただろう。
たとえ性欲処理であろうと。
でも、リースハルトはわざわざ言った。『子供を産んでもらうためだけに抱く』と。
なら性欲処理に付き合う理由はない。
リースハルトは返す言葉を思いつかなかったのか、そのまま出て行った。
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