13 / 16
13.
しおりを挟むルチェリアにはレンフォード以上の人などどこにもいない。
「ルチェリアがちゃんと真剣に結婚について考えていたことはわかっていたわ。
どんな相手なら幸せになれるか、条件を書き出していたそうね。
その条件に合う人と契約結婚しようと思っていたって聞いたわ。
あなたはレンが好きだから、恋愛からの婚約は初めから諦めてしまったのね。
私たちが婚約してから恋愛したって言ったから、自分もそうしようと思ったのだろうけど。
だけどね、前提条件が違うわ。私たちはお互いに好きな人はいなかった。
だから、婚約後に自然と恋人にもなれたの。
条件に合う人がいたとしてもあなたは婚約できなかったでしょうね。
恋愛結婚できないと思った時点で、ルチェがレン以外選ぶことは幸せじゃないもの。」
お母様がため息をついてそう言った。
「義兄上もこれで納得してくれるだろう。ルチェの意志だって。」
お父様は伯父様との仲が微妙なのだ。
私をお父様が引き取ったから。
ルチェリアはお母様の妹の子供。元侯爵令嬢である。
3歳の時、両親が事故で亡くなった。
侯爵家の跡と継いだ父の弟に引き取られるはずだったけど、跡継ぎを自分の息子にしたい弟の嫁と揉めたらしい。
ならばこちらで引き取ろうと今度はお父様と伯父様で揉めた。
決め手は、私がお兄様と一緒にいることを望んだから。私は公爵家に引き取られた。
それからずっと、私はお兄様と結婚すると言い続けてきた。
従兄妹でも結婚できる。
両親もお兄様も、そのつもりでいた。
だけど、伯父様が他の令息との出会いを望んだ。
恋愛結婚が主流なのだから、学園に入ればレンフォード以外に好きな人ができるかもしれない、と。
姪として可愛がってくれるが、伯父は典型的な高位貴族。愛人もいる。
政略でも恋愛でも結婚で他家と縁を繋ぐべきなのに、レンフォードと結婚しては意味がない。
なので、私たちの結婚には断固反対だったのだ。
こうして、ルチェリアは一大決心をして結婚相手に望む条件を考え始めたのだ。
レンフォードとのことは一旦置いておいて、真剣に考えたつもり。
そうすることが伯父を納得させたいレンフォードの望みでもあったから。
だけど、あんな誰もが結婚に望むような簡単な条件に頷く令息がいないのだ。
誰も彼も一度くらいは浮気するかも?なんて考えているから。
それで爵位を追われるのは割に合わないのだろう。
お兄様なら、躊躇することなく頷いてくれる。
そう信じられる。
そして、レンフォードはルチェリアが契約したいと思える相手を見つけることができるとは初めから思っていなかった。
自分以上にルチェリアを愛し、大切にできる男などいない。
それをわかっているルチェリアが、他の男で満足するはずがない。
そう信じていた。
そして、やはりルチェリアはレンフォードを選んだ。
「兄にルチェはやっぱりレンを選んだって言うと、結婚するまで引き離すでしょうね。
ルチェ、卒業までの1年間、伯父様の家で暮らすことになるわ。いい?」
「結婚式は卒業後すぐにしてくれる?」
「ええ。レンもそれでいいわよね?」
「ああ。離れるのは寂しいけれど、会えないわけじゃない。たった1年だけだ。
結婚式の準備もある。毎週帰って来たらいい。」
婚約を発表してしまうと、同じ屋敷に住んだままであることは外聞が悪い。
面倒な話ではあるが、それが貴族。
レンフォードが卒業して、ルチェリアが3年生になる前に婚約を発表することになる。
学園にまだ通うルチェリアを守るため。
婚約者の決まった公爵令嬢に手を出す愚か者は誰もいないだろう。
そんな姿を見られただけで、おそらくその者は男であろうが女であろうが翌日から学園に来ることはなくなる。
それくらい、教師からも守られることになる。
こうして伯父を納得させるために始めた、レンフォード以外に目を向けるルチェリアの契約結婚計画は約2年半で終えることになった。
165
あなたにおすすめの小説
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!
柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」
『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。
セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。
しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。
だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
あなたを愛すことは無いと言われたのに愛し合う日が来るなんて
恵美須 一二三
恋愛
ヴェルデ王国の第一王女カルロッタは、ディエゴ・アントーニア公爵へ嫁ぐことを王命で命じられた。弟が男爵令嬢に夢中になり、アントーニア公爵家のリヴィアンナとの婚約を勝手に破棄してしまったせいだ。国の利益になるならと政略結婚に納得していたカルロッタだったが、ディエゴが彼の母親に酷い物言いをするのを目撃し、正義感から「躾直す」と宣言してしまった。その結果、カルロッタは結婚初夜に「私があなたを愛すことは無いでしょう」と言われてしまう……。
正義感の強いカルロッタと、両親に愛されずに育ったディエゴ。二人が過去を乗り越えて相思相愛の夫婦になるまでの物語。
『執事がヤンデレになっても私は一向に構いません』のスピンオフです。
元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い
雲乃琳雨
恋愛
バートン侯爵家の跡取りだった父を持つニナリアは、潜伏先の家から祖父に連れ去られ、侯爵家のメイドとして働いていた。
18歳になったニナリアは祖父の命令で、従姉の代わりに元平民の騎士アレン・ラディー子爵に嫁ぐことになる。ニナリアは母のもとに戻りたいので、アレンと離婚したくて仕方がなかったが、結婚は国王の命令でもあったので、アレンが離婚に応じるはずもない。しかも、アレンが初めから溺愛してきたので、ニナリアは戸惑った。ニナリアは、自分の目的を果たすことができるのか?
元平民の侯爵令嬢が、自分の人生を取り戻す、溺愛から始まる若夫婦のラブラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる