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しおりを挟むお兄様と呼んではいるけれど、公爵家に来た当初から兄だと思ったことは一度もない。
3歳だったのに当時のことはしっかり覚えているから。
大人たちが揉めている時に、レンフォードが手を伸ばして頭を撫でてくれた。
私はこの子と一緒にいたい。一緒にいる。一緒にいなければならない。そう思った。
結婚すればずっと一緒にいられると知ってからは、レンフォードと結婚すると言い続けた。
両親も、それはいいわね。と言ってくれていた。子供の戯言ではないと知ってからも。
レンフォードはルチェリアに兄のように接するのではなく、好きな子、愛する人として接していた。
愛するルチェリア以外の女性に触れたいとは思わない。触れてはいけないとすら思う。
自分は潔癖なのか、異常なのか、と思ったこともあったが、父も同じような感じだ。
母がレンフォードしか生まなかったのは、難産だったから。
母を失うことを恐れた父が、2人目を断固拒否した。
心の底から愛する者がいれば、失うのが怖くなる。
男を誘惑する女や、愛する人を傷つけようとする者は消してしまいたいと思うほどに。
私が書いた契約結婚に望む条件を両親にも見せた。
すると、似たようなことを考えると笑われた。
本当に当たり前のようなことばかりだから。
両親の場合は、全くの他人だったので性格をよく知らなかった。
だから、浪費癖があるか、なんかも事前に確認し合ったという。
10歳年上の王子の第二妃にされそうな母と、隣国の我儘年上王女を押し付けれそうだった父。
お互いに図書館で項垂れていた時に出会ったらしい。
侍女に愚痴った母の言葉が聞こえて、父が声をかけた。僕と先に婚約して逃れないか、と。
思いつくままに契約の条件を考え、裏切らないように厳しい破棄条件をつけて婚約した。
お互いに王子や王女よりマシだと思い、必死だったという。13歳の時らしい。
女好きで金遣いの荒い王子の金づるになることや国から厄介払いをされそうな王女と利にならないような結婚させるよりも公爵家と親戚になった方が面倒事にならないかもしれない。
そう思ったそれぞれの両親は、王命を押し付けられる前に子供たちの婚約手続きを進めた。
無事に婚約した後はホッとして、両親が認める相手に出会えたことがお互いに奇跡のように思えたらしい。
それから相思相愛になるまでは早かった。そして今に至る。
未婚で妊娠騒ぎを起こす隣国王女やエドガーの祖父の親たちの話を聞いていた父は、愛人や浮気など断固拒否で母一筋。
「結婚する時に条件を少し変えたって言ってたけど?」
「それも大したことじゃないわ。子供の結婚したい相手に文句を言わない、とかかな。
自分が育てた子供が選んだ相手を信じないなんて自分が悪いってことだもの。
レンがルチェを選んだことも、ルチェがレンを選んだことも嬉しい結果だわ。」
「あと、婚約の契約の時は若かったし必死だったこともあって、お互いを好きになるというものあった。
だけど、結婚の契約の時に外したよ。
契約にあるから好きになったんじゃなくて、自分の意志で好きになったんだからな。
その気持ちは契約で縛るものじゃないってお互いに思っていた部分だった。」
私たちはこの両親に育てられたから、契約なんてものはなくてもお互いを信じられる。
両親にとっても、契約なんて意味はないけれど結婚することになった大切な思い出として、契約は続行中ということなのだと思う。
私も自分の子供に、両親のような契約結婚がしたいと思ってもらえるくらい、レンフォードと幸せな家庭を作りたい。
そう思った。
私たちの場合は、恋愛結婚なのだろうけど、契約もそのまま残しておくつもり。
約1年後、学園を卒業したルチェリアはレンフォードと結婚した。
両親に負けないくらいイチャイチャの甘々の新婚2人にはすぐに子供ができた。
そして、子供たちも仲の良い両親を見て育ち、自分も幸せな結婚をしたいと望むようになる。
公爵家の恋愛でもあり契約でもある結婚は、その後も幸せの象徴として受け継がれていくことになる。
<終わり>
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