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しおりを挟むサリーがエステルのそばにいなくなったからといって、今更エステルの体調がよくなるわけではない。
それでも、心理的に楽にはなった。
エステルは再び、メイディアを呼び出した。
「ごめんなさいね、仕事中に。」
「いえ、エステル様が優先ですと言われております。」
「ふふ。ありがとう。メイディアはルイスには会ったかしら。」
「お会いしました!とても可愛いお子様でした。」
ルイスはエステルが産んだ息子。
乳母がいても、エステルも母乳をあげたかった。
その願いは一度しか叶わなかったけれど。
「メイディアに婚約者はいなかったの?」
「はい。私は四人兄妹なので親に負担をかけないように結婚しなくてもいいかなって思っていました。
王宮侍女の面接日に体調を崩してしまって、それでこちらに。」
「あら。うちとしては幸運だったわね。でも、どうしてうちだったの?」
「これは内緒にしてほしいのですが、兄の初恋の相手がエステル様なんです!子供の頃、父と一緒に伯爵家に伺った時に、お会いして。兄はしばらくエステル様が可愛かったと言い続けていましたよ。」
ローランド様の初恋が私?
知らなかったわ。
すごく、嬉しい。
実家のアドレー伯爵家。
その父とメイディアの父が従兄弟。
でも、伯爵家と子爵家ということもあり、社交相手も違い、家族ぐるみで付き合う仲ではなかった。
なので、ローランドやメイディアとも又従兄妹という少し遠い血縁のため親しくなかった。
お互いに、遠慮のある距離感。
特に、学生時代のローランドとエステルはそれだった。
「私がここに嫁いだから、来てくれたの?知らなかったわ。言ってくれたらよかったのに。」
「遠縁だからと図々しく縁故採用されるつもりではなかったんです。実力で採用されたくて。」
縁故採用が多い中、メイディアは見事採用された。
おそらく、王宮侍女にもなれていたと思う。
彼女は周りを明るくする笑顔を持っているもの。
「子供は好き?」
「はい!侍女がダメなら、家庭教師になって小さい子に教える仕事もいいなと思っていました。実家は子爵家ですけれど、高位貴族の礼儀作法も学びましたし。」
王宮侍女や家庭教師を目指していたのであれば、質の高い礼儀作法を身に着けておく必要がある。
メイディアは努力してきたのだとエステルは感心した。
「アイザックとは庭園で会ったそうね。」
「はい。同じように月を見上げている方がいて嬉しかったです。」
「ローランド様の話をしたの?」
「はい。兄からアイザック様のことを聞いたことがありました。エステル様の婚約者で羨ましいって。」
今更、こんなに幸せな気持ちになれるなんて。
「ローランド様の結婚は今年だったかしら?」
「はい。半年後くらいですね。友人が義姉になるので変な感じです。」
「あら。メイディアの友人なの?」
「そうです。兄に猛アタックして婚約しました。」
メイディアの友人なら、いい子な気がする。
ローランドには幸せになってほしい。
でも、彼にも最期の願いを聞いてもらいたいな。
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